表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/85

あの噂よりも大きな事?

 「そう言えば、真はいつから、こんな頭良くなったんだ?」


 結希がついつい心に思った事を口に出す。


 「は?本当にお前は」


 真は学校では早川さん、家では結希ちゃんと呼んでいるが、素が出ると結希の事をお前と呼んでいた。


 「まあ、これは小さかったから、本当に記憶がないだけかもな」


 真がさらに言葉を続けた。


 「は?」


 結希は真の言葉の意味が分かっていない。


 「まあ、これは事実から目をそむけているんじゃなく、本当に記憶が無いだけかもってことだよ」


 「事実から目をそむける」結希がいつも引っかかっている真の言葉。結希は一瞬むっとした表情をした後で、由依の方を向いた。


 「由依。こいつに、事実に目を向けろって、言われた事ある?」


 突然意味不明なまま話を振られた由依が、驚いた顔をして結希を見つめると、結希がこくりとうなずいてみせた。


 「えっと。無いけど。

 と言うより、そんな会話する機会、多くないし」


 確かに由依が真と会話する機会はそう多くない。あの言葉は単に口癖なのか、それともやはり自分に対する何かなのか?

 結希が由依に向けていた視線を真に戻して、見つめながら考えている。


 事実とは目の前の事なのか?

 それとも、もっと別なものなのか?


 その時、結希に一つの事に思い当たった。

 あの嫌な噂の話である。

 結希が両手の拳に力を込め、少し震え気味になりながら、真に問うた。


 「もしかして、事実って、あんた、私の事を疑っているの?」


 真は結希の態度に、その主旨を感じ取った。


 「違うよ。結希ちゃんが、今思った事なんかじゃない。もっと、大きな話だ」

 「もっと大きな話?」


 結希が少し冷静さを取り戻して、言う。

 しかし、あの噂の話以上に大きな事実なんてものは、その存在自身が結希には心当たりがない。

 少し首をかしげながら、結希が記憶をまさぐっている。


 「まあ、いいじゃないか。もうよそう。僕は結希ちゃんに感謝しているんだから」


 「事実」に関する話を打ち切りたかった真がそう言った。


 しかし、この「感謝」と言う言葉にも、結希は心当たりがない。


 「何で?」

 「だから、僕が元気になれたのは結希ちゃんのお陰だってことだよ」

 「意味分からんし」


 そんな二人だけのやり取りに、一人取り残された気分で、所在無げにしている由依に気付いた結希が、しまったと言う表情をして、元気いっぱい声を上げた。


 「さ、話を変えて、真の部屋探検!」


 結希はそう言って、右手を上げながら、左手で由依を引っ張って、真の部屋の奥に進んで行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