王様小鬼討伐戦[2]
ザボル=バイル・フェン・リュ―スタス率いる王国軍は森の中に逃げ込んだ小鬼達を倒していった、威勢よく進んでいく。
小鬼達は逃げるだけだ、槍に突かれ、弓矢を放たれ、剣撃で背中を切り裂かれ数を減らしていく、馬の蹄が地面を蹴る音と悲鳴が森林の中で響き渡る。
血の匂いと兵士の威勢のいい声が森の奥深くに流れていった。
ザボルは馬上から順調に敵を攻めていた、もうかなりの数を殺している。
巧みに馬を操り小鬼達の横に馬を近づけて槍で突いていく。
「一気に全滅させろ、一匹たりとも逃がすな!!!」
自分の部下達に檄を飛ばした。
鎧の上からでは分からないが声は高揚した声でずいぶんと楽しそうな感じだった、戦闘で気持ちが昂っているのだろう、周りの兵士も同じ様に声を上げていた。
―― 全ては順調に運んでいた。
「若、だいぶ森の奥まで来ました、もう引き返しませんか?」
馬車に乗りながらザボルの後ろからそう老人の声がする。
「じぃ、何を弱気な事を! それでも元騎士か! このままや奴らを全滅させるんだ、我がリュ―スタス家の家名に掛けてだ!」
「しかし若、この先の森は急勾配があり、何より木々が邪魔をして馬が走るには奥は狭くなります。ここは一端引いて戻るべきでは?」
「馬鹿者が! 恥を知れ! このまま全滅させるんだ! 冒険者共に騎士の栄誉と力を見せつけるのだ!」
ザボルはもの凄い剣幕で怒る、じぃと呼ばれる老人騎士に怒鳴りつけた。
その威圧感にその老人騎士も黙ってしまった。
「おい、あそこにゴブリンの群れだ!」
他の兵士の声がする!森の奥に何十匹かの小鬼達の集団が逃げていた。
「そのまま追いかけろ!」
ザボルは指示を出す。
―― そして王国兵士達は森の奥へと進んでいった。
暫く追いかけたが小鬼達の姿は消えていた。
「どこに行った! クソ!」
と、貴族とは思えない悪態を吐きながらザボルは馬を進める、森の奥は木の根や急勾配の細かい崖などが増えていきなかなか馬を全力で進められないでいた、それに木の枝が張り出し行く手を塞ぐ。
更に進むと崖の隙間とも言うべき大きな岩の隙間に小鬼達が逃げ込んでいるのが見えた。
ザボルは進路を変えて急いで突撃していく。
辺りは道幅が狭くなり、ザボル達は長蛇の陣形(※2列縦隊)で進んでいくと視界が開けた場所に出る。
そこは周りを4~5程の段差に囲まれた崖のような場所だった、すり鉢状にほぼ円形の場所にザボル達は到着する。
その崖の上には辺り一面に小鬼達が待ち構えていた。
全員ニヤニヤ笑っている様子だった。
「ギャ、ギャァアア!ゲギィウ!」
1匹の大型な小鬼が現れて奇声を発しながら命令を下す。
「全軍反転逃げるぞ!」
ザボルはすぐさま命令を下す、余りに悪い地形と待ち伏せされていた事に気がついたからだ。
―― が……全ては遅かった。
小鬼達は石を投げてきた。どこにでもあるこぶし大程の大きさの石を“四方八方前後左右”と言葉の意味が重複する程の石の雨が降りだす。
甲冑を装備している者にとって致命傷にはならないが馬は違った。
突然の石による攻撃に恐慌状態になり、乗っている兵士達を跳ね上げ振り落とし始めた。
地面に転がり落ちる兵士が多数出る、それでも止まない石の雨。
「落ち着け、皆、落ち着くんだ! 逃げるぞ!」
必死に声を上げるザボルだが兵士達はそれどころでは無い。
辺り一面王国兵士の悲鳴が上がっていく。
―― そこに更なる恐怖が待ち受ける。
[ゴン!]と、石より岩と言った方が正確な大きな物体が兵士の頭を直撃した。
「見ろ、獣鬼だ!」
1人の兵士が叫ぶ。
そこには紛れも無く獣鬼が20匹以上いた。
そいつらが手当たり次第に大きめの石を投げだした。高低差もある為、勢いよく投げだされた石は兵士の身体に当たるとそのまま馬から投げ出される程の衝撃を生んだ。
完全に形勢逆転した王国軍と小鬼軍、逃げ惑う兵士だが出口が狭く逃げ出せないままでいる、更にその崖の上にも多数の小鬼達が石を投げて狭い道にいる兵士達も同じ様子で混乱していた。
更に、小鬼達が倒れた兵士目掛け段差から飛び降りてくる、持っている小刀や農具、槍を使い複数で群がりながら王国兵士をたたみかける。
甲冑の隙間から剣先や槍を突き刺して攻撃を加えていく小鬼達、悲鳴を上げ絶命するのが一目でわかる程の血が甲冑から滴り落ちていた。
その内に兵士の死体は甲冑を剥がされ、むき出しになった肉体に武器を突く刺し、祀り上げられるように小鬼達は見せびらかしていった。
―― そして、一斉に小鬼の群れが襲いかかった。
「逃げろ! 逃げろ!」と、言う声が響き渡るが上手く逃げたせていない。
「馬鹿者、私を先に逃がすんだ!」
と、ザボルは大声を上げるが、その内、頭に強い衝撃を受けて吹き飛ぶ。
馬上から落ち、身体が意思に反してゴロゴロと何回転もして止まった。
何とか立ち上がろうとするが、上手く立てないまま、視界に大きな影が映った。
そこには、醜い顔と今まで見た事もない大きさと体型の小鬼がいた。
そして腹の底から恐怖する程の咆哮を吐いて襲いかかってくる。
それが、ザボル=バイル・フェン・リュ―スタスが戦場で見た最後の光景だった。
指揮官を無くし、恐慌状態になり、形勢も悪いまま王国兵士はその数を減らしていく。
逃げ場無く逃げようとする光景は滑稽で愚かだった。
これが無能の指揮官の元の兵士達の光景だとすると哀れと言っていい程の大敗のまま、生き残った王国兵士達は馬に乗って逃げる者、そのまま走って逃げ出す者様々だった。
そのまま四方八方にその場から逃げ出していた。
―― そのあとを何千匹もの小鬼達が追いかけ始める。
その光景は逃げ出した兵士からすれば悪魔に追いかけられるのと一緒だった。




