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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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訓練4

「カティア、攻撃が雑になってきているぞ」

 ジョーはカティアの攻撃を(さば)きながら余裕のある動きでそう言った。


 カティアは剣を振り回しているだけになっていた。始めの頃のように口を余裕も無いほど泣き声のまま訓練を続けていた。

 

 ジョーは剣を受け流しそのまま勢いを流すとカティアの突進攻撃は見事にバランスを崩してそのまま前のめりに倒れ込んだ。


「カティア、すぐに立つんだ!」

 剣を構えながらジョーは強く言う。命令口調でカティアの身体は畏怖に包まれ。「ぅぅぁぁぁ……」と鳴き声を出して立ち上がった。

 ヨロヨロと足取りも覚束無(おぼつかな)くなっているが、感情が先に来ているのか剣を構え始めた。

 そして――剣を振り上げ、そのままジョーに向かっていった。

 

 カティアが剣を振り下ろす瞬間に、それ以上の速度でジョーが切り上げを行い、腕がもげそうになる程の衝撃で、持っていた木剣が空中に浮いていた。

 そしてそのまま背中から仰向けに倒れ、大の字になってしまった。


 ジョーは静かに近づいて胸元に剣を押し当てる。


【それまで、ジョーの勝ち】

 スネークの言葉が26回同じ様に続いた。


 ジョー達か訓練を始めてもう1時間以上も経過していた。


「カティア、もう終わりか?」

 ジョーがそう言うと、カティアが起き上がろうとするが、兜が脱げ泣き顔を晒してしまっていた。

 目元は赤くなり、汗と涙で顔は濡れていた。


「ちょっと、ジョー! もういいでしょ!」

 サイリアから怒鳴り声が聞こえて、ジョーの元に近寄ってきた。

 ズンズンと地面を(なら)す様にジョー元まで歩いていき、そしてキッとジョーを睨む。

「やり過ぎよ! もう、アホのジョー」

 サイリアがそう言うと、脇からメリーダがカティアに近寄り、倒れているカティアを起こしていた。


(あ、あれ? 熱くなってた?)

 ジョーは予想外のサイリアの怒り顔で我を取り戻したように、冷静になって、状況を見回した。

 涙ぐむ幼い少女カティアと慰めるメリーダ、そして仁王立ちしているサイリア、状況だけ見ればジョーに分が悪い。


 頭を掻きつつ「済まなかった……」と謝った。

「まったく、師匠気取りもいいけど、コレじゃあ暴力よ、訓練なのに何をやっているのよ?」

「でも、まぁ、必要だから……」

「それでもよ、ジョー……もう、いい!」

 サイリアは強くそう言って、カティアの方に向かって歩いた。


 メリーダはカティアの防具を外している。

 手元が赤く腫れあがり、(あと)が残っていた。


「ごめんね! カティア、大丈夫だった」

 サイリアがそう言うと、カティアは無言のまま頷いた。声を出すと泣いてしまいそうだったのでそのままという感じだ。


 サイリアは杖をカティアの腹近くにつき出し、精神を集中して呪文を唱え始めた。


「精霊達を、かの者の傷を癒し、力を取り戻させよ……ミリード、フィフィ、ケルン……精霊氣回復(アルシヒルン)」 


 すると杖の先に輝く光が集まっていく。

 そしてカティアのミミズ腫れのような痕が消えていった。


 その間にジョーは頭をかいて、地面に突き刺していた蛇腹刀を抜きに行く。


【ジョー、まったく、少しは手加減と言うモノを覚えろ】


「なんだよ、訓練は真面目にやらないといけないものだろ?」


【しかし、幼女をイタぶるのは…どうかと思うぞ? 弱い者イジメは楽しかったか?】

 憎たらしい口の訊き方にジョーは柄を1発叩いて、そのまま剣を抜きとると、そのまま無言で背中に装備した。

【……まったく抵抗できない者にあたるとは、肝の小さい男だな……】


「うるさいよ! 俺だって考えて……」

 ジョーは口ごもる、結果だけ見ればそう言われても仕方がないとしか言えない。


【まぁ、サイリアの時よりは酷く無かったな。そう考えれば成長したのか……】

 スネークがジョーの背中で憎まれ口を叩いていると……もう一発と言う感じで(つか)に一撃を喰らわし、そのまま逃げるようにその場を離れた、ジョーだった。


***


「これで大丈夫ね?」

 サイリアは確認するようにカティアの傷跡を見ていた。

「ハイ、サイリア師匠、ありがとう」

 メリーダに鼻や目元を布で拭かれ、さっきよりも表情を取り戻したカティアがお礼の言葉を言う。


「傷になったら大変だもんね、女の子だし……」

「いえ、いいんです。冒険者になると決めたからには覚悟はしています」

「まぁ、立派ねぇ、カティアは……それ比べて……」

 サイリアは顔の方向を変え、ジョーが逃げた先を見た。


 そして―――杖で手まねきすると「こっち来なさい、ジョー!」と大声で呼んだ。


 ジョーは暫く止まって、覚悟を決め、歩み寄った。

 頭を()き、表情は明るくない、負い目のある男という設定の役者のようだった。


「なんだよ、サイリア」

 ジョーがそう言うと――。

「ほら、カティアに謝る」

 とすぐに命令した。


「いや、あくまで訓練だから、厳しいものだろ?」

「それでも、謝る」


(おいおい、いまいち納得がいかないんだが……)

 ジョーは目を細め、不満そうな顔をした。

 一息つき、ジョーはカティアの方を見た。

「カティア、傷は大丈夫か?」


 ジョーの問いかけにカティアは一瞬身体を震わせると「はい、大丈夫です……」と全く大丈夫そうでは無い表情で答えた。


 その言葉を聞いてジョーは更に歩み寄り、そして両手をカティアの両肩に置いた。

 

 そして――ジョーは言う。


「よく……頑張ったな。偉いぞ、カティア最後まであきらめない姿は立派だった。常に前に出る姿勢は戦いにおいて大事な事だぞ」

 そう、いい笑顔でカティアに言う。

 まるでイケメンのコーチが頑張った女子学生に声を掛ける様に、これから青春が始まる競技漫画の1場面だった。


「……ジョー師匠!」

 カティアは身体を震わすと、ジョーに抱きついてきた。


「よし、よし、よく頑張ったな……」

 そう言って頭を撫でながら、ジョーのお腹でまた泣いているカティアを慰めていた。


(よし、弟子は厳しく、その後、褒めるに限る。これで師匠の面子は守ったぞ……)


 ジョーは謝りもせずにいい感じにまとめ、その様子をメリーダは涙ながらに見て、サイリアは「いいこと言えるじゃない……」としきりに感動していた。


 しかし――スネークは【なんか、変だよな……】とボソッと声を出した。



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