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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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捨て身

 売り言葉に買い言葉だが両者がまた険悪な雰囲気のまま睨みあう。


「ジョー、喧嘩は駄目よ、“一応”ギルマスなんだから」

 ジョーにサイリアが声を掛けるがジョーは冷静にはならない。怒りが充満して可視化されている様子だった。後ろに蛇がいる、そしてリングも鬼女の般若がそこにいるようだった。


「まぁまぁ、両者冷静になって落ち着きなさい」

 サイモンがお役所仕事のように冷静な対応を求めてきた。

「そうよ、いい加減にしなさい。何度目よ」

 サイリアも止めようとする。

 が、2人は止まりそうにない。


「ジョー、私の命令が聞けないの!?」

「ああ、聞けないね。もう、うんざりしている」

「そう、ソレも愛情の裏返しよね、この仕事が失敗したら私は解雇されるかもしれないのよ」

「それはいいな、1人は寂しいから早く結婚して、ベルンの町を出て幸せになれよ。相手がいたらだけどなっ……」

 ジョーはそう言ってリングを嘲笑う。

「何言っているの! そんな相手1人や2人位居るわよ、私はね、ギルドの仕事の理想に生涯を()けているのよ。決して結婚したい訳じゃないから」

 リングは誰もが“嘘だろ”と言える嘘を平気で吐いた。さすがのサイモンも目を丸くして絶句している。


「この前、モモガ村のお見合いに行ったのにか?」

 ジョーに言われリングは驚く。目が泳ぐ、手が震えている。

 確実に動揺していた。

「え、えっと、あに、なにそれ、エツ、何言ってんの、ジョー、そ、そんな訳無いじゃない、あの、その、視察! 視察をしていたのよ、モモガ村の!」

 リングはどこを見ているか分からない顔で色々と訳の分からない事を言っている。


「おいおい、お見合いで“色々やらかしたそうじゃないか”モモガ村の村長の手紙に書いてあったぞ」

 ジョーは追い詰める、リングを言葉攻めにした。

 蛇のようにしつこく相手を追い詰める。


「エッ、なんのこと? 私わかんない、そんなの知らないモン……。ジョーは何言っているのかニャア……」

 そういって可愛いポーズをとるリング。


 だが……静寂がその場を支配した。


 そして。リングは諦め、その場で机に(ひたい)(こす)りつけて頭を下げた。

「ごめんなさい、ジョー、サイリア、この依頼受けてくれないと、私、解雇されちゃう。何も無い私が世間の寒空の中、無一文で外に出されるのよ。世間に犯されちゃう、汚されちゃうの、もう私が生きる所なんて無いのよ。それでもいいの。私が家無しになって町かどの片隅で身体を売るのよ。お願いジョー、サイリア、助けて頂戴」

 リングの必死の言葉にサイリアはジョーを見つめ「ジョー、良いんじゃないの?」と言っている。


 その言葉を聞いたジョーは腕を組みながら言う。


「断る!」

 そう、ハッキリ断言した。


 流れ的にはそのような言葉を吐けないが、今までの憎しみと恨みの蓄積といっていい。


「いいじゃないか、もしかしたら子供が出来るかもしれないだろ」

 そう切り捨てるジョー。その言葉にリングはジョーを睨んだ。


「ギルマス、もうさすがに説得は無理では、Dランクの依頼にしましょう、報酬を5倍に釣り上げれば可能性があります」

 サイモンも説得を諦めそう進言した。


 すると、リングは何かを諦めた顔になり……。

「悪いけど、最後にジョーと2人っきりで話をさせてくれる? 本当に最後だから。これで(あきら)めがつくから」

 と、穏やかに言ってきた。

 

 その言葉に戸惑いながらサイモンは立ち上がり、サイリアもジョーに声を掛けながら部屋を出て廊下に出ていった。


 ――不穏な空気のままジョーとリングは2人っきりで部屋に残される。


「ジョー、お願いをきいてくれないんでしょ」

「ああ、無理だな。カネでも無理だ」

「じゃあ、これでも……」

 そういって、リングは服をはだけさせて、肌を露出し始める。

「汚いモノをみせるな!」

 ジョーは全く動揺などしない。むしろ、事前に分かっていた様な落ち着きぶりだった。


 だが……リングの行動はその上をいく。

「ええ、もう色仕掛けでは無理でしょうね。でもね、ジョー、コレはその為じゃないの」

 と、更に服を脱いでギリギリまで攻めるリング。

 ジョーもリングの行動が読めなかった。不思議そうな顔をする。


「でも、この状態で『キャー、ジョーに犯される!』って言ったらどうなるかしら……」

 そういって、目の焦点があっていない、悪い笑みを見せ、口を半笑いにさせ、人生に絶望しきった表情を見せるリングの姿がソコにはあった。


(阿呆な! そんな事だけも信じないぞ! むしろ、リングの評判が……)

 ジョーはリングの言葉に驚くが冷静に考え始める。

 リングはそんな事は分かっている。あくまでジョーもろとも自分を落とすつもりだ。

 ジョーの信用を落とす、自分ごと。

 リングの信用など有って無い様なものだ、1から0に落ちてもさほど変わりが無いがジョーの場合は違う、積み上げてきた信用が噂によって落ちるだろう。

 暫くは仲間内でも笑い話になる。

 それに嘘でも噂でも暫くは人伝いに伝わって消すのにかなりの労力が必要になる。


 ジョーはリングを見る。彼女の眼は本気だった。

「ジョー気付いたようね、この作戦の恐ろしさが……」 

 そういって勝ち誇った顔をする。


 リングの捨て身による特攻にジョーは追い詰められていた。


(しまった、2人っきり自体が罠か……)

 ジョーはその時、いつの間にか追い詰められたと自覚した。

「ギルマス、そんな事をしても意味が無い、さらに信用を落とすだけだ」

 ジョーはそう必死で訴える。異常者に訴える。


「フッフッフッ……いいの、『私には何も無いもの』」

 リングはそう返した。某アニメの有名な台詞を言いだす。

 (はかな)げにそして今にも消え去りそうな声で。

 

(危険だ、リングは本気だ! あいつは俺を道連れにする気だ!……)

 ジョーはそう思い辺りを見回す。

 方法は3つあった。

 1つ、横にある蛇腹刀でリングを切り捨てる。

 この場合、ジョーはギルドに掴まる可能性もあり国外逃亡する羽目になる。一部では英雄扱いされる可能性もでてくる。

 2つ、窓から逃げる。

 簡単だが、いい訳が出来ない。リングに勝手な事を話される可能性が大きい。ある事無い事言われ、リングに有利。

 3つ、廊下いる、サイモン、サイリアを呼ぶ。

 一番有望だが、リングの動き次第で最悪の展開に変わる。その場を見ればジョー、リングどちらにも転ぶ可能性がある。


(どうする、俺はどうすれば……)

 ジョーは焦る、背景に『ザワ…ザワザワ…ザワ…』と、聞こえてきそうな位、追い詰められている。


 が、リングはさらにジョーを追い詰めた。

「その場を動いたら、私は声を上げる。武器に手を伸ばそうとしたら、私は声をあげる。逃げようとしたら、私は声を上げる。そして……私がこの手でジョーを触ったら声を上げる」

 そう言ってリングはゆっくりとジョーに手を伸ばしてきた。

 ゆっくり薄ら笑いを浮かべながら。


(な・ん・だと、どこにも逃げ場が無いじゃないか)


「どうするの、ジョー?」

 リングがそういった。


(ちくしょう……、なにか手があるはずだ。 閃け、閃け、俺………)

 ジョーは頭を抱えてその場で考え込んだ……。



※※※


「では、ジョーさん、サイリアさん、今回の依頼内容です。それにしても二つ返事で了解して下さり感謝します」

 そういってサイモンは笑顔で依頼書を見せてきた。

「そうよね、ありがとうニャン」

 リングも笑顔だ。いつものように残念可愛い格好をしていた。

 対照的にジョーは落ち込み暗い顔で依頼書を眺める。

 そんなジョーをサイリアは慰めていた。


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