神々の罪10
高き女神を世界の辺境、ニヴルヘイムに投げ捨てたすぐ後。
万物の父オーディンは小屋に一人閉じこもりました。
彼は自身の頭の中に問いかけます。
「アルティンパサよ、湿地の女神アルティンパサよ答えてくれ。女神達の復讐を防ぐにはどうしたら良いだろう?」
神の中の“人間”は答えませんでした。
彼は長い髭が伸びた顔を振り、呟きます。
「多弁は銀。沈黙は金。いかにも黄金の女神らしいな。」
外は夜が明け始め、紫色の空が矢ぶすまの様な激しさで一日の始まりを告げていました。
神は小屋の外に出て、時間が過去から未来へ移り変わる様を見つめました。
やがて神々の祖オーディンは、森の入り口から二人の女神が入ってくるのを見つけました。
二人のうち、一人はライオンを連れていました。
凶暴な獣も、女神の傍らにいて侍り陽気に振る舞っていました。
百獣の王を従えし戦いの女神アッラートは、暴力と霊感の神オーディンに尋ねて言いました。
「ごきげんよう、神々の王よ。早朝の訪問失礼いたします。私達の妹マナートの姿が見えません。行く先をご存知でないでしょうか?」
カラス達の主オーディンは答えました。
「知りませんよ。彼女の話を聞いたこともありません。」
純白の衣装を身に着けた、美しき乙女アル・ウッザーは進み出でて問いました。
「私は気配を読むものアル・ウッザー。今私達の妹が苦しんでいるのが分かる。現在を司るこの私は現実で起きている全ての事がよく分かる。あなたは本当に何も知らないのですか?」
神々の長オーディンは答えます。
「知りませんね。あなた達の心に浮かんでいる不安は大変な物だと思います。良かったらこっちに来たらどうですか?醸造したばかりの蜂蜜酒があります。ビールもありますよ。」
万物の母アッラートは神々の主オーディンに応じて言います。
「私は過去を司るもの。恐らく全ての原因。あなたが何に苦悩し、何を恐れて来たのかが良く分かる。あなたは本当に何も知らないのですか?」
帽子を深く被る者、オーディンは深く考えて言いました。
「私にはあなた達の苦悩も、苦痛も感じることが出来ません。ただ、あなた達の妹の行く末を深く案じます。それだけは確かです。」
神々の父は続けて言います。
「知りません。どうしてその事を私に尋ねるのですか?」
その時、鶏が鳴きました。
誰もが目を細めて見るその日の出を、その甲高い鳴き声で告げたのです。
二人の女神は同時に言いました。
「かく成らしめよ!終わりがあるべし!予言は成就されるべし!命が命によって損なわれん事を、ここに願う!」
かくして未来は神々と敵対します。
オーディンは考えます。
次なる冒険を、そして遠い未来の事へ。
思いを馳せるのです。




