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【完結】娘はクラスメイト 『〜パパになっちゃったら、好きって言えないじゃん!!〜 』  作者: NEXT


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第45章:筋肉痛のシンクロと、仕組まれたロミオ役

 体育祭の翌朝。

 目覚ましのアラームを止めようとした瞬間、俺の身体に激痛が走った。


「……ぐっ、うおぉ……」


 全身の筋肉が悲鳴を上げている。特に、昨日瑠奈を支え続けた右腕と腰がバキバキだ。

 俺はゾンビのような動きでベッドから這い出し、リビングへと向かった。


 階段を降りる。

 その時、前方から同じくゾンビのような動きで歩いてくる人物がいた。


「……いっ、たぁ……」

「……よう、瑠奈。お前もか」


 金髪ボサボサの瑠奈が、腰を押さえて顔をしかめている。

 俺たちは顔を見合わせ、同時にため息をついた。


「……右足のふくらはぎ、ヤバい」

「俺は右腕と腰が死んでる」

「……湿布、ある?」

「棚にある。……貼ってやるよ」


 リビングのソファで、俺たちは互いに湿布を貼り合った。

 そこへ、優雅にコーヒーを飲みに来た詩織さんが通りかかった。


「……あら。朝から仲良く介護ごっこですか?」

「違うよお姉ちゃん……これ、名誉の負傷だし……」

「ふふ。息がぴったりですね。……歩き方までシンクロしてますよ」


 詩織さんがクスクスと笑う。

 確かに、俺と瑠奈は「右足をかばう」という動きまで完全に一致していた。

 長期間の二人三脚特訓と、本番の激走。

 俺たちの身体には、奇妙な一体感が刻み込まれてしまっていた。


 ***


 学校。ホームルーム。

 気怠げな空気が漂う教室で、担任が黒板に新たな議題を書いた。


 『文化祭 クラス出し物決め』


 3年生にとって最後の行事。

 だが、受験勉強もある。手間のかからない展示や、模擬店でサクッと終わらせたい……というのが大半の生徒の本音だった。


「えー、誰か案はあるかー? なければ喫茶店で……」


 担任が適当にまとめようとした、その時だ。


「異議ありッ!!」


 バンッ! と机を叩く音が響いた。

 またしても、あの男だ。

 小野田 達也が、ギラついた目で立ち上がった。


「先生! みんな! 最後の文化祭だぞ!? 焼きそば焼いて終わりでいいのか!? 俺たちの青春はそんな安いソース味でいいのかぁッ!?」


 無駄に熱い演説。

 クラスメイトたちがざわつく。

 隣の美咲が、すかさず援護射撃をする。


「そーそー! どうせなら思い出に残るやつやりたいよね〜! 派手なやつ!」

「そこでだ! 俺と美咲で企画書を作ってきた!」


 達也が黒板の前に進み出て、チョークでデカデカと文字を書いた。


 『演劇』


「……演劇ぃ? 面倒くさくね?」

「セリフ覚えんのダルいって」


 男子たちからブーイングが飛ぶ。

 だが、達也はニヤリと笑い、俺の方をビシッと指差した。


「甘いな! 俺たちのクラスには、昨日グラウンドを沸かせた『王子と姫』がいるじゃねーか!」

「……は?」


 俺が間の抜けた声を出すと、達也は畳み掛けた。


「見たろ? あの二人三脚のゴール! 転びそうになった姫を抱き留める王子! あのドラマチックな展開! ……あれを舞台で再現せずして、何が3年B組かッ!!」

「キャーッ! 見た見た!」

「確かに絵になってた!」

「主演が決まってるなら、俺ら裏方で楽できるんじゃね?」


 クラスの空気が一変する。

 「面倒くさい」から「面白そう(かつ自分たちは楽ができそう)」へ。

 見事な扇動だ。


「お、おい達也! 俺はやらんぞ! 受験もあるし……」

「安心しろ聖次。脚本・演出は俺と美咲がやる。お前たちは『役作り』に専念してくれればいい」

「役作りってなんだよ!」


 俺の抗議など聞こえないフリをして、達也は黒板に演目を書きなぐった。


 『ロミオとジュリエット(改)』


「禁断の恋! 敵対する家同士の争い! そして燃え上がる愛! ……これほど今の『二人』にふさわしい演目があるかぁ!?」


(クッ……敵対する家じゃないけど、義理の親子っていう意味じゃ『禁断』の壁はある……! こいつ、どこまで勘付いてやがるんだ!?)


 俺が冷や汗をかいていると、隣の瑠奈がガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。

 顔は真っ赤だが、その瞳は強い光を宿している。


「……いいわよ。やってやるわよ」

「瑠奈!?」

「だって、聖次。……アンタ、アタシ以外の女が『ジュリエット』やんの、許せるわけ?」


 瑠奈が挑発的に俺を見る。

 その言葉の裏には、「私のロミオはアンタだけだ」という強烈な独占欲が見え隠れしていた。


「……それに。アタシがヒロインやらなきゃ、誰がアンタの相手できんのよ」


 彼女はフンと鼻を鳴らし、クラス全員に向かって宣言した。


「主役はアタシたちがやる! 文句ないでしょ!」

「うおおおおッ! 決まりだー!」

「よっ! ご両人!」


 拍手喝采。

 達也と美咲がハイタッチし、俺に向かって「ニチャア」と笑いかけた。


「……決まりだな、聖次ぃ? あ、言っとくけどラストシーンの演出にはこだわらせてもらうからな? ……覚悟しとけよ?」


 俺は天を仰いだ。

 体育祭の次は文化祭。

 しかも今度は「演技」という名の元に、公衆の面前で「愛の言葉」を囁き合わなければならないのだ。

 ……これ、家に帰って詩織さんにバレたら、今度こそ殺されるんじゃないか?


(続く)

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