領主の娘
ジョー達は依頼の契約を交わした翌日ギルドに呼ばれていた。
サイモン立ちあいの元“顔合わせ”と言うヤツをやる為だ。
ある一室でサイリアとジョーは装備を整え待っていた。
ジョーは頬杖をついて非常にやる気の無さそうな顔をしている。
そんなジョーにサイリアはひじ打ちを喰らわして「ちゃんとなさい」と声を掛ける。
「はい、はい」
そう言いながらも姿勢を戻さないジョー、サイリアは溜息をついてそのまま何も言わずに待っていた。
暫くするとアリアが部屋に入ってくる。その後ろから2人女性が姿を現した。
1人は黒髪で髪を纏めていて綺麗に止めていた。鎧と剣と盾が全て鉄製の綺麗な装備をしていた。
典型的な女剣士と言う風貌をしている。
それでいて、どこか教養があるが目が少しキツイ雰囲気の女性だった、美人ではあるがお近づきがたい印象が残る。
もう1人は金髪で髪が長くそれを馬の尻尾のように後ろでまとめていた。身長は低く顔つきもどこか子供のままで未成熟な女性だった。
簡単に言えば将来は美人になるが今は子供のクソガキと言う印象だった。
彼女の装備は紅いドレスの様な装備だった、金属の胸当てと腰周りをしっかり固め、脚にある脚甲も随分と軽量化されていた。
武器は腰にある一本の細い直剣だけだった。
「サイモンさん、お連れしました」
アリアはそう言って報告する。
「はい、アリアさん、ありがとうございます。下がって結構ですよ」
サイモンがそう言うとアリアはお辞儀をして部屋を出ていった。
「ではジョーさん、サイリアさん、こちらが話をしたベルンの町の領主の娘さんの『カティア・フィル・レブ・ベルンバッハ』さんと、そのお付きの『メリーダ・コノハ』さんです」
サイモンに紹介されてサイリアは席を立ち挨拶しようとするが、ジョーは座ったままだった。
「ジョー、立ちなさいよ」と小声の命令に仕方が無く立ち上がるジョー。
「こちらは、Cランクチームの“双蛇”のジョーさん、とサイリアさんです。」
サイモンはハラハラしながらカティアとメリーダにそうジョー達を紹介する。
するとカティアは前に出てきた。
そして……。
「私の名はカティア・フィル・レブ・ベルンバッハ、この町の領主の娘であり、この町の冒険者の頂点を極める逸材になるだろう。その私に教える初めての名誉をそなた達に与えよう。しっかり教えるのだぞ」
そう高圧的に遥かなる高みからその金髪の餓鬼ことカティアは言った。
その言葉に暫く場が凍りつく。
そして……。ジョーはカティアに歩み寄り不機嫌な顔をして――1発頭に拳骨を落とした。
[ゴン!]と言う音と共にカティアは「アフュッ!」と言う声を出し頭を抑えてうずくまった。
「お嬢様!」
横にいたメリーダが大声でカティアに声を掛ける。
「ジョー、何やってるのよ!」
サイリアがジョーの後ろから怒鳴った。
「いや、あまりにムカついたから一発叱っておこうと思って」
ジョーは無表情のままそう言った。
カティアは頭を抑えて唸っている。
メリーダが寄り添い慰めているようだ。
「ジョーさん、この方は領主の娘さんですよ。あまり乱暴な扱いは駄目だと思います……」
サイモンも小さい声で忠告していた。
すると、涙目になったカティアが立ち上がりジョーを睨みつけた。
「お前はいきなりなりするんだ! 痛いではないか、私は未来のSランク冒険者だぞ」
そう言って怒鳴ってくる。
ジョーはニッコリ笑うと今度は猫手で手刀気味に頭にもう一発喰らわした。
「ぎゅうぅ!」――カティアはそう言って変な声を出す。
「おい、俺は『師弟制度』で師匠の立場だ、お前は弟子扱いだろ、何だ! その口のきき方は!」
ジョーは機嫌が悪いのかそう言って怒鳴った。
「ジョー、ソコまでにしときなさい、暴力は駄目でしょ」
サイリアはそう言ってジョーを止める。
「サイリア、暴力では無い、コレは躾だ。これから習う立場の人間が上から目線では駄目だ」
「まぁ、そうだけど……」
「それに、挨拶もなってないぞ」
ジョーの言葉を聞いてサイリアは(それは、ジョーも同じじゃない?)と思うがその場の空気を読んで黙っていた。
その後、カティアは食いつくが3度目の拳骨を落とされて泣く泣くちゃんとした挨拶をする。
そうして最悪の顔合わせは終わり、ジョーとサイリアはカティアとメリーダを連れてGランク任務『薬草株納品依頼』と『ハグレ小鬼退治』の依頼を受けてギルドを出発した。
※※※
ジョーとサイリアはベルンの町を出て近くの森に向かっていた。森の中にある湖の近くに薬草の群生地がある。ソコの近くまで馬車で向かっている。
ジョーとサイリアが乗る馬車の後ろからカティアとメリーダが運転する馬車がついてきた。
「いい天気だなぁ……」
ジョーはそれを見上げて言う。
「ジョー、曇りだけど……」
「そう言うなよ、サイリア、気分の問題さ、前向きな事を言えば気持ちも晴れると思っただけだよ」
「いいけど、さっきの子で気分は晴れたんじゃないの?」
「まさか、あんな生意気なガキの世話をしなきゃならないんだぜ。それになんだ、あの馬車、送迎用だぞ」
ジョーは後ろを向くとしっかりとした屋根付き運転手付きの意匠に凝った黒い馬車が大型の立派な馬に引っ張られてついて来るのを確認した。
「まぁ、ずいぶんと立派よね。さすが領主の娘なだけあるわね……」
サイリアも確認してそう言った。
「だろ、なんで冒険者になろうとしてんだ? それにメリーダって人もお付きのメイドだろ?」
「多分そうだけど、冒険者は誰でもなれる決まりじゃない。それより心配な事があるでしょ!」
サイリアは怒鳴る。
「なんだよ、サイリア、そんなに鼻息を荒くして怒っているんだ?」
「ジョー、さっき余計な暴力振るったでしょ!」
「いったろ、あれは、し・つ・けだって!」
ジョーもあの時の事を思い返して言い返した。
それにサイリアは溜息を吐く、そして……。
「ジョー、あの子領主の娘よ、絞首台か斬首台行きになってもしらないからね」
恐ろしい事を言うサイリア。
「……………」
ジョーは無言で後ろにある蛇腹刀を撫でた。
【安心しろ、その時は私がジョーの首を刎ねる最後の剣の役割になってやろう】
スネークも見捨てる発言をする。
「……今後、無闇に暴力は振るいません。機嫌が悪くても我慢します」
ジョーはそう宣言する。
「もう遅いかもよ、帰ったら守衛兵に捕まって牢屋行かもしれないかも」
「…………」
ジョーは再び黙ってしまう。
そのまま、ジョー達は1時間程馬車で移動して目的の近くの森についた。




