危険到来
ジョーか湖畔の周りを見回っていた。
サイリア達が薬草採取を再開しているので警護の続きをしていた。
ジョーは少し離れた所でカティア達の様子を見ながら。森の奥を確認している。
サイリアとカティアとメリーダは女子会のように楽しそうにして笑い声がジョーの所まで聞こえていた。
【ジョー、あのお嬢ちゃん、結構、素直じゃないか、初めの頃の挨拶は心配したけどな、それに将来美人になるだろうな】
「おい、スネーク、お前はどっかの飲んだくれのオヤジか! なんだいきなり、美人だのなんだのスネークに分かるのかそんな事」
【ジョー、言っておくが、長く生きてきた分、色々と見てきたんだ。それに審美眼だって全く別の奴の方が正確にはかれるだろうからな】
「それにしたって、お前武器だぞ、剣だろ。そいつが人の美しさなんてはかれるもんか」
【まったく、若造の回答だな。人の見た目なんて時代によって変わっているんだぞ、美しさの評価なんて曖昧なもんだ。その分、人でない方が正確にはかれる】
スネークはそう断言する、妙に説得力がある為、ジョーは口ごもってしまった。
「たく、なんでいきなりそんな話しするんだよ」
【なに、幼子に手を出さないか心配してな】
「なんだよそれ、変態じゃあるまいし」
【それに、サイリアを泣かせる事にもなるからな……】
「たく、それこそ何でだよ!」
ジョーはそう言って背中にある剣の柄を思いっきり叩いた。
【ジョー……】
「なんだ、また戯言か……」
そう言うがスネークの気配が変わったようにジョーは直感する。
【なにか匂う、近づいている感じだ】
「こっちにか、どこだ」
「ジョーから見て右の森の奥から匂いがきているな」
そう言ってジョーはその方向を確認するとすぐにサイリアの所に戻った。
「サイリア、作業を中止しろ、そして警戒態勢をとれ」
そう走りながらサイリア達に伝えた。
その言葉に驚いた顔をするカティアとメリーダ。
サイリアはすぐに立ち上がり。傍に置いてある杖を持った。
「ジョー、どっちから」
「あっちだ、サイリア」
そういって森の方向に指をさす。
「カティア、メリーダ起き上がれ、そしてすぐに武器と防具を装備、確認を済ませろ」
横に目をやり固まっている2人に命令するジョー。そしてすぐに剣を抜いて構える。
先ほどの和やかな雰囲気は無くなり殺伐とした緊張感が次第に増加していく。
「ジョーさん、何が来るんですか?」
カティアは剣を抜き、ジョーの隣に近づいてきた
「まだ、わからない。しかし近づいてくるなら警戒をすべきだ。カティアとメリーダさんはそこの岩陰にいてくれ」
ジョーは先ほどまでの急いだ様子もなくなり、言葉使いも落ち着いていた。
カティアとメリーダはその場から移動していった。
(どうするか……逃げ出そうにもカティアは肉体強化魔術苦手だし……サイリアも長く持たないかもな。それよりどんな魔物が来るんだ、機動力が速い奴なら逃げ切る事はできないぞ)
ジョーはその場に構えながら考えていた。
「ジョー、どうする? 逃げる、迎撃? それとも隠れてやり過ごす」
「まて、ソレを考えてる、1匹だけならいいが、集団とか、足が速い奴だと現状では不利だ。それに感覚の鋭い魔物ならこっちに向かっている時点で見つかってるってことだ」
「じゃあ、迎撃になるのかな……、好戦的な敵ってことだもんね」
そう言ってサイリアは帽子を直した。目が真剣そのものになる。
「ああ、召喚精霊の準備をしておけよ」
「わかった、水精霊召喚しておく」
「そうしてくれ、カティア、メリーダを守ってくれよ」
ジョーがそこまで言うと……。
[ボオォ、ボオォ、ボォ、ボォ、ボォ……]という鳴き声が聞こえてきた。
そのまま藪の中から姿を現す。
2,5m位の毛が長い猿のような2足歩行の魔物が現れた。全身毛むくじゃらで黒い毛の塊のようだ。目が単眼で肩に大きな角のようなモノが生えている。口からは牙が飛び出していた。
「アレは“山毛猿人”か、厄介だな」
「ノフューマって集団行動してる、魔物でしょ」
「ああ、結構な数が隠れているかもな、逃げなくて正解だった」
ジョーはそう言った。
すると、魔物がジョー達に気がついた。
[ボウボぉぉぉぉぉぉ!] と叫んで向かってくる。
「サイリア、牽制だけ頼む。そのあと召喚しろ――」
ジョーはそう言って駆けだした。
するとすぐにサイリアが……。
「…射ぬけ、魔術の矢」
と魔術を唱えると、サイリアの周囲に透明な10本程の矢が形成され、高速で魔物にめがけ飛翔していく。
ソレを察知したノフューマは急いで防御体勢を取った。
大きく迂回しながら、矢はノフューマの地面の手前に刺さり、魔術の矢は3本ほどノフューマ身体に突き刺さった。
「グェェェェ!」
ノフューマは汚い声を上げると動きを止める。
(よし、サイリアの魔術は予想どおりだな、動きが止まった)
ジョーはそのままの速度で間合いを詰めていくと、ノフューマも気がつくが遅かった。
そのまま右肩近くを狙い右腕を切り飛ばす。
すぐに奇声を上げて身体を仰け反らせるノフューマだった。
その体勢になった事を確認したジョーはそのまま低く身体を回転させ、勢いをつけて、ノフュームの右足の裏側に回転斬りを喰らわせると、右足が吹き飛んだ。
片足になってバランスを崩したノフューマはそのまま倒れるが、野生の本能なのかすぐに起き上がろうとする……。
――が、ジョーはそのまま更に間合いを詰めて、仰向けになったノフューマに向かって跳躍して、そのまま喉元に剣を突き立てた。
[ゴオォエィェェェェェ……]と最後に声を上げ、ノフューマは動かなくなった。
そして、そのまま時が止まったような瞬間が訪れる。
湖畔の近くの地面には青黒い血が飛び散り、一瞬にしてその場は血なまぐさくなった。綺麗な花にも血が飛び散って青黒く汚い色に塗られていた。
ノフューマの腹の上に乗っている騎士は、静かに蛇腹刀を抜くと……。
「まずは1匹……」
そう静かに言葉をもらした。




