メディアの成熟度
ダイヤモンド・オンライン 6月25日(土)8時0分配信
「海老蔵の取材自粛要請に週刊誌が応じない理由」
を読み、あきらかに事実のいくつかが抜け落ちていることが分かり記述した。
メディアの成熟度がわかるバロメーターとなる問題が今回浮上した。
ダイヤモンド・オンライン 6月25日(土)8時0分配信
「海老蔵の取材自粛要請に週刊誌が応じない理由」 (サインは降旗 学)
引用・抜粋させてもらう。
歌舞伎役者に嫁ぐからには命をかける覚悟がなければ務まらないと言われたほどで、だから麻央さんの回復は私も願ってやまないが、他方、海老蔵氏が要請したという取材自粛のお願いにはちょっと首を傾げているのである。
〈人の命に関わることです。よろしくお願いします。マオ本人の負担になるような撮影はやめてください〉
今月十日夜のブログに、海老蔵氏はこう綴った。そして、九日に会見を開き、麻央さんの病状を打ち明けたのは、実家周辺への取材を自粛してほしかったからだと説明する。その後も海老蔵氏は取材陣に自粛を要請する旨を綴り、十七日のお願いで自粛要請は五回を数えるに及んだとのことだ。
〈多くの記事を目にします。まおのことに関しましては雑誌の方々、静かに見守ってください。よろしくお願いします。何度も何度も申し訳ございません〉(17日)
海老蔵氏の気持ちは理解しているが、しかし、そこで“はい”と引き下がったら、雑誌メディアは存在意義を失う。と同時に、海老蔵氏はその自粛要請がご自身とメディアとの決別を意味していることを理解しているだろうか?
取材を自粛もしくは切り上げる条件として、私たち現場の取材者は海老蔵氏にこんなことを申し出るだろう。であれば、今後はご子息の襲名・ご披露に関する取材および舞台・公演の宣伝を自粛させてもらいます、と。これは海老蔵氏だけでなく、すべての芸能人に言えることなのだ。婚約だ結婚だの慶事のときにはマスコミを呼んで幸せアピールに余念がない一方で別居だ離婚だ不倫だとスキャンダルのときは逃げるのはどうなのかと。
私たちは芸能人や著名人の慶事を報じさせてもらう。おめでたい話は皆で分け合いたいという気持ちがあるからだ。その代わり、祝い事を報じたように、訃報のような不幸をはじめゴシップやスキャンダルも同様に追わせてもらう。それがフェアな報道だからだ。
海老蔵氏の気持ちを理解したうえで繰り返すが、彼の自粛要請は、このフェアさ、暗黙の了解を反故にする申し出でもあるのだ。書く・書かれるという双方の立場はあっても、書く・書かせないという関係性はないからだ。そんな理不尽があるとすれば、それは言論を封殺する軍事政権国家か彼の大国か北のあの国くらいのものだ。
取材される側を含め、この理屈がわからない人は芸能界やマスコミで働けないだろうし、それでもなお週刊誌をひどいと思う人は週刊誌を読まなければいいだけの話だ。ワイドショーをひどいと思ったらワイドショーを見なければいい。
≪略≫
問題は、海老蔵氏が言う、麻央夫人の“命に関わる”取材や“マオ夫人の負担になるような撮影”を週刊各誌がやっていたのかどうかだ。J-CASTニュースはこんなふうに伝えている。
〈「何度も何度も」とあるように、海老蔵さんはマスコミに対し重ねて取材自粛を訴えてきた(中略)だが、そんな必死の訴えも一部マスコミには届かなかった。会見直後のブログでも自粛を念押ししたにもかかわらず、翌10日には麻央さんの実家周辺等で取材や盗撮行為があったというのだ〉
かなり海老蔵寄りの見解だが、この記事をお書きになった方は、はたして誰から実家周辺等での取材や盗撮があったことを聞いたのだろう? ご本人が“実家周辺等を取材して”盗撮をしている週刊誌カメラマンを見つけたのか、はたまた、取材自粛を要請した海老蔵氏本人に“取材して”聞いたとか。どの媒体がどんな盗撮写真を掲載しているのか、J-CAST氏は教えてほしい。どの週刊誌ですか?
