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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第2章;町の危機に立ちあがる冒険者
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王様小鬼討伐戦[3]

 王国兵士が森の中に入って数十分後、平原に置いて行かれた冒険者達は初めの場所から動かないでいた。

 防衛陣地で大人しく事の成行(なりゆ)きを見守っていた。

 追いかけても追いつけないのは分かっていたからだった。


 そして、暫くすると初めに森から響いた、けたたましい怒声が……今は悲鳴に変わっている事に冒険者全員が気が付いている。


「おい、ジョー、この“(きら)びやかで上品な悲鳴”は小鬼(ゴブリン)か?」

 オジュールは近くにいるジョーに訊いた

「いや、違うな、この上品な悲鳴は王国兵士だな」

 ジョーは答える。


 ジョー達は王国兵士が森に突入した後、オジュール達の集まりに来ていた。

 オジュールを中心に15名程が集まっている。

「この悲鳴は小鬼(ゴブリン)達にやられたね」

 溜息混じりにヒュールが断言する。他の冒険者達も同じ様に王国軍の状態を森の奥から木霊(こだま)のように聞こえてくる悲鳴から察してした。

 

 多分、壊滅(かいめつ)しているだろうと……。


 その為ジョーはすぐさま移動する、オジュールに冒険者達を(ひき)いて貰うために。

 ジョーだけでは無い、『最悪を想定して行動しろ』は冒険者の鉄則だった。

 大きな戦だと経験豊富で物分かりのいい指揮官の方が生き残りやすい、それにオジュールは大人数を指揮する翼陽の団の団長だ、指揮者にこれ以上の適任者はいなかった。


「じゃあ、オジュール頼むぜ」

 ジョーはそう告げると、オジュールはやれやれといった仕草をとり、眼つきと雰囲気を一変(いっぺん)させる。


「お前ら聞け!! どうやら王国兵士共は“名誉ある戦死”をしたみたいだ!! このままでは我々も同じ様な道筋をたどる事になりかねん。

これより俺が指揮を執る!! 誰か反論がある者はいるか!!」

 オジュールはその場の全てが聞こえる人程の大声でそう宣言した。


「俺はお前に従うぜ!!」

 どこからか声がする、“双璧”のガルンが大声を上げる。

「俺もだ、オジュールが指揮でいい!!」

 ジョーも声を上げる

「私達も従うよ!!」

“ミラーキャット”のアンジーも声をあげた。


 そして続々と声を上げ始める冒険者達。すぐさま大半の冒険者が賛成の声を上げる。

 ―― これは事前に決めてあった事だった。オジュールが指揮しやすくする為に配慮しての事だ。


「お前らの意見は分かった!! これより俺が指揮を()る、全員それに(したが)ってくれ!!

逃げ出したい者は今すぐにこの場を去れ!! 邪魔だからな! 

「その場合ベルンの町で侮蔑(ぶべつ)の対象になるだけだがな……。

「なに…、俺が指揮するんだったら楽勝だ!! 気楽にやれ!!

「そうすれば今日の夜は全員で酒が飲めるぜ!!」


 オジュールはそう言って、冒険者を纏め上げる、大声で威厳(いげん)を出しながら、尻をひっぱだく言葉も忘れない、そして少し気楽にそう言った。


 ―― オジュールらしい言葉に冒険者達から声援が飛ぶ。


「じゃあ、すぐさま動け! 重装甲の奴は前衛に集まって壁を作れ、弓兵と魔術士達は後衛に移動しろ、残りはその間だ! 急げ!!」

 オジュールは直ぐに命令を飛ばす。

 そうして100名近い冒険者は直ぐに移動を開始した。


「団長、お疲れ」

 ヒュールは声をかける。

「ヒュール、疲れるのは今からだ。やっぱり人気者の団長は辛いぜ」

 オジュールは(うそぶ)くようにそう言って笑う。

 そうすると、ヒュールは呆れながらオジュールと団員達と話し込みを始める。


「ジョーはどうするの?」

 慌ただしく動く冒険者達を尻目にサイリアはそう問いかける。

「ああ、俺は前衛の補佐、いわゆる中衛だな、ガルンやガイン程、盾役が出来ないから撃ち漏らした小鬼(ゴブリン)達の処理だろ」

「楽じゃないそれは?」

「楽じゃないって、サイリア達が魔術を行使する為に時間稼いで安全を図る為の仕事だろ、それに危険度だってどこも同じだって、前衛が敵の勢いを潰して抑える、後衛が後ろから援護、そして中衛はその間に出来る隙間を埋める事が仕事なんだよ」

