絞首台の主5
偉大なる神々の主、万物の父オーディンは自身の玉座に座っていました。
彼の右眼は獲物を狙う鷹の様な鋭さで、あらゆる存在の動きを追います。
彼は深淵を見、虚空を旅した者でした。
場内の長椅子には戦死者の魂がいて、互いに世のことを語り合っています。
ワタリガラスが一羽、黒い羽で風を切り城の外から飛んで来ました。
そしてオーディンの肩の位置にとまると、物々しい荒々しさで鳴きます。
カラスの声を聞くものオーディンは戦死者に向き言葉を発しました。
「勇敢な戦士たちよ、今ここに我が心を明らかにしよう!我が決意を語って聞かせよう!私は全知を得た。そして全知の上にも更に全知を欲する!」
オーディンの声は朗々と、灰色のヴァルハラ宮殿に響き渡りました。
「我らに平和はなく、教会もなく、したがって救いもなく、」
「我らは自身の遺体にすがって泣くものだから。したがって我ら自身が神オーディンへの、すなわち私自身への生贄なのだ!」
オーディンの言葉に死者の軍団は、倒れた英雄たちの魂達は拍手を送りました。
オーディンは再び帽子をかぶり、杖を持ちました。
彼ははるか東方の、暑い国に賢人がいるとの話を聞きつけていたのです。
つばの広い帽子を目深にかぶり、オーディンは場内のものにしばしの別れを告げました。
オーディンは歩みます。
ウラルの高い山を越え、シベリアの凍えた黒い土を踏み越えます。
ステップを越え、砂漠の嵐を突っ切って進みました。
次第に空気が熱くなります。
探求する者オーディンはとうとう目的にたどり着きました。