その盗撮の度合いが一線を越えていると判断しうる下劣な写真であるならば、私もJ-CAST氏と一緒にその媒体を糾弾してもいい。やってはいけないことをやった媒体があれば、同業者として強く抗議することもやぶさかではない。
だが、海老蔵氏がブログに書いた自粛要請を“必死の訴え”と綴るJ-CAST氏の書きぶりを読むにつけ、もしかしたらこの方は本物の“取材現場”をご存じなく書いているのではないかと勘ぐったりもする。メディアスクラムの現実を見知っていれば、海老蔵氏のブログを“必死の訴え”などと表現したりしないからだ。
私にはメディアスクラムの輪から逃げ出した情けない過去がある。こんなところで取材したくないと思っての逃避だったが、私たち取材者は誰もがそんな経験をしている。
週刊誌の編集者やライターは、そのネタを記事にする意義と、記事にしたとき名誉毀損で訴えられる可能性の有無を取材段階で考えるものだ。だから、後々、問題視されかねない行動は慎み、危うい取材はしないはずなのだ。だからこそ、モラル無用の媒体はその不逞を非難されるべきでもあるのだけれど。
≪略≫
海老蔵氏のブログには、麻央夫人の回復を願うコメントと海老蔵氏を支援するコメントに並び、マスコミを非難するコメントもずらりと並んでいる。マスコミの取材攻勢は相当に嫌われているようだ。でも、海老蔵氏が、自分を擁護するコメントだけを受け入れていたら、成田屋はいずれ廃る。
成田屋は長らく人間国宝を輩出していないが、いつの日か、海老蔵氏の芸が人間国宝に認定される日が来ないとも限らない。一皮剥けた海老蔵氏がさらなる精進を重ねたら本当にわからない。
その可能性を秘めた海老蔵氏には、自粛を要請するのでなく、メディアとぎりぎりの折衝をしてほしいと私は思う。
取材陣が取り囲んだせいで家から出られず、勧玄くんは幼稚園を休んだという話もあるが、海老蔵氏とメディアが早い段階で話し合いの場を設けていればよかったようにも思う。海老蔵氏は、埋め合わせの会見なり別のシャッターチャンスを設けることを約束し、取材陣は子どもの送り迎え他の写真は撮らないとの取り決めを早くに申し合わせていれば、もしかしたら今回の自粛要請には至らなかったかもしれない。
にらみが成田屋の“お家芸”であるように、執拗なのがメディアの“お家芸”でもある。だが、海老蔵氏が何があっても守り抜くと決めたプライバシーを侵害する権利は、いっかなマスコミでもあるはずがないのだ。取材現場を歩く記者たちの自制と理性と良心とが、メディアの成熟度を映し出すのである。
こたびは、現場の記者さんらに自制と理性と良心があったか、だ。
メディア各誌がそれぞれ違う角度から切り込めば過熱する取材攻勢もメディアスクラムもなくなるのだが、いまのところ、それは理想論のようだ。
ここで登場したJ-CAST氏の記事であるが、これではないだろうか
J-CASTニュース 2016/6/17
「海老蔵、4度目の「取材自粛要請」「執拗雑誌」不買運動に発展か」 (サインなし 著者不明)
引用・抜粋させてもらう。
≪略≫
だが、そんな必死の訴えも一部マスコミには届かなかった。会見直後のブログでも自粛を念押ししたにもかかわらず、翌10日には麻央さんの実家周辺等で取材や盗撮行為があったというのだ
10日夜、海老蔵さんは「命に関わることなのです。御理解下さい」「マオ本人の負担になるような撮影はやめてください」と強く求めた。
14日のブログでは、京都で自身がロケを行っていることを報告しながら「そんな時こそ是非!マスコミ様よろしくお願いします。お待ち申し上げております」と取材を呼びかけてみせた。
そんな中で更新されたのが17日のブログだ。会見、会見直後、会見翌日――。そして、今回の4度目の自粛要請では、メディア名こそ出していないものの「雑誌の方々」と媒体ジャンルを絞っていた。