「まぁ、納得は出来るけど……。ジョー、それって仕事量同じなの?」

「まぁ、報酬は一緒だな!」

 ジョーは揶揄するように言ってサイリアにニタリと笑顔を向ける。

 その発言にサイリアは無言で睨みつけるような眼で見る、からかわれたとわかったからだ。


「それより、サイリアお前は後方だ、魔術で味方を撃つような真似はするなよ、前衛の更に先の地面に向かって撃て、間違っても敵に当てようと思うなよ」

「わ、わかってる!! それにそんなに外れないし」

 強がって大声になるサイリア、顔が赤くなっていた。

(そこは、日ごろの信頼と実績が……)――そう思うジョー。

「とにかく、初めから召喚術使って精霊を呼び出しておけよ、直前は止めておけ」

「わかった、ノンちゃん(※土精霊)呼び出しておくから」

「ああ、それが良い、すぐに奴らが来るかも知れないから早く後方に行けよ」

「うん、わかった」

 サイリアも素直にジョーの助言に従う様に頷く。

 いつもの様にそうやってお互いの無事を祈るような会話をしていた。


「話しは終わったか?」

 突然、横から声がする、ジョー達が振り向くとヒュールとオジュールが立っていた。

「おい、何だ! 突然!」

 ジョーは驚いた声をあげヒュール達を見る

「なに、ジョーに仕事を持ってきただけだ」

 そう、くったくの無い笑顔でヒュールは言う。

「なんだ、いきなり?」

 ジョーもサイリアも首を傾げて不思議に思う。

「俺が説明するよ、ジョー、これでも指揮官だからな」

 そう言ってオジュールは前に出る。

「何、簡単だ、これから小鬼達が大勢攻めてくるだろ、その勢いと数はこっちを上回る事間違いなしだ。……そこであっちの頭を少数精鋭で殺す事になった。ジョーはそのメンバーに選ばれたおめでとう」

 そう軽く死刑宣告をしてくる。

「おい、オジュール、いつそんな事が決まったんだよ!」

「なに、ついさっきだ、ハッハッハ」

 オジュールは声をあげて笑う。

「ジョー、俺からも説明する、団長の話は大雑把(おおざっぱ)過ぎる。簡単に言えば俺を含めて機動力のある奴が5人位で馬に乗り迂回(うかい)しながら森の中に入る、そして横から王様小鬼(ゴブリンキング)の首を獲るんだ、その間に団長達が小鬼の大半をここで抑えて、目標を殺したら一気に攻め込んで反撃するって作戦だ」

 ヒュールは(こと)()げにそう言った。

「それって少数精鋭の部隊は危険じゃないか?」

「そうだな、だから腕の立つ奴が必要なんだ、ジョーみたいな奴が欲しくてな」

「おだてるなよ、ヒュール、後の奴はどうするんだ?」

「それは、もう絞っているよ、後は声をかけるだけ、それに『危険度はどこも一緒』なんだろ?」

 ヒュールはからかうように言ってジョーを見た。


(ヒュールはたしか……小人族(ボビット)だったよな、あいつら五感が鋭いらしいから話しを聞かれていたな、こりゃ……)


 ジョーは深い溜息を吐く。

「それにジョー、お前は俺に従うと宣言したじゃないか」

 と、オジュールは笑みを浮かべ言ってくる。

 ジョーは確かにそう言った、間違いなく、それにオジュールを指揮者に仕立てようと画策したのもジョーだった。

 ジョーは観念(かんねん)したように項垂(うなだ)れて返事をした。

「…わかったよ」


「そうか、助かるぜ! ジョー! 俺はこれから、『王国軍の残り物』を使って急いで防御陣形を立て直すから任せておけ」

 そう言ってオジュールはすぐさまその場を離れる。


「じゃあ、ジョーも付いて来てくれ、こっちも早く移動しないといつ小鬼(ゴブリン)達が攻めてくるか分からないからな」

「わかった、ヒュール、ちょっとだけ待ってくれ」

 ジョーがそう言うとサイリアの方を向き直す。

 彼女は話し合いを見守っていたが一言口を出さずにただ心配そうに見ていた。

「サイリア、お前は後方から動くなよ、オジュール達が守ってくれるから出来るだけ指示通りにするんだ」

「う、うん、わかった、ジョーも気御つけてね……」

 心配そうなままジョーの顔を見つめるサイリアだったが。

「…私も…一緒に行く」

 そうボソッとサイリアは漏らした。

「……駄目だ! サイリアは高速で移動出来ないだろ、それに魔術士をかばっている余裕は無いよ」

 そう言ってなだめるようにジョーは言う。

 それを聞くとサイリアはむくれたまま黙ってしまった。


(たまに頑固だよな、コイツは……)

 ジョーはそう思ってサイリアの(ひたい)に……。


 ―― 軽くデコピンをする。


 その行為に驚くサイリア、すぐにジョーの顔を見ると薄らと笑っていた。

「心配するな、サイリア、最速で片付けてくるから、こんな戦すぐに終わるさ」

「……う、うん」

 そう言って、ジョーとサイリアの間に特別な雰囲気が流れ始める……。


「おい、熟年夫婦の会話はもういいか?」

 突然、そう言って間に割り込むヒュールだった。


 突然の事で驚きつつも、サイリアは「別に夫婦じゃないし!」と、声を(あら)げヒュールに抗議して素早くどっかに行ってしまった。


 その後、ジョーとヒュールは“ミラーキャット”のラビス、アンジーと“三槍将(トライデント)”のラリーに声をかけて作戦の快諾(かいだく)を貰った。


 こうして役者は(そろ)い、ジョー達は急いで王国軍が残した騎馬に(またが)り、大きく迂回しながら森の中に移動し始める。


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