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『娘はクラスメイト 〜パパになっちゃったら、好きって言えないじゃん!!〜 』  作者: NEXT


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第39章:終業式の熱気と、台風の進路予想

 7月下旬。

 蝉の声がうるさくなり始めた頃、俺たちの高校は1学期の終業式を迎えた。

 蒸し風呂のような体育館での校長講話(長い)から解放され、教室に戻った生徒たちは、一斉に「夏モード」へと切り替わっていた。


「イヤッッホォォォウ! 夏休みだァァァッ!!」


 教室の真ん中で、小野田 達也が奇声を上げていた。

 彼はそのまま、ヌルリとした動きで俺の席に寄ってくる。


「おいおい聖次ぃ〜? なんだその冷めた顔はぁ? 夏だぞ? 開放感と欲望が交差する、恋の季節だぞぉ?」

「……暑苦しいな。冷房の設定温度下げてくれ」

「つれないねぇ! で、どうなんだい? 愛しの瑠奈ちゃんとの予定は?」


 達也がニヤニヤしながら、指折り数え始める。


「やっぱ定番は『夏祭り』だろぉ? 浴衣姿の彼女にドキッとして、人混みではぐれないように手を繋いで……ヒューッ!」

「あ、それなら海も捨てがたいよね〜!」


 美咲も乗っかってくる。彼女は既に夏休み全開のファッション(派手なネイル)を見せつけていた。


「海で水着デート! サンオイル塗ってあげたりしてさ〜! キャーッ! 聖次、鼻血出しちゃうんじゃない?」

「……お前らなぁ」


 俺は呆れてため息をつき、二人の距離感を指差した。


「人の心配する前に、自分たちを見たらどうだ? ……このクソ暑いのに、さっきから肩と肩、密着してるぞ」

「「え?」」

「夏祭りだ海だと騒ぐのはいいが、お前らの方がよっぽど『熱気』を放ってるって気づかないのか? 見てるこっちが暑気あたりしそうだ」


 俺のカウンターパンチに、二人は「あ」と顔を見合わせ、それからニヤリと笑った。


「ば〜れたかぁ〜。ま、俺たちはこの後、早速プール行くけどねぇ〜?」

「聖次も瑠奈誘って来れば〜? ……あ、二人きりの方がいいか! 邪魔しないでおくね〜!」


 結局、あいつらは俺たちのことを冷やかしたいだけ冷やかして、嵐のように去っていった。

 やれやれ。夏休み中も、あいつらの監視網からは逃げられそうにないな。


 隣を見ると、瑠奈が頬杖をついて窓の外を見ていた。


「……ねえ、聖次」

「ん?」

「……夏祭り。地元のやつ、あるじゃん」

「ああ、来週の花火大会か」

「……行くでしょ? みんなで」


 『みんなで』と言いつつ、彼女の視線は「分かってるよね?」と訴えている。

 オープンキャンパスでの約束は「合格したらご褒美デート」。

 だが、この夏祭りもまた、俺たち家族にとっては外せないイベントだ。


「もちろん。遥さんも楽しみにしてたしな」

「……ふん。ま、浴衣着てやるから、感謝しなさいよね」


 瑠奈は少し顔を赤らめ、カバンを持って立ち上がった。


 ***


 一方その頃。

 俺たちの知らない場所で、もう一つの「熱気」が渦巻いていた。


 某国立T大学のキャンパス。

 大学生は高校よりも一足早く夏休みに突入している。

 人気のないラウンジで、一人の男がブツブツと独り言を呟いていた。


「……シミュレーションは完璧だ」


 神崎 蓮。

 彼は手元の手帳に、緻密な「夏祭り攻略チャート」を書き込んでいた。


『① 偶然を装い、地元の夏祭り会場へ潜入』

『② 人混みで詩織さんが聖次ストーカーとはぐれる瞬間を捕捉』

『③ 颯爽と現れ、詩織さんを救出(「大丈夫ですか、お嬢さん」)』

『④ そのまま二人で花火鑑賞 → 告白』


 完璧だ。隙がない。

 彼は眼鏡をクイッと押し上げ、不敵な笑みを浮かべた。


「待っていてください、詩織さん。……あの雨宮という男に惑わされている貴女を、この僕が必ず救い出してみせる! 夏の夜空に咲く花火のように、僕の愛を証明してみせるぞォォッ!!」


 彼の背後には、見えない台風の渦が発生しているようだった。

 この「台風・神崎号」が、数日後の花火大会に直撃し、俺たち家族(特に俺)に多大なる被害をもたらすことを、俺はまだ知る由もなかった。


(続く)

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