これを受け、ネット上では
≪略≫
非難が殺到した。
≪略≫
「不買運動」に発展しつつある。
これらを時間軸に合わせて繋げてみると。
①麻央さんの乳癌発覚
②海老蔵氏が九日に会見を開き、麻央さんの病状を打ち明ける
③十日に麻央さんの実家周辺等で取材や盗撮行為があったという
④十日夜に同氏がブログにて、会見は実家周辺への取材を自粛してほしかったからだと説明
⑤十四日に同氏がブログにて、同氏はロケのため京都にいることを報告
「そんな時こそ是非!マスコミ様よろしくお願いします。お待ち申し上げております」
⑥十七日に同氏がブログにて五度目(J-CASTによれば四度目)に及ぶ自粛要請
「多くの記事を目にします。まおのことに関しましては雑誌の方々、静かに見守ってください。よろしくお願いします。何度も何度も申し訳ございません」
⑦十七日、J-CASTニュース「海老蔵、4度目の「取材自粛要請」「執拗雑誌」不買運動に発展か」
⑧二十五日、ダイヤモンド・オンライン「海老蔵の取材自粛要請に週刊誌が応じない理由」
さて、キーとなるのは⑤の十四日のブログだろう。
で、海老蔵氏の十四日のブログを読んでみた。
引用・抜粋させてもらう。
「実は数日後に五右衛門の撮影で」
天気の良いに日!
南禅寺の三門で五右衛門さんのロケがあるんです。
あれやるんでよ!あれ笑
わかりますか?あれっす笑
今日は気分上げるのもあり一目見たくて来てみました
やるぞぃ!うれしい!
南禅寺で絶景かなぁ~ロケだけど
海老蔵五右衛門見たいかたは少し遠いかもですが見れるはず笑
まぁたいして見たくないかな笑
そんな時こそ是非!
マスコミ様よろしくお願いします
お待ち申し上げております。
m(..)mぺこり
どう読んでも取材を受けるという提案である。取材自粛要請に見えない。実際に同日のブログでは。
引用・抜粋させてもらう。
「なんと、わざわざ文春さん」
ご挨拶に来てくださいました。恐縮です。
そして、南禅寺山門の場面も来るということをわざわざ伝えに私の楽屋まで…
申し訳ありません。恐縮です。
たしかにお弟子さんの所にも行った事も事実だそうですが、
なんか対応の仕方が流石に週刊文春さんだなと逆に学びました。
今後ともよろしくお願いします。
ニューヨーク公演もお世話になっていたので良かったです
週刊文春は楽屋に挨拶にいき、南禅寺山門の場面も来ると伝えた。
さらに「たしかにお弟子さんの所にも行った事も事実」と伝えた。
つまり、週刊誌側も理解していたわけである。(少なくとも週刊文春は)
で、十七日に「雑誌の方々、静かに見守ってください。よろしくお願いします。何度も何度も申し訳ございません」というブログ。
同日にJ-CASTによる(降旗学氏によると海老蔵寄りの見解の)ニュース記事。
そして、二十五日、ダイヤモンド・オンライン「海老蔵の取材自粛要請に週刊誌が応じない理由」
降旗学氏の記述をピックアップしながら指摘していこう。
「書く・書かせないという関係性はないからだ。そんな理不尽があるとすれば、それは言論を封殺する軍事政権国家か彼の大国か北のあの国くらいのものだ。」
もしダイヤモンド・オンライン側が降旗学氏に意図的に十四日のブログに触れないように、その内容を書かせなかったのであれば「言論封殺」であり、降旗学氏はダイヤモンド・オンラインを非難すべきだ。
「海老蔵氏が何があっても守り抜くと決めたプライバシーを侵害する権利は、いっかなマスコミでもあるはずがないのだ」
海老蔵氏が南禅寺でマスコミ待ってます、逆に言えば家を守るという行為であり、家への取材などはプライバシーの侵害であり、いかなマスコミであれどその権利はない、ということになる。
「海老蔵氏とメディアが早い段階で話し合いの場を設けていればよかったようにも思う。」
「自粛を要請するのでなく、メディアとぎりぎりの折衝」
