第二話 ③
やっと着いたよ。
いつも家族で車で行く時は20分ぐらいなのに…倍はかかったよ。
理由は運転手なんだよなあ…
別に迷うとかノロノロ運転とかじゃないよ。
道中2回ほど停められたのよ。
お巡りさんにね。
そりゃそうでしょ。
ポルシェの運転手が制服姿の女子高生だったら、そりゃ停めるよ。
実際には29歳の国家公務員なんだけど…
「いやぁ、警察も情報共有ぐらいしとけよって、なあ?」
停められた主要因がなんか言ってるよ。
「管轄が違うとか言ってなかった?よくわかんないけど…それよりあんなあっさり身分明かしていいの?一応秘密組織なんでしょ?メイお姉ちゃんの組織って。」
そう。
政府直轄の秘密機関所属のエージェントが、警察官相手とはいえあっさりその身分証を見せていたのだ。
「ああ、あれも本当の所属とかじゃなくて、なんかそれっぽい身分が書いてあるだけのだから。ちなみにあれ見せるだけで支払いを日本政府にまわせる優れものだぞ」
「うーん…メイお姉ちゃん、それあんまり言わない方がいいよ。」
ドヤるお姉ちゃんに、一応釘を刺しておいた。
そんなわけで、さっそく服を探しに行こう。
駐車場から歩きながら、メイお姉ちゃんに聞いてみる。
「ねえ、どんな服がいいかな?初名古屋だからって張り切りすぎると、おのぼりさんって馬鹿にされちゃうとかあるのかな?」
「さあ?私に服のこと聞かれてもな…なんと言っても平成の女だからな」
切り替えの早い女だと思ってたけど…
さすが平成を引きずる女。
家でのこともしっかり引きずってるよ。
「さっきはごめんって。機嫌なおしてよ」
と謝ってみるが――
「いや、別に気にしてないけど、本当に今どきの中学生のオシャレとやらがわかんないのよ。だって私29だぞ。私がいいと思っても、あさひがそう思わなきゃダメだろ?」
うん。
確かにその通りなんだけど…困ったなあ。
「何、そんなに気負うことないさ。私なんて名古屋より大都会な東京でも、服に無頓着で生きてられるんだから。」
と、お姉ちゃんが言ってくれた。
(そっか、ならそんなに張り切らなくてもいいよね。
うんうん。
メイお姉ちゃんのセンスでも東京で生きていけるんだから)
なんて考えてたら――
頭を軽く叩かれた。
「お前、失礼なこと考えてただろ!?」
さすが霧隠家次期当主!
読心術でも使えるのか?
「はあ…あさひさぁ、お前全部顔に出てんだよ。とりあえず自分の気に入ったの試着してみな」
呆れた顔をしながらも、優しい目で言ってくれる。
基本はいいおばさんなんだよなぁ…
今日はお姉ちゃんだけど。
それから私は、H&MでNine Inch Nailsのヴィンテージ加工っていうのがされたTシャツとデニムのスカート、ABCマートでナイキのパーカーとスニーカーを買った。
ってか、メイお姉ちゃんに買ってもらった。
お礼を言うと――
「親方日の丸だからな!血税!血税!ガッハッハ」
と、この物価高?の時代に完全アウトなことを大声で言い出しちゃったよ…。
はい、正直、周囲の人らの目が怖かったです…。
家に午後4時過ぎに帰ると、お父さんも帰ってきてた。
ちなみにお父さんは、朝5時に仕事に行くから、帰りも普通の会社員より早いんだ。
そんなお父さんは、メイお姉ちゃんのガングロギャル姿を見て、気持ち悪いほどベタ褒めしてた。
このお父さん、一人っ子だったのに、あっさり婿養子を受け入れたんだよね。
しかも、お父さんの方のおじいちゃん達もノリノリだったんだ。
理由は――
「『霧隠』なんてイカした名字名乗れるなんてアツいじゃん」
……うん。
自覚してるよ。
両親ともちょっと普通じゃないって。
そんなわけで、お父さんとお母さんに、今日買った服を着て見せてみたら……
お父さんはやっぱりベタ褒めしてくれたし、
お母さんも似合ってるって言ってくれた。
これなら名古屋に行っても石投げられないよね。
そうだ。
あとで澄夏にも、このコーデの写真送ってみよっと。




