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文献汚染という底なし沼

さて、文献汚染という言葉を知っているだろうか。


近頃、「STAP細胞」についての論文が撤回されることがあり

笹井氏の自殺に端を発し

巨額の金銭を無駄にした

理化学研究所ひいては日本の科学分野研究の信用を失墜させた

と、まさにバッシングの嵐である。

小保方晴子氏本人は、早稲田大学の博士学位取り消し、理研を懲戒解雇相当


ちなみに、これは余談ではあるが

iPS細胞はすぐに認められたにも関わらずSTAP細胞はそうではなかった。

この二つの細胞には明確な違いが存在する。

再生医療の研究において万能細胞の作製は悲願である。

が、その手法について、実はiPS細胞はすでに予言されていた。

癌遺伝子などの遺伝子を入れることで万能細胞化すると。

その遺伝子の組み合わせを総当たりで行いできたのがiPS細胞である。

一方、STAP細胞は酸性処理で万能細胞にする。

これは基本的に不可能(その条件では万能細胞にならない)と考えていた。

このことが追試試験で影響しなかったかといえば正直、否定できない。

ただし、小保方氏本人すら再現できなかったということは、

今回の方法では細胞を作ることはできないということを露呈したこととなる。


なお、実験結果に手を加えるのは彼女に限った話ではない。

改ざんや捏造は有名な学者も行っている。

日本では著名な野口英世、彼の研究には捏造があったとされる。

彼は顕微鏡で見えるはずのないものを発見したと論文を書いている。

そのため外国ではその名前は消えてしまっている。


改ざんで有名なのはメンデル氏。

メンデルのエンドウマメの交配実験は有名だが、

実はこの実験、実際にすると教科書通りにならないことがある。

遺伝子の交叉を無視できる実験(交叉が関係しない実験)は教科書通りになる。

まぁ、このことはどうもメンデルはわかっていた節がある。

メンデルの法則はあくまでも基本的な遺伝法則。

この法則を頭に浮かべていた状態で実験していたようなのだ。

結果的にこの基本的な法則の確立が交叉などの発見につながっていく。

ある種の天才が直観的に分かった事実を証明するために一部改ざんしたわけだ。


だからといって、こうした不正が許される道理はない。


一番の問題は、論文は引用されるということだ。

論文Aが間違っていた場合、論文Aをもとにした論文Bも疑惑が残る。

というよりも、論文Bも間違った結果を導いている可能性が生まれる。

そして間違いがわからないとずっと引きずられていくこととなる。


こんな例はいかがだろうか。

光合成に必要なものは「光・水・二酸化炭素」などと言われるが、

実際は光合成は二つの反応の混ざりもので、光呼吸と炭酸固定に分かれており、

酸素が存在しなければ光合成は起こらない。

酸素が反応に使われ最終的に酸素が出る。

中途を無視して反応式を書くため起こる間違いである。

某クイズゲームで光・水・二酸化炭素・酸素、光合成に必要ないものは?

などというクイズが出た時は正直あせったものである。

ちなみに光合成についての勘違いは当時の実験装置に原因がある。

ちなみに実験自体の価値は大きいため否定する気はない。

ただ、この二つの反応を分離して観測できなかったためおきた不幸な事故だ。

それがいまだに残り続けていることには少し危機感を覚えるが。


このように、論文は次の論文、さらにつぎへと引き継がれていく。

そして間違いもまた引き継がれていく。

これを『文献汚染』とよぶのである。

論文について殊更、審査を厳しくするのはこのためである。


※実はわかりやすくするため、この内容にも一部、虚偽というか微妙な内容が含まれています。詳しく知りたい人は大学レベルの勉強をしてください。詳細はそこで出てくると思います。


と、ここまでは科学分野の話。

実は文献汚染とは科学論文に限らずに起きる。

というより、間違ったものをそのまま参考文献にしていると文献汚染である。

そう、『吉田清治氏による慰安婦についての証言』である。

これは虚偽として取り消された。

だが、文献汚染は残っている。

一般的に「クマラスワミ報告書」の吉田氏の証言という部分だけ取ればいいと考えられていることも多い。そして、この報告書で重要な位置は占めていないため内容的には関係ないとする人もいる。

2015年11月08日04:00現在

日本国は一部撤回を申し入れたが拒否され、それに韓国は深刻な憂慮を表明。

本当に報告書の中で直接吉田氏の証言にふれている箇所は少ないうえに、証言には疑念が残るという考えも掲載されている。では、問題はどこか。

この報告書では他にもジョージ・ヒックスという人間の著作も引用されている。

が、この本、参考文献として吉田氏の証言が使われているのである。

文献汚染の観点から言えば一から洗いなおさなければならない。

というより、なぜ証言に疑念が残るという考えを耳にしておきながら、

証言を参考文献としている本を堂々と引用して報告書など作れたのだろうか。

吉田氏の証言への疑念を無視し、証言裏を取らなかった無能なのか。

それとも、すでに結論ありきという報告書ではあるまじきことをしていたのか。

この先、この報告書を用いたものはすべて文献汚染されていくのである。


なぜ、STAP細胞の論文は取り消しを急がれたのか。

それはこういった文献汚染を防ぐためである。

一度広がった文献汚染は、全てを汚染しつくし根底から腐らせてゆく。


私たちは書く文章、読む文章

どちらにも注意しなければならない。

それは、容易に文献汚染に飲み込まれてしまうからだ。


※文献汚染されているからといって、必ずしもその内容が間違いであるとはいいきれないところがまた難しいのだが(様々な理由で意図しない文献汚染が起こっていることはあるので)、基本的には文献汚染は許されないものである。

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