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昨日はなんの日?


「あ……あにさんは、何者なんでやんすか!?」


 スーツ男に対してすっかり態度を変えたソボロコフが震えながら聞いた。


「そいつはね。宇宙人ハンターよ」


 青白い光に包まれた藤峰が答えた。


「う、宇宙人ハンター!? よ! さすがあにさん!! いやー私はね! 一眼見た時から『只者じゃないぞこのお方は!』

 と思っていたのでやんす!!」


 ソボロコフは太鼓持ちのように手を前で組み、冷や汗をかきながら必死の笑顔を作った。


「下手に動きなさんなよ? 宇宙人とのハーフちゃん」


 スーツは、例の起爆スイッチを見せびらかせている。


「C4爆薬だ。昨日の晩、このマンション中に仕込んでおいた。

 まあ、引き取りの段で、気持ちよさそうなコタツと、鍋をつまみに美味しそうなハイボールを飲んでしまったのは予定外だったけど。

 藤峰楓。いや、本名、藤峰ς! お前さんが宇宙人とのハーフだってことは調査済みだ。

 お前らの生態に興味がある顧客を待たせてるんでね、大人しくしてもらうよ」


「あのーー」


 小出が思わず割って入った。


「それがどうして僕の家で一緒に寝てたんですか……?」


「君の家のシャワールームに捕らえておくよう、依頼したんだ」


「誰から?」


「君の友人だよ。そこに転がっているカネは、そのために用意したんだ」


「友人……?」


「誰だっていいだろう! さあ! こっちに来いς!! 陰毛みたいな造形の名前しやがって!」


 すると天から二本の赤い光線が刺し、スーツの体に直撃した。


「ぎゃああ!! ビリビリするよおお!!?」


 小出が、天井の穴越しに空を見ると、 天から一人のサイボーグが舞い降りてきた……。


「女性に対して失礼すぎる発言だろう」


「長田ちゃん!!」


 それは、なんとなく長田の面影が残っているサイボーグだった。

 肩に先ほどの老人を乗せている。

 

「すまないね小出ちゃん。今まで黙っていたが実は僕は……宇宙人ハンター警察なんだ!」


「「う、宇宙人ハンター警察!?」」


「そうだ。そしてこの肩の老人は、僕がこんなこともあろうかと呼んでおいた、

 マッドサイエンティストだ。機械の体が間に合ってよかった」


「待て待て待て待て待て!! ちょっと待て!!」


 ソボロコフが目を回している。


「お前が宇宙人ハンター警察……なんだその適当なネーミングは!!

 『オレンジ味のチョコレート丼』みてえだ! 実態がねえ!!」


「ああそうかもしれない。そして今やサイボーグ宇宙人ハンター警察だ!」


「実態がねえ!!」


「僕は君たちの友人を演じながら、影で宇宙人ハンターを取り締まる任務を行っていた。

 藤峰ちゃんともコンタクトをとってね」


「ちょっと!!!」


 藤峰が大声で割り込んできた。


「じゃあ私との関係は嘘だったわけ!? あの夜のことも!?」


 …… ……


「「はあ!?!?」」


「……おいおいおい長田よ長田長田長田!! お前はいつの間に芸能人と『関係』を!?」


「ああ。隠すのに大変だったよ。でもςちゃん。君との思い出に嘘はない。

 僕は罪な男だ。

 サイボーグ宇宙人ハンター警察、A.K.A罪な男だ」


「むしろ実態しかねえ!!」


 すると、藤峰はサイボーグの長田に駆け寄り、わんわん泣き出した。


「そんな……ひどい、酷すぎるよ! 昨日もいきなり夜に呼び出されて、

 長田の男友達の家に、私ん家のコタツ持ってってあげたんだよ!? 」


「これ、藤峰さん家のコタツだったの!?」


「なんか人がいっぱいくるから、大きめのコタツが欲しいって言われて……

 仕事終わりで眠かったらかUFOの操縦ミスって、屋根から入車しちゃったけど」


「屋根から入車!!!!!」


「長田ちゃん……」


 小出が手を上げた


「なんだい小出ちゃん」


「シャワールームの鹿と熊は……?」


「それはね! この男をここに引き込む餌として、僕が連れてきたんだ!

 屁賀忍法『熊鹿寄せの術』でね!!」


「忍法?」


「うん! 言ってなかったけど、実は僕は屁賀琉忍術の使い手なんだよ! 」


「「つまりー?」」


「忍者マスターサイボーグ宇宙人ハンター警察、A.K.A罪な男だ」


「長田無双すぎんだろ!!」


「さあ、おスーツは僕ときてもらうぞ。こいつの金はいったん僕が預からせてもらう。

 ……億万長者の忍者マスターサイボーグ宇宙人ハンター警察、A.K.A罪な男だ。

 小出ちゃん、ソボロコフ、そんなわけで突然僕は、

 君たちにとって雲の上の存在になってしまったわけだけれども、よかったら友人関係を続けて欲しい。

 そして、……義父さん」


「……!? %=0+(T.T) ( ´Д`)y━・~~ @=^(訳:突然話しかけるな! 君に『義父さん』などと呼ばれる筋合いはない!)」


「ええそうでしょう。 とんだ挨拶になってしまいました。それも、無関係の男友達の家で……。

 しかしそこは僕の破天荒さだと思ってください!

 ご覧のとおり僕