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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第1章;とある魔剣士&とある魔術士の冒険
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冒険者組合

2016、8/29 改訂

 この町のギルドは他の地区のまとめ役の様で大きく造られていた、町の家の様に木と煉瓦で造られているが複雑な構造をしている。

 入口の上に掲げられた『冒険者組合にようこそ!』という看板の割に入口は分厚く頑丈に出来ていた、全ての者を拒むかのように……


 その扉をジョーは押して入る。

 少し刺さるような視線がジョーに集まるが直ぐに――消えた。

 入って直ぐの所にある巨大な木製の“依頼の掲示板(リクエストボード)”に何人か人が集まっていた。

「よう、ジョー、久しぶりだな、依頼が終わったのか?」

 リクエストボードの前にいた男が話しかけてきた。

「よう、ガルンじゃないか、随分とご機嫌だな」

「まあな、ちょっと遠くまで仕事をしてきたんだ、子鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)獣鬼(トロール)の集団の始末さ、それが今終わった所だ」

 ガルンは目をぎらぎらさせていた、仕事が終わった冒険者とはこんなものだ。

「随分身軽な格好だな」

 ジョーがまじまじとガルンを見た、いつもの格好では無かったからだ。


 ガルンは軽装と言うか只の服に片手剣を腰に差していただけだが、普段は違う。

 彼の本来の装備は重厚な鎧に大型の分厚い盾、それに分厚く突く事に特化した長めの槍を装備していた。

 ガルンの身長は高い2m近くある、それとガルンには弟がいる同じように厳つい顔のガインだ、同じ様な名前をしているし装備も同じだ、違いがあるとすればガインは大斧を使っている位だ。

 彼は冒険者の一団『双璧(グレートウォール)』のリーダーの男だ、双璧は5人組みのパーティでランクは“B”になっている、名前の由来は兄弟の体格や装備から来ている事は明白だった。

 

ちなみにジョー達は“C”ランクだった。――


「そりゃそうだ、重い鎧をいつも装備できるか、がははは!」

 ガルンの快活(かいかつ)の笑い声が辺りに響く、少し周りに(にら)まれた。

 いけねぇ――とそんな顔をして声を小さくする。

「それよりガルン一人か?ガイン達はどうした?」

「アイツらは宿舎だよ、仕事が終わったばかりだから休んでいる、全く、リーダーは休めて無いのにあいつらときたら、呑気(のんき)な者だ」

 ガルンは腰に手を当てて、溜息を()らす。

「そうだな、どこでもリーダーとは大変だな」

 ジョーは笑って返すが――

「お前の所はサイリアの方が大変だよ」

「そうか、俺も苦労しているぞ、さっきだって、魔獣の森で獲物の血抜きの番を一人でさせられて大変だった。」

「……それでも、サイリアは大変だよ。」

 ガルンは目を細めて忠告する。

「そうか」――ジョーは納得の言っていない顔で首をひねる。――何も思い付かなかった。


 その後、互いの情報交換を済ませ、ジョーはギルドカウンターに向かう。

 ギルドのカウンターは大きい、ギルド職員と呼ばれる者が常時受け付けにいる、大体は女性の職員だ。

 これは偏見でなく、昔は半々だったが男性冒険者の割合が多く女性受付の方に皆並んでしまっていた、それもそうだ男性は“(おす)”なのだから依頼の前に同じ男ではなく女性と話して行く方が、士気が上がるというものだ。

 その為女性の受付を増やしていき、そして現在受付はほぼ全員女性がこなしていた。

 まさに適材適所と言うヤツだ。

 

当然ジョーも顔なじみの受付の所にいく。

「あら、ジョーさん仕事は終わりですか」

「そうだよ、アリア、終了の報告と査定を頼みたい。」

 そう言うとジョーは胸元からカイエンに見せたギルドカードを取り出してアリアに渡す。

「はい、お預かりしますね」


 このアリアと言う女性は本名アリア=ニークと言う、彼女は獣人と人間のハーフ、その為人のような体型に犬の様な耳と尻尾が付いていた、それに、そこいらの女性より体が引き締まっていて美人であった、短めの髪に獣人特有の耳がアクセントになっていて非常に人気のある受付けの一人だった。――

 そんな彼女はジョーから渡されたカードを魔術台においていた、その台にある水晶玉に手をあてて情報を読み取っているみたいだ、魔術陣のようなモノが形成されていた。

 

彼女が作業している間に受付の中を見ていた。

 男性も女性もせわしなく働いていた、特に思うのは皆同じ様な服を着ていた。

 ギルド職員は規律を重んじている、冒険者の方は規律を知らないものが殆どで、全てを守っていないと言うか、最低限は守っています、と言うだらしないのが現状だった。

 少し話が()れたが制服によってギルド職員だけでも規律を重んじよ。__とのギルドマスターの方針と前に聞いた事があった。

 

