第一話 Y-1
前回の澄夏視点と同じく神崎宵視点です。
俺の名は…今は神崎宵と名乗っている。
もちろん偽りの名だがな。
俺はある組織で育てられた。
そうその組織の駒として使われるためにそのためだけの教育を受けてきたんだ。
そんな俺に組織から初の指令がくだったんだ。
「忍者を探せ」 正直なにを言ってるんだと思った。
俺だって普通にその辺の知識はある。
忍者とは日本に昔存在していた間者…要するにスパイのことだろ?
あるいはフィクションに出てくる忍術とかいうのを使う連中のことか?
はっきり言って組織はなにを考えているんだ?
しかもそのために潜入するのは日本のありふれた地方の中学校とのこと。
訳がわからん!
まあ、任務は任務…いかにおかしなことでもやり遂げてみせるさ。
そんな決意を胸に潜入することとなった初日、すでに俺の心は掻き乱されていた…
職員室で担任となる教師の説明を受けているのだが………なんか隣にメッチャかわいい女の子いるんですけど!!
どうやら彼女は俺と同じタイミングで転入してきた「木全澄夏」というらしい。
背が高いのに顔は小顔だし全体的にスリムなのに胸はデカいし、あと流石にスカート短すぎやしないか…てか足ながっ!…落ち着け俺!
細井とかいう教師との顔合わせが終わり2人で職員室を出て廊下を歩く。
ヤバい…なんか緊張して隣を歩く彼女、澄夏の顔を直視できん…
黙って俯いて歩く俺に突然澄夏が、
「あたしちょっとお花摘み〜」
と言ってどこかへ行ってしまった。
花摘み? さすがかわいいだけあって野に咲く花を摘んで愛でるのが趣味とか?
そんなファンシーなことするとか…最高かよ!
などと考えていたら教室にあっさりたどり着いた。
黒板に貼ってあった座席表を見ると俺の席の斜め前が澄夏の席ではないか。
もうこれ運命だろ!?
席について考える。
とりあえず澄夏が来たらどんなふうに話そうかと。
頭の中が彼女の笑顔がぐるぐるとまわって思わず俺は机に突っ伏したままになってしまっていた。
どうやら隣の席の女子が来たらしい。
なにやら友人と俺のことを話題にしてるようだが今はそれどころではないのだ。
そうだ! 同じ転入生同士だしそれをネタに話せばいいじゃないか!
と名案が浮かんだと思っていたら斜め前から澄夏の天使のような声が聞こえてきた…
「ねえ、霧隠さんってやっぱり忍者なの!?」
忍者だって!?
そうだ、俺の任務は忍者を探し出すことだった。
すっかり忘れてたぜ。
思い出させてくれた澄夏はやはり天使に違いないな!
「忍者…?」
俺は体を起こして隣の女子の顔を見る。
……またまたメッチャかわいい!!
うん。 澄夏とは違う年相応のかわいさというかあどけなさの残る感じがメッチャいい!
などと考えながら澄夏と隣の席の霧隠という女子の会話を聴いているとどうやら霧隠は忍者ではないらしい。
「…なんだ、忍者じゃないのか…なら俺には無関係だな」
ってそうだよな。
忍者がこんな普通の中学にいる訳ないよな。
そしたら、
「あの、私は霧隠あさひ。君も転入生でしょ?一年間おんなじクラスだし仲良くしてね」
隣の霧隠が自己紹介してくれた。
そうか、あさひって言うんだな。
うん! 澄夏とあさひどっちもかわいくてサイコー!!
しかしここはクールに決めねばと俺は浮かれる心とは裏腹にクールを装い、
「神崎宵だ…」
とこの任務のための名を教えてやった。
そしたらあさひがこの名が偽名であること一発で看破するじゃないか!?
俺は焦りを悟られまいと、
「なかなか勘が鋭いな…しかしお前たちに名乗れる名はこれだけだ」
と呟いた。
そしたら今度は澄夏が俺が組織の人間だと見破ってくる。
なんだ? 美少女は勘が鋭いのか?
「…そうだな。だがお前たちごときが知る組織ではないことだけは教えておいてやる」
俺は余裕があると言わんばかりに笑みを浮かべてこう返してやった。
心臓バクバクだったぜ。
しかしうまく誤魔化せたな。
しかしこれが思わぬ弊害を生んでしまった…
始業式に向かう廊下で永山とかいう男子生徒とその取り巻き達に絡まれてしまった。
「おい、転入生!随分あさひと親し気だったなぁ」
と凄んでいるつもりだろう永山の問いかけに俺は、
「そう見えたか?フッ」
とクールに返してやったぜ。
「テメー!放課後、体育館裏決定な!覚悟しろよ」
と吠える永山。
まあ、少し身の程を教えてやるとするか…
ホームルームの後永山とその取り巻き2人に連れられて体育館裏にやってくると永山が開口一番、
「お前、ちょっとあさひに話しかけられて調子乗ってるんじゃね?」
ああ、なるほど。
つまり永山はあさひが気になっているのだな。
…安心しろ永山、確かにあさひもかわいいが今のところ俺の中では澄夏が若干リードしているぞ。
さて、そろそろこいつらにわからせないと…って何この取り巻きの奴ら、結構力強くね?
左右からガッチリ押さえつけてきてるけど振り解けないんだけど…こりゃまいったな。
俺は思わず苦笑してしまう。
「何ニヤついてんだよ!」
それが永山は気に入らなかったらしい腕を振り上げて俺を殴ろうとしてきた。
その時、体育館の陰から颯爽と澄夏が現れて、
「やめなよ!」
と永山に言ってくれた。
さすが澄夏! さすが天使!
そうなふうに思ってたら目の前にまさかの光景が…!
なんと澄夏が左脚を大きくあげて永山の顔にハイキックを決めて…いや寸止めしてるのか。
それに永山は驚いて狼狽えてるのがわかった。
しかし重要なのはそこじゃない!
だってさ、澄夏がそんな大胆に足を振り上げてるからしょうがないじゃん!
見えちゃってるんだよ!
本来男である俺が見ちゃダメなスカートの中の秘密が。
俺の鼻から何か熱い液体が出てきたのがわかった。
どうやら俺をガッチリホールドしてる取り巻き2人も見てしまってるようだ。
ふざけんな! お前らなんかが見ていいもんじゃないぞ!
こいつらの記憶消し去ってやりたい!
などと考えているとなんと永山が澄夏を突き飛ばしていた。
俺は思わず永山に飛びかかろうとしたんだけどやっぱり取り巻き達を振り解けない。
こいつらよりにもよって力を入れたまま固まりやがって!
「アギィっ」
何やら永山の声と思われる悲鳴が聞こえた。
そこにはいつ現れたのかあさひが永山の手首を掴みあっさりと制圧してるではないか。
(ああ、あそこ圧迫されると痛くてたまんないんだよなぁ)
さすがに永山に同情を覚えてしまう。
(それよりもこいつらだな…)
俺は心の中でそう呟き静かに小さな声で発動のためのスペルを詠唱する。
指先がうっすらと紫色に光る。
成功だな。
俺は左右の固まっている取り巻き達にその指で触れていく。
取り巻き二人は意識を失い地面に倒れた。
まあ、こいつらは人生で初めての経験だっただろうからそれによるショックで気絶したとでも言っておこう。
ちなみに紫だった…




