学園祭準備期間シリーズ~学園祭テーマ発表~
4月20日午後1時36分。ヨーロッパ等の音楽ホールで見られるような、舞台を囲むように椅子が備え付けられた第一ホール。そこでは春夏秋冬学園生徒会運営のもと6月下旬に開かれる学園祭に向けての学園祭準備期間の説明が行われていた。
「以上で学園祭準備についての説明を終わります。最後に生徒会会長藤峰麗雫さんから、今年の学園祭テーマの発表をお願いします。」
「はい」
大きな栗色の瞳と整った顔立ちの少女は名前を呼ばれ席を立つと、腰まで伸びた長い黒髪を揺らして階段を上がり壇上へと向かう。その一連の動作は凛としていて、まさに人の上に立つ者としての自覚が感じられるものだった。
「全校児童、生徒の皆さん。私がここに立って皆さんに対して発言するのは入学式以来ですね。」
少女のすらっとした細見の体からは聞きやすい透き通るような声が発せられる。それはマイクを通して全校児童、生徒合わせて4800人の耳に届き心を安らがせた。
「本学園は、小等部、中等部、高等部合わせた一貫校であり、とても人数の多い学園です。そのため学園祭準備の際には大小様々なトラブルが起こり、予定通りに進まないということが起きてきます。では、どうしたら予定通りに事を進ませ、かつ学園祭をより良いものにできるか。それは全校児童、生徒が協力できるかどうかにかかっています。私たち春夏秋冬生は他校に類を見ない四季学科制度によって特殊な力を使うことができます。その特殊な力は個々で違い十人十色。一人一人が各々の特殊な力を生かしつつ協力しあって学園祭成功を目指して欲しい。そういった意味を込めて」
合図を送るように少女は後ろに設置された巨大スクリーンに目をやる。すると春の桜に夏の海、秋の紅葉冬の雪をモチーフにした校章が映し出され、その中心に学園祭テーマらしきものが現れた。
< 邂逅折衷 >
「この学園祭のテーマに決まりました。邂逅は私たちの出会いは必然であったこと。折衷では互いの長所を一つに合わせようという意味を表しています。みなさん、この学園祭テーマを胸に刻み協力して学園祭成功を目指しましょう」
品のある笑みを全校児童、生徒に向け、軽くお辞儀をし壇上から降りていく。自然とその美しさに全校児童、生徒は目を離すことはできず気付いたら追ってしまっていた。
「ありがとうございました。では、これで学園祭準備についての説明会を終わりたいと思います。会の終了後児童、生徒は自分の教室に戻り担任の先生の話を聞いてそれぞれ活動を始めてください」
会の閉会を告げる感情のない声色のアナウンス。
こうして、4月28日午後1時47分。ぽかぽか陽気が眠気を促すこの頃。学園祭準備期間が開始し、とある事件の幕があけた。