お嬢様と仲直り
ジョーは頭をポリポリとかいていた。
カティアに笑顔を向けられて少し戸惑ったような表情だった。
その様子をカティアは不思議そうに眺めている。
「……ジョーさん?」
「なんでもないよ、カティア。俺も色々言ったが落ち込む必要も無い。始めから完璧にできる奴はいないって事だ。人それぞれで特技も得意な魔法も違うからな。得意な所を伸ばす奴もいれば、苦手な所を直そうとする奴もいる。でもなんでもこなせる奴は稀だ。
だから、チームやパーティを組んだり、団に入ったりして自分を磨く。
そうやっていく内に強くもなる。それに……カティアにも友達なり大切な奴が出来るかもしれない。そう言う奴と組んで頑張るんだぞ」
ジョーは笑顔でそう言う、初めのころのトゲトゲした感じは無くなっていた。
「……うん…頑張ります」
「ああ、先ずは、攻撃的に会話しちゃ駄目だぞ」
「でも……ジョーさんだっていきなり殴った」
「…………」
【言われてしまったなジョー。その譲ちゃんの言う通りあれは、ジョーが悪い】
「なんだ、起きていたのかスネーク」
ジョーの背中に背負っている蛇腹刀のスネークがいきなり声をかけた。
その声にカティアはギョッとして。辺りを見回している。
ジョーはそれに気付いて、背中から蛇腹刀を抜くと地面に突き刺しカティアに見せた。
「カティア、喋っているのはコイツだ」
そう言ってジョーは目線を下げる。
カティアは蛇腹刀をマジマジと見つめると剣についている宝玉が目玉のように動き出した。
「きゃあ! ……もしかして魔剣ですか?」
「ああ、そうだ、名前は“スネーク”だ」
【おい、ジョー、名前が違う“カミ”だといっているだろ……まったく】
カティアはそう言ってじっくりと蛇腹刀を見た。
「もしかして“生命の宿る武器”? 初めて見た……」
そう呆けているカティア。恐る恐る触ろうとするが……。
「止めておいた方が良い、そいつは噛みつくぞ」
ジョーが注意するとカティアはすぐに手を引っ込めた。
【ジョー。おれは無闇に噛む癖はないからな…、まぁいい、お嬢さんはじめましてだな】
スネークはそう挨拶する。
カティアは頷くだけだ。
【そう驚くなよ。ジョーの相棒だ、よろしくな。それにずっと傍にいたじゃないか】
「ハイ、はじめまして……、ほんとに喋ってる。魔剣で“生命の宿る武器”って教科書だけに載っているモノだったから……」
【おいおい、実在するよ。まぁ、それ位伝説で貴重だから丁寧に奉ることだな】
「スネーク、冗談はよせよ。初対面の奴を騙すな」
ジョーは溜息混じりにそう言って、背中に蛇腹刀を戻す。
カティアはその様子をずっと眼で追っていた。
すると……。
「ジョーさんは魔剣使いの《魔剣騎士》だったんですか!?」
と驚きの声をあげた。
「ああ、そうだな。俺の国じゃ《魔剣士》ともいうがな」
「じゃあ、魔剣と契約すると、なにか代価を払うっていうのは本当なんですか」
カティアは興奮気味にジョーに質問する。
「ああ、毎日の手入れが代価だな……」
【おい、それは違うだろ! それもあるが使用者の魔力と美味い魔物を食う事が代価だ……】
スネークはジョーの言い方に抗議の声を上げる。
「……、まぁ、代価なんて無いってことだ」
「ええ、魔剣は凄い力を授けてくれる代わりに何かを差し出すって書いてあったのに」
凄く残念そうな顔をしたカティア。
「まぁ、魔剣でもピンキリだからな、それに眉唾モノの話なんてそこら中に転がっている、もし発見しても期待しては駄目だぞ」
「ハイ、……でも、ジョーさんはどこで魔剣を手に入れたんですか?」
「ああ、俺の場合、実家に封印されていた。俺の力に呼応してスネークを呼び起こしたんだ」
そう得意げにジョーは言った。
【違うぞ、暇だったから契約してやっただけだ】
そう言うスネークを、ジョーは後ろに手伸ばし柄を叩いた。
その様子をみてカティアはクスクスと笑う。
――そうして、カティアとジョーは話をしていた。
***
少し離れた湖畔でサイリアとメリーダはジョーとカティアの様子を観察していた。
「よかったです、お嬢様が笑っていらっしゃいます……」
メリーダは母親のような顔で見つめている。
しかし、隣にいるサイリアは人見知りのせいか、戸惑っているような感じだった。
チラチラと眺め、2人の様子を観察している。
人見知りのサイリアはメリーダさんと何となく2人っきりになって落ち着かない様子だった。
「そ、そうですね、よかったです」
そう、固い笑顔でメリーダに相槌をうっていた。
「お嬢様は最近お元気が無かったので嬉しい限りです……」
メリーダはそう言いながら頬の辺りを持っていたハンカチで拭いながら喜んでいた。
「あ、あのう、まるで母親のような心配をなさるのですね?」
「ええ、私はカティアお嬢様の教育係兼世話係ですから……旦那様も『カティアを頼む』と言われましたから。何より大恩あるベルンバッハ家の為です」
「へ、へぇ、随分と大きな御恩があるのですね……」
サイリアは先ほどからどうやって会話を広げようか思考錯誤している。
メリーダも涙を拭きながらサイリアに向き合った。
「ええ、なによりお亡くなりになった奥様との約束ですから……最後に私に言われました。
『面倒を見てやってと……。』私は幼い頃よりベルンバッハ家にお世話になって来ましたから、それを守ろうと……」
メリーダはそう言う、サイリアはかなり深く濃い話になってしまい、どんな返しの言葉を言えばいいか分からずに……。
「へぇ~、それは忠義者ですね……」
と無表情で言うしか無かった。
――その時。
「お~い、休憩長いんじゃないか?」
と向こうからジョーが声をかける。
サイリアはホッとした顔をして、「わかった、すぐに始めるね!」と大声で叫んだ。
その後、カティアとメリーダ、そしてサイリアは薬草採取を再開する。