 女性の方はもう少しセクシーさを出すべきだよな。――とジョーは制服を見るたびに思っている。

 ジョーが無粋な事を思っているとアリアが話し掛けてくる。


「ジョーさん確認を終わりました、冒険者“双蛇(ツインスネーク)”『魔獣の森にて食材確保』の依頼の完了ですね、それと今回の依頼完了でギルドレベルが“45”に上がりましたよ、ランクは“C”のままですが」

 アリアが言っているランクはギルドでの力量(レベル)の事だ、小さい方から順にG(1~5)<F(6~10)<E(11~20)<D(21~40)<C(41~50)<B(51~60)<A(61~70)<AA(71~80)<S(81~・・)となっていた。※(_)内は必要レベルです。

 ちなみにDランクのレベルが長いのはそのランクの仕事をこなしていけなければ冒険書として長続きしないと言う判断らしい、いわゆる、普通の冒険者がDランクに位置しいていた。


「報酬のお支払はどうなさいますか? ギルド基金の方に積立でよろしいですか?」

アリアはジョーに尋ねた。

 

ギルド基金とはいわゆる貯蓄にあたる、国や自治区にあるギルド管轄の場所ならば自由にお金を引き出せる事が出来るため、皆、重宝していた。

 この国に主に使われている“カネ”はで三種類『金貨』、『銀貨』、『銅貨』となっていた、価値としては、銅貨100枚=銀貨1枚、銀貨100枚=金貨1枚、となっている。――


「ああ、今回の仕事の報酬は基金の方に廻してくれ、査定は直接貰う事にするよ」

 ジョーはアリアにむけてそう答える。

「はい、わかりました、では此方の紙にサインをお願いします」

 そう言うと1枚の紙をジョーに渡す、羊毛紙で出来ており、紙の質は荒かった。

 この紙は仕事を終えた冒険者の証明用になっていた、仕事の内容、報酬内容等が書いてあり、それを終えた冒険者のサインが必要だった。

 ジョーは名前を書いて、アリアに渡す。


「はい、確認しました、続いて査定ですね」

「ああ、獲物は裏口に回してある」

「では、担当官をお呼びします、裏口でお待ちください、他に何か御座いますか?」

 そう、アリアに言われるとジョーは格好をつけ何時もの決まり文句を言う。

「アリア、仕事が終わって暇だ、それで今晩空いているか、良い所を知っている二人でいこう」

 そう熱い眼差しをアリアにむける、彼女の瞳にむけてだ。

「ジョーさん……無理です、冗談はやめてください」

 彼女はピッシャ――と、言葉を遮った。

 そして一礼して、奥に資料を仕舞いにいく。

 

あれ、本気にされてない――とジョーは格好をつけたまま固まってしまった。


※※※


 裏口の近くに馬車が止めてあった、サイリアは馬の操縦台の所に座って暇そうにしている。

「よう、サイリア、随分――暇そうだな」

ジョーは冗談のつもりでサイリアに話し掛ける。

「遅い! なにやっているの! …馬鹿!」

 いきなりの非難轟々の言葉をジョーに浴びせる。

 

(やっぱり、誤魔化しは無理か、勢いで行けると思ったが)――と内心思っていた。

「いやー、ガルンに偶然にも! 会っちまってな、情報交換をしていた」

「……それ本当?」疑いの眼差しをジョーにむけていた。


(あれ、信用されてない、俺達相棒だよな)ジョーは軽く凹む。

「………」


「よろしいですか?」

 後ろから声がかかる、裏口から誰か出てきたようだ。

「よう、サイモン、元気だったか」

 彼の名はサイモン=エヴェンリーというギルド職員だ、彼は査定官をしている。

 ギルドで働いている職員と同じように制服を正しく着こなし、髪型は黒の真ん中分けで“私は全てにおいて公平です”と言わんばかりの雰囲気を出していた。

「そうですね、私は昨日から体調は変わりませんので、元気ですね」

「相変わらず真面目だな」

「真面目! 非常にいい言葉ですね、ありがたい」

 

嫌味も通じないとは……――とジョーは半ば呆れていた。

「それでは査定を始めましょう、ついて着て下さい」

とサイモンはいうと裏口を通り過ぎ奥にある建物へと歩き始めた。

「サイリア、“浮遊する板”で運んでくれ」

「はいはい、今やりますよ」

 自分だって二回返事をしているじゃないか!――と言葉には表わさないが、腑に落ちない気持ちがジョーは抱えていたが我慢していた。


 彼女は後ろに行き獲物を乗せた板についている水晶玉に魔術を行使する、すると、獲物を乗せていた板が浮き上がる、そしてそのまま荷台の上から移動し始めた、彼女は手をかざしたまま、浮遊する板を操っていく。

