表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『娘はクラスメイト 〜パパになっちゃったら、好きって言えないじゃん!!〜 』  作者: NEXT


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/41

第31章:入学式のツーショットと、深まる勘違い

 4月某日

 日本最高峰の学び舎、T大学の入学式。

 正門前に掲げられた『入学式』の看板の前には、記念撮影をする新入生と保護者たちで長蛇の列ができていた。


「……ううっ、詩織ぃ……! 大きくなってぇ……!」

「母さん、泣くのが早いです。まだ門の前ですよ」


 看板の前で、ベージュのスーツにトレンチコートを着こなした詩織さんが、ハンカチで目元を抑える遥さんをなだめている。

 今日の詩織さんは、先日俺と一緒に選んだ「勝負服」だ。

 そしてもちろん、**「裸眼」**である。

 知性と美貌が溢れ出ており、周囲の新入生男子たちが「おい見ろよ、すげぇ美人」「モデルか?」とざわついているのが分かる。


「聖次さん! カメラ! 詩織の晴れ姿、逃さないでね!」

「任せてください。連写モードでいきます」


 俺は一眼レフを構えた。

 遥さんは「私も入る〜!」と詩織さんの隣に並ぶ。

 若々しい遥さんと、大人びた詩織さん。親子というよりは、美人の姉妹にしか見えない。


「はい、撮りますよー。チーズ!」


 カシャッ。

 満開の桜の下、最高の笑顔の二人が撮れた。


「次は聖次さんの番よ! ほら、詩織の隣に立って!」

「え、俺もですか?」

「当たり前でしょ! 父親なんだから!」


 遥さんが俺からカメラを奪い取る。

 俺は苦笑しながら、詩織さんの隣に立った。

 すると、詩織さんが俺の袖をキュッと掴んだ。


「……聖次さん」

「ん?」

「……もっと、寄ってください」


 彼女は上目遣いで言うと、俺の腕にしっかりと自分の腕を絡ませ、頭を少し俺の肩に預けてきた。

 甘えるような、そして独占するような距離感。

 どう見ても「父と娘」ではなく、完全に**「仲睦まじいカップル」**のそれだった。


「あらあら〜! 熱いこと! ママ、妬けちゃうわ〜♪」


 遥さんがニマニマしながらカメラを構える。


「じゃあ撮るわよ〜! はい、ラブラブ〜♪」


 カシャッ。

 遥さんの掛け声と共に、俺たちのツーショットが切り取られた。


「……ありがとうございます。後でデータ、全部くださいね」

「もちろんよ! 大きく引き伸ばしてリビングに飾りましょう!」


 嬉しそうに画像をチェックする詩織さんと、それを冷やかす遥さん。

 俺たちは幸せな空気の中、講堂へと向かった。


 ――だが。

 俺たちは気づいていなかった。

 その光景を、少し離れたイチョウ並木の影から、血迷…血走った眼で見つめる男がいたことに。


「……やはり、見間違いではなかった……ッ!」


 無駄に整った顔立ちに、銀縁眼鏡。

 T大法学部に首席で合格した男、神崎 蓮だ。

 彼はギリリと奥歯を噛み締め、木を殴りつけた。


「卒業式で抱き合っていたかと思えば……神聖なる入学式にまでついて来るとは!」


 彼の中では、物語はこう構築されていた。

 『純真無垢な詩織さんは、あの軟派な男(聖次)に騙されている』

 『あいつは高校生の分際で、わざわざここまでついて来て、ツーショットを見せつけてマーキングしているに違いない』


 ちなみに、カメラを構えていた遥さんのことは、彼の視界には入っていなかった。

 彼にとって、詩織と聖次のイチャつきがあまりにも衝撃的すぎて、撮影者が**「通りすがりの親切な人」**か**「雇われカメラマン」**程度にしか認識されていなかったのだ(あるいは、若すぎて母親だと思わなかったのかもしれない)。


「おのれ……許さんぞ、雨宮……!」


 神崎は眼鏡をクイッと押し上げ、漆黒の炎を瞳に宿した。


「僕が必ず、詩織さんを救い出してみせる。……このT大キャンパスで、貴様の魔の手からなッ!!」


 彼の熱すぎる正義感(とトンネル視界)が、今後のキャンパスライフを波乱に巻き込むことになるのを、俺たちはまだ知らなかった。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