話し合いの場を設けていることがブログからもわかる。折衝というかマスコミ様お待ち申し上げております、と自ら招いている。
「取材自粛を要請した海老蔵氏本人に“取材して”聞いたとか。」
「問題視されかねない行動は慎み、危うい取材はしないはずなのだ。」
週刊文春が楽屋に尋ねるなどしていることからその可能性は高い。批判されない取材方法はあった。
「そこで“はい”と引き下がったら、雑誌メディアは存在意義を失う。と同時に、海老蔵氏はその自粛要請がご自身とメディアとの決別を意味していることを理解しているだろうか?」
だれもメディアと決別を意味するような自粛はしていない。雑誌メディアにしても週刊文春の対応からも分かるように存在意義は少しも失われていない。
さて、これだけ揃っていて、なお「海老蔵の取材自粛要請に週刊誌が応じない理由」はあるのか。
どう考えても否、だろう。残念ながら降旗学氏の主張はいくつかの事実が抜け落ちて作られたものであることははっきりしている。
「海老蔵氏のブログには、麻央夫人の回復を願うコメントと海老蔵氏を支援するコメントに並び、マスコミを非難するコメントもずらりと並んでいる。マスコミの取材攻勢は相当に嫌われているようだ。でも、海老蔵氏が、自分を擁護するコメントだけを受け入れていたら、成田屋はいずれ廃る。」
ブログを読んでいれば、マスコミ(特に十七日に上った雑誌の方々)が嫌われ、海老蔵氏を擁護するコメントが並ぶのは当然であるように思える。
「こたびは、現場の記者さんらに自制と理性と良心があったか、だ。」
自制・理性・良心に欠けた、十七日にわざわざ雑誌の方々とまで明言された相手は何者なのか。
「やってはいけないことをやった媒体があれば、同業者として強く抗議することもやぶさかではない。」
「モラル無用の媒体はその不逞を非難されるべきでもある」
「書く・書かれるという双方の立場はあっても、書く・書かせないという関係性はない」
「取材される側を含め、この理屈がわからない人は芸能界やマスコミで働けない」
さて、マスコミで働くに値しない非難されるべきモラル無用の媒体はどこなのか。書かせないという関係性はないのだ。降旗学氏には存分に不逞な輩を非難し強く抗議してほしい。
「取材現場を歩く記者たちの自制と理性と良心とが、メディアの成熟度を映し出す」
取材現場を歩く記者たちの良心を踏みにじった者が誰か取材し突き止めてほしい。でなければ、降旗学氏の言うところのメディアの成熟度は「はるかに未熟」ということになってしまうのだから。
日本国の報道を守るために、各メディアの方々、特に取材現場を歩く記者の皆さまは、この不逞不埒な記者についてどうか厳重な対処をお願いしたい。そして、より一層の「報道の成熟」を目指していただきたいと切に願い、この文章を記述することにした。
どうか宜しくお願い致します。
ダイヤモンド・オンラインならびに降旗学氏には、彼らが記載した「メディアの成熟度の向上」と「取材現場を歩く記者たちの良心を守る」ため尽力していただきたいと切に願う。
もちろん、他メディアにも同じことを望みたい。
日本国の報道を守るために。
最後に、私の個人情報流出などの危険を承知でダイヤモンド社に問い合わせを送ったことを明記する。
以下の文章である。
ダイヤモンド・オンライン 6月25日(土)8時0分配信
「海老蔵の取材自粛要請に週刊誌が応じない理由」を拝読させていただきました。
十四日の海老蔵氏のブログの内容が意図的に抜かれているように思います。
降旗学氏の独断の記事であれば貴社の確認が甘かったといわざるを得ません。
どうか今一度、該当記事のご確認および各種対応の協議をお願いしたく存じ上げます。
詳しくは1000文字では足りないため、ここに記載することができませんでした。
精査および適切な対応を切に願うものであります。




