第17章:文化祭二日目、策士策に溺れる
文化祭二日目。
熱も下がり、「私は大丈夫ですから、クラスの責任を果たしてきなさい」という詩織さんの命令(と遥さんの笑顔の圧力)により、俺は学校へ来ていた。
教室に入ると、達也と美咲がニヤニヤしながら待ち構えていた。
「よっ! 愛の逃避行からのお帰りだ〜!」
「ねえねえ雨宮〜、昨日あの後どうなったのぉ〜? 詩織先輩をお持ち帰りして、看病プレイ?」
朝からアクセル全開だ。
クラスメイトたちも興味津々でこちらを見ている。
俺がため息をつこうとすると、隣で瑠奈が不機嫌そうに机を蹴った。
「……うざ。アンタら、いい加減にしなよ」
「あら〜? 瑠奈ちゃん、お姉ちゃんに聖次取られて嫉妬〜?」
「ち、違うし!」
美咲がここぞとばかりに畳み掛ける。
達也が俺の肩を組み、耳元で囁いた。
「安心しろよ聖次。そんなお前らのために、俺たちからビッグなプレゼントを用意しといたからよ」
「……嫌な予感しかしないんだが」
「今日の後夜祭。メインイベントの**『未成年の主張・愛の告白大会』**……お前と瑠奈ちゃんでエントリーしといたぜ!」
俺と瑠奈は凍りついた。
全校生徒の前で、ステージ上で叫ぶあの地獄のイベントか。
「拒否権はねーぞ。もう生徒会に名簿提出済みだからな!」
「楽しみにしてるね〜、ダーリン❤」
達也と美咲は、勝利を確信した悪役の高笑いを残して去っていった。
「……どうすんのよ、聖次! あんなの公開処刑じゃん!」
「……落ち着け瑠奈」
俺は冷静に、去っていく二人の背中を見据えた。
やられっぱなしで終わると思うなよ。
「瑠奈。……復讐の時間だ。協力しろ」
「……へ?」
「あいつら、俺たちをハメたことを後悔させてやる」
俺はスマホを取り出し、ある人物に連絡を入れた。
昨日、詩織さんの一件で俺に大きな「借り」がある男――神崎副会長に。
***
夕方。後夜祭。
グラウンドに特設ステージが組まれ、スポットライトが照らされる。
司会者がマイクを握った。
「サァ〜! 今年もやってまいりました、愛の告白大会! エントリーされた勇者たちは、ステージ上で熱い想いを叫んでもらいまーす!」
観客席の最前列で、達也と美咲がカメラを構えてニヤニヤしている。
俺と瑠奈がステージ袖に連行されるのを待っているのだろう。
だが、俺と瑠奈は、達也たちのすぐ後ろに立っていた。
焼きそばを食べながら。
「……あれ? 雨宮?」
「おう。いい場所とったな、達也」
「は? お前、ステージは……?」
その時。
司会者が高らかにエントリーナンバー1番を読み上げた。
「最初のエントリーは! 2年B組からの推薦! いつも一緒のベストコンビ! 小野田 達也くんと、相原 美咲さんでーす!!」
「「はあぁぁぁぁッ!!?」」
達也と美咲の絶叫がハモった。
スポットライトが、観客席の二人に直撃する。
「え、ちょ、なんで俺!? 名簿には雨宮って……」
「そうそう! アタシたち書いてないし!」
混乱する二人の前に、銀縁眼鏡の男――神崎副会長が涼しい顔で現れた。
手にはマイクを持っている。
「おや、往生際が悪いですね。……生徒会の厳正なる審査の結果、エントリーリストの『修正』が受理されました。……昨日の騒ぎのお詫びと、雨宮くんへの感謝を込めて」
神崎が俺を見て、ニヤリと眼鏡を光らせた。
そう、俺は神崎に頼み込んだのだ。「達也たちが本当は両想いなのに素直になれないから、背中を押してやってほしい」という大義名分で、リストを書き換えてもらったのだ。
「さあ上がった上がった!」
「ヒューヒュー! お似合いだぞー!」
クラスメイトたち(事情を知る俺が煽動した)が二人をステージへ押し上げる。
壇上に上げられた達也と美咲は、顔を真っ赤にしてお互いを見合わせた。
「……く、くそっ! ……美咲ぃ!! お前、いつも俺の弁当の唐揚げ勝手に食うなよなー!!」
「はぁ!? あんたこそ、アタシのノート勝手に写してんじゃないわよバカ達也ー!!」
告白というよりは痴話喧嘩だった。
だが、会場は「爆発しろ!」の大合唱に包まれた。
顔を真っ赤にして降りてきた二人に、俺と瑠奈は冷たいコーラを差し出した。
「お疲れ様。……いいカップルだったぞ?」
「……うるせぇ!! 覚えてろよ雨宮ぁ!!」
達也が吠え、美咲が顔を覆ってしゃがみ込む。
瑠奈が「ざーこ❤」と煽りを入れる。
こうして、俺たち家族を脅かした二人への復讐は、神崎副会長の権力乱用と、俺と瑠奈の連携によって完遂されたのだった。
……まあ、あいつらも満更でもなさそうだから、結果オーライだろう。
(続く)
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