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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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お嬢様は真剣

 カティアは落ち込んでいた。その為、休憩中1人で、ジョー達から少し離れて湖の(ほとり)に座っていた。

 花をちぎって、1人考え込んでいる。


「ジョー、やっぱりさっきの話で落ち込んだじゃない」

 サイリアは少し離れた所でジョーと一緒にいる、隣にいるジョーにそう言ってどうするの? という顔をむけた。

「……、よし、休憩終わり、俺はそのまま警戒を継続するから」

 そう言って逃げようとするジョーにサイリアが杖でジョーの頭をグリグリする。


「痛い、痛いって。やめろよ、サイリア」

「ジョー、さすがにそれは無いと思うけど。あなた現在カティアの師匠と言う立場でしょ。それにジョーの言葉でああなったんだから、どうにかしなさい」


 そう言って、サイリアは無理やりジョーを押し出した。


 ジョーはゆっくりとカティアに近づいていく、綺麗な湖畔の一部で、騎士がお嬢様と会話するように。――

 そうなれば、面白いのだが、実際にジョーは参っていた。

 言い方もきつかったかもしれないが、初めの印象が今なって思えば最悪だった。

 カティアは怖がってしまって、距離が出来てしまっている。

 そんな関係で慰めの言葉なんて辛いだけだろう。

 

(どうしようか……、でも真実を伝える事も大事だし……、そもそのこんな仕事引き受けなければよかった……)

 ジョーは覚悟を決める。


「カティア、どうしたんだ、元気無いぞ」

 元気を無くさせた張本人であるジョーがそう言った。


「ジョー…さん、いえ……別に……」

 明らかにカティアは落ち込んでいた。

 そこいらにある小石を投げ始めていた。


(ああ、無理だろコレ……距離が出来ている。しょうがない……)

「そう言えばカティアはどうして冒険者になろうと思ったんだ?」

「……ええっと、私には大好きな人がいて……その人の役に立ちたくて冒険者を目指しました」

「大好きな人?」

「……私の父親(パパ)です」

 そう言って彼女は顔を赤くした。

「……ジョー…さんは、ベルンの町の冒険者だから知っていると思いますが。私のパパは領主です。町を納める立場の人間ですから……そんなパパの苦労も近くで見て知っています。この国は軍人の数が少なく、冒険者に頼って生活している所があります。でも、冒険者は流動的で、なかなか町に居てくれません。だから私が強くなって町を守れれば、町も安全になって。パパを助けられると思ったんです」


「……そうか」

(なんだろう……凄く心が痛い。俺、何やってるんだ。結構素直な奴じゃないか、どっか傲慢な娘だと思っていたけど……優しい父親思いの娘だった)

「……カティアは偉いな」

 ジョーは贖罪の意味を込めて優しい言葉をいった。

 初めに殴ってしまって悪かったと思いながら、自分の心が汚れていると思ってしまった。

 ギルマスの件でヘドロのように汚れたジョーの気持ちが洗われた感覚を覚えていた。


 そう言うとカティアは照れている。始めの頃の傲慢な態度でなくなり、素直なままのカティアの笑顔が垣間見えていた。

 蠱惑的な笑顔でカティアはジョーを見ていた。


(なんだろう、罪悪感が凄い……)


「ジョーさん、教えて欲しいんですけど。どうしたら強くなれますか、さっき話していたことだと……普通にやっても無理そうだから……」


 そのカティアの純粋な質問にジョーは言葉に詰まる。

(どうしようか……、答えがないぞ……)


「カティア、さっきの言葉は真実だ……強い奴でも『運』が無いと死んでしまう事もある厳しい世界だ。才能も必要だと言ったな、知恵も必要だと。でも、それ以外にも強くなる方法がある」


「……どうやって?」

「優秀な奴に教えて貰うんだ。良い師匠を見つけて、知恵や才能も『経験』で補う、危険な事も判断も先人の教えを守る事だ。冒険者は何代も繋がっている。危険だとわからない事でも魔物の倒し方でも学習して経験を積めばそれが分かるようになる。

冒険者の心得をさっき言っていたろ。

『人の教えを聞く者は良し、良き人に教わるはなお良し、そして人に教える者はさらに良し』

つまり、これは強くなる為に必要なことだ。

教えられた事を素直に聞く奴が強くなる、これも“真実”だよ」


「でも……どう言う人に教わればいいの…、アッ、いいんですか?」


「……、それも難しい問題なんだ。優秀な奴は俺でもわからない。とにかく…自分自身がこうなりたいと思うヤツに教わればいいんじゃないか?」


「……そうですね」

 カティアは明るい顔をしていた。


「ああ、教わる気持ちを忘れてはいけないぞ、それに教えられた事にこだわる事過ぎるのもいけない事だな……」


「ジョーさん。わかりません」


「いいんだよ、そう言うもんなんだから」


 ジョーが言葉をはぐらかすとカティアは笑っていた。

 少しずつ、お互いの距離が縮まっていく。


「……そう言えばカティアはなんで、『魔術剣士』を目指している? 剣の扱い見ていたけど、それほど鍛錬してないだろ?」


 ジョーがそう言うとカティアはビクッと身体を震わせた。


「……が、学校で流行っていたから……」

 言葉を詰まらせながらそう言った。


(ああ、なるほど。いま冒険者の中でも剣と魔術がどっちでも使える万能型が主流になっているからな。前衛、後衛どちらでも援護が出来る存在は貴重だからか……)


「まぁ、憧れるのはいいよな……」

「うん……学校の間でも人気で……わたしもいいなぁ、って思ったから」

 徐々にモジモジしだすカティア。

 ジョーは完全に相談に乗るようにカティアの傍に移動する。

「でも、カティアは肉体強化魔術をあまり使って無かったろ? ゴブリン倒した時も剣が抜けなかったじゃないか?」


「メリーダも先生達も教えてくれなくて……後衛になりなさいって。それに得意じゃないから……自力で覚えても……あんまり長く発動しなくて……」

 

「そうか……学校の友達は教えてくれなかったのか?」

 ジョーがそう言うとカティアは更に下を向いた。


「……学校で……友達いないから……」

 そう小さく泣きそうな声でカティアは言った。


(あああ! 俺はアホだな。“ひいき”されているって分かっていただろ、それに領主の娘だ、みんな距離を置いてしまうんだろうな……、それもかわいそうか。……だからカティアは無理に強がっていたのかな? …傲慢なようだけど…みんなに見て欲しくて、学校で人気だから魔術剣士に憧れたのか……) 


 カティアの本音を聞いて、ジョーは妙に納得していた。

 しかし、言葉がすぐに見つからないので……。

 ジョーはカティアの頭を()でた。


「カティア、なんだ……、そのうち教えてくれる奴が現れるはずだ。そいつに教えて貰えばいいさ、それにカティアは若いから成長できる。まぁ……そうだな、ちょっと強く言い過ぎる所を直せば友達だって出来るさ、それには素直になる事だな。ひねくれた人になっては駄目だ」


 ジョーはそう言った。じぶんの事を思い出しながら、恥ずかしさと、どうしていいか分からない気持ちを抑え、カティアに師匠としての立場から伝えてみる。


 カティアは頷いていた、目を赤くして何度も。

「わかればいいんだ。それにメリーダさんや先生達が後衛をやれと言っていたそうだが。アレには俺も賛成だな」


「……どうしてですか?」


「戦闘で、前衛は攻撃の要であると同時に盾だ。あこがれる気持ちも分かるが、そこが崩れると他も崩れるんだ。カティアは魔術に比べると剣術はそれ程上手くない。仮定の話をするけど、3人で組んだ時カティアが崩れたら他の2人に負担が掛かるぞ。だから確実に止めて、攻め込める人が必要になる。カティアが憧れている魔術剣士は前衛と後衛どちらも出来る、最近主流の中衛と言う奴だな。だからどっちにも対応した動きが必要だ、経験や技能が未熟な奴がやっても不安なだけだから、冒険者として成長したいのなら、先ずはどちらか1つに絞って成長させた方が正解なのかもしれない」


「……でも、私は魔術剣士になりたい。そっちの方がいいから」


「……じゃあ、そうだな、それは将来的になればいいだろ。今急いでなってもどっちも駄目になる可能性があるんだ。カティアは魔術を使えるから今は後衛で、その間に剣術を磨けばいいんじゃないか」


「……そうします、ありがとうございます」

 カティアは可愛い笑顔をジョーに向けてそう言った。


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