 そしてそのまま、サイモンの後を2人共ついていった。


 サイモンがいるのは入口が倉庫の中だった、そのなかに巨大な計測器が置いてあった。

「そのまま、この台の上に置いて下さい。」

 サイモンはサイリアに指示する、彼女は言われるまま巨大な金属で出来た台に獲物である“巨大多脚猪”を置いた。

「では、査定を開始します、その前にこの“保存”の魔術を解いて下さい」

「わかったわ、ちょっとどいて」

サイリアはそう言うと獲物に手をあてて呪文を(つぶや)く。

「……解除」

 そう言うと、巨大多脚猪は淡く光だしそして光が消えていく。


「はい、ありがとうございます」

 サイモンはそう言うと素早く鉄の鎖を獲物に巻き付ける、そして計測器の器具を起動した。

[がちゃ、がちゃ、がちゃ、がちゃ―――]鎖が巻かれていく音がする。

 そして、肉塊が上がっていった。

「690キロですか、かなり大きいですね、これなら10キログラムあたり銅貨20枚でどうですか?」

サイモンが笑顔を向けて聞いてくる。

「まてまて、サイモン、安い、安すぎる最低でも銅貨50枚だ」

 ジョーは慌ててサイモンに抗議する。

「いや、でもこれ内臓取ってないですよね、肉だけの価値を最高に見積もっても22枚位ですよね」

「いや、先程まで“保存”の魔術を掛けていた、それを考慮してくれ、48枚。」

「…そうですね、それなら考慮して23枚」

「おいおい、サイモンさんよ、狂ったかい、こちらと命がけだぞ、それにこれは魔獣の森の主と言っていい、46枚だ。」

「そうですか、この前同じ獲物で790キロの方がいましたよ、24枚。」

「………、40枚。」いきなり勢いを無くすジョーだった。

「それに、この刀傷が大きすぎですもう少し損傷を小さくしてください、25枚」

「ジョー諦めたら。」サイリアが横からジョーに忠告した。

「いうな、サイリア、これはサイモンとの勝負だ、サイモン巨大多脚猪は最近人気が上がっている肉の筈だ、人気商品だぞ、39枚だ」

「そうですね、人気が上がりました、市場では飽和状態ですね、それとも品薄になってから狩りますか? 26枚です、どうしますか? 何か言いたい事でも。」

「……俺ら冒険者はこの町の人の為に命を賭して食料を運んできた、それもこの町の住民の幸せの為に働いている、35枚」


 ある意味な泣き落とし近い言葉をいうジョー、最後の賭けの言葉だった。

「……そうですか、そこまでこの町の人の事を考えていたとは思いませんでした。…全くジョーさんは素晴らしい人だ、私は目頭が熱くなりました」

 

おお、これは効いたか――ジョーな内心喜ぶ。

「わかりました、ジョーさん! この肉町の人の為に25枚で買い取らせていただきます」

 サイモンは頭を下げた。90度のお辞儀であった。


「……あれ、安くなってない?」――ジョーは愕然(がくぜん)としていた。

「それもそうですよ、仕入れ値は安い方が町の人も喜びますからね。はははは! 全くそこまで町の事を考えていたとはジョーさんは冒険者の鏡ですね。」

 サイモンは喜びながら査定書の書類を作成しだした。


(やられたー! 負けたー! 俺はなんて間抜けだ、相手はサイモンだぞ、俺の馬鹿。)


 ジョーは(はらわた)が煮えくりかえりそうだったが表に出せなかった、――町の為に! ――と自ら墓穴を掘ってしまったからだ。

 サイモンはやはりギルドの公平冷徹査定官と呼ばれる実力を遺憾無く(いかんなく)発揮していた。


 サイリアが小さい声で「…馬鹿」と言っているのが聞こえていた。


 その後サイモンから銀貨17枚、銅貨25枚を受け取る、それとゴブリン退治(依頼外)は、1体につき銅貨10枚になった。

 

ゴブリンの命の値段は銅貨10枚か…切ないな…――ジョーは少し寂しい気持ちになった。


 サイモンはその後素早く片付けの準備に入る、何人かの部下が手伝いにきていた。

 そしてその途中で思い出したように言ってきた。

「そうそう、ギルドマスターが貴方がたを探していましたよ。あとで部屋に来るようにとの伝言を言付かっていました」

 

その言葉にジョーとサイリアは――ふっ!――と微かに笑い、――言い放つ。

「お断りします、私達はここには来ていません、他の町に移りました!」

「ジョーという人物はこの世に存在しません、先程死亡しました!」

 サイモンは暫し呆れていた。

「……二人とも無理ですよ、そんな子供じみた言い訳は通用しません、それに今日来ている事はもう知っていますから」


 はぁ~――と深い溜息をつきながら2人とも覚悟を決める、ギルドマスターに会いに行くという覚悟を。


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