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神々の罪9

偉大なる空の君主、雷の神トールは怒りました。

年老いた魔術児オーディンの息子たる獣神トールは、その逞しき腕で全き槌ミョルニルを振り上げました。

殆ど全てのアース神が、すなわちこの凄まじき強声を聞いて尚おどけた表情を崩さないローズル以外が目を背けました。

偉大なる神々の長オーディンの息子トールはその赤い髭と、その周りの冷たい空気を震わせて叫びました。


「畜生共!頭を掲げて俺の下に来やがれ!鈍牛の如くに屠ってやるぞ!この事について皆で話し合う必要がある!」


年老いた魔術師オーディンは答えて言います。


「その様に怒りをはらんで、大きな声を出すのは我々の目的に相応しくない。行く末の物事を、理解の片隅に置いておかねばならない。」


雄大なる大空の君主、雷を支配するものトールは父親へ食ってかかりました。


「黙れ!畜生共!俺の下へ来い!野牛の様に潰してやるぞ!卑怯者共!力比べをして、自らのした事を認めるがいい!」


年老いた彼の父親、魔法使いオーディンは答えます。


「その様に力を頼りにして、物事を思い通りにしようと言うのか?しからば貴方と話し合おうとする者らは誰でも愚か者だろうね?今落ち着いて君と話そうとしているのに。」


大空の覇者、稲光の君主トールは叫びました。


「黙れ!犬畜生も、それを庇護する臆病者も沈黙してしまえ!俺のハンマーが、貴様らの弱い身体を打ち壊してしまうぞ!」


秘儀の業に精通した者、魔法の深みを知る者オーディンは答えて言います。


「お前は身体は強いが、心が弱い。」


アース神のほぼ全員がその光景を見て、そして聞いていました。

見ていなかったのはもう、とっくに関心を失って下生えのクローバーの葉の枚数を数えていたローズルだけでした。

黙って他の神々は、神と神が言い争うのを聞いていました。

そして赤い眼のトール神が、鉄の槌を振り回して怒鳴るのを見て思います。

年老いた魔法使い、神々の長オーディンの意見が正しいと。

強声にも槌の脅しにも屈さず反論する、深き知恵を得た魔法使いの意見が正しいと思う事にしたのです。

そしてそれは、自分たちの悪行を正当化してくれる魔法の言葉でした。

トールは首を振り、鉄のハンマーを下ろして言いました。


「俺はこの事について、皆で話し合うべきだと思う。それだけだ。忘れてしまってはいけない。」


そう言って、彼は立ち去って行きました。


残る神々の王、万物の主オーディンは決断します。

まだ息があるマナート女神の身体を掴んで世界の北の果て、暗き冥府ニヴルヘイムの底に投げ落としたのです。

彼女は落下していくさなかこう言いました。


「お前は自らの命を自らの手で損なうだろう」


神々の長は黙ってその光景を見つめていました。

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