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神々の罪5

神父は語ります。


「この国は始めは豊かだった。独裁者が来てから全ては変わった。彼はこの国の住民を二つに分けた。牛や羊を飼う人と、それから大地を耕す人に。」


神父はため息を吐きながら続けました。


「牛飼いは農夫達を支配すべし。独裁者と、その取り巻き達は言った。彼らはそう演説した。貴方がたは本当は仲が悪いんでしょうと。牛飼い達に言った。そして彼らの息子にも、娘達にも読み書きや計算を教え始めた。牛飼い達はどんどん賢くなって、やがて大地を耕す者達を支配するものとなった。」


神父はまたもため息をつき、ワインを一口飲みました。


「ある時。いや、気付いていなかっただけで、それより以前から憎悪が増していたのだと思う。農夫達の怒りが爆発した。彼らは牛飼い達を殺し、殺して殺しまくった。」


神父は瓶の中の、真っ赤なワインを飲み干して続けました。


「彼らは牛飼いから奪った牛を殺した。生きたまま脚を切り取って饗宴を開いた。毎日毎日、痛いと言って呻く牛の隣で肉を喰った。」


マナートはその銀色の瞳で静かに神父を見つめています。


「私がこの国に来たのは全てが終わった後。彼らの心を助ける為だった。」


と神父は言います。


「殺した者と殺された者が隣り合って暮らしていた。私達の仕事は最後の人柱、主の栄光の導きによって憎悪を打ち負かす事だった。ああ!弱き我らを救って下さい!ってな。」


酔いが回った神父の顔は笑っていたが、定められた終末マナートが身に付ける黒衣よりも暗く、どんよりとしていた。

神父は続ける。


「私は言った。誰も裁いてはならない。貴方が裁かれない為である、と。そして主、イエスこそは最後の生贄であり、何人も復讐や、あがないの為に殺してはならぬと。ひとりの賢そうな男が私に聞いた。先生、何者かがその間違いを犯したら、何回まで許すべきですか?七回までですか?」


「私は思わず笑って答えた。何回でも許してあげなさいと。」


「そしてその顔のない男は、本当に顔がなかった。思い出せないんだ。その黒い顔がない男は、夜中に私の家族を殺してバラバラにした。そしてへたり込んだ私の目の前で言った。」


「何回まで許せますか?」


「私は家族を埋めた。そしてもう誰も愛すことが出来なくなった。」


ローズルはマナートの黒い袖口を引き言いました。


「ここには僕達の言う安心はないみたいだね。」


銀髪の姫マナートは言いました。


「神父さん。あなたはこれからどうするの?」


「俺にはもう神はいない。俺はアカになるんだ。」


神父は飲み干した酒瓶を蹴って言います。

ローズルはおどけて尋ねます。


「アカになるぅ?トマトか夕焼けにでもなるってわけ?」


「違う、違う。アカって言うのはな、神を信じない奴らだ。働きもしないで飯食って寝てばかりいる奴らさ。」


「働きもしないでご飯が食べれるなんて最高じゃないか!」


ローズルは飛び跳ねます。


「ねえねえ、僕らもアカに成りに行こうよ!」


奇妙な動きで弾む様に進むローズルについて、マナートは歩きます。

振り返りざまにマナートは見ました。

神父が武器を自分の頭に当てているのを。


「終わりは始まりなのか、それとも永遠の静寂が待ち構えているのか。入って見なければ分からない黒いベールが目の前を覆う。」


と彼女は言いました。

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