絞首台の主1
緑の大地の国に春がやって来ました。
雪解けの水が乾いてひび割れた大地に染み込み、倒れた旅人の亡骸を洗い、その苦労の旅路を労いました。
神々の王オーディンは落ち着きもなく、自らの居城の中を何度も行ったり来たりしていました。
彼の両方の目はまるで太陽と月でした。昇っては沈み、満ちては欠けました。
歩み続けるものを見下ろすように、日差しが王宮の壁に照りつけます。
朝の日差しを受けて、台座の上に置かれた神々の王の黄金の兜が煌めきました。
蛇の女神アルティンパサが、その光の中から彼に語りかけます。
「神々の王よ、あなたの心があなたの落ち着きの上にないのか。あなたの心はどこにある?」
オーディンは答えて言います。
「玉座に座る女神よ、私は私の心に疑念を抱いている。」
アルティンパサは言います。
「神々の王よ、あなたの為に用意された馬がある。それに乗っていけ。春の風をその頬に受けながら森を歩み、平原を走れ。そうすれば気が晴れるだろう。」
「湿原の女神よ、私は私の心に疑念を抱いている。しかるが故に私は足で行く。足は嘘をつかぬから。」
オーディンは帽子を被り、杖を持ちました。
そして緑の大地の国を離れて3日歩き、“吹きこぼれ鍋”という名前の湖にたどり着きました。
ほとりには古びた一軒の家があり、戸の前に一人の老人が立っていました。
「ごきげんよう!」
オーディンの声は朗々と、霜が残る大地と曇った空に響きました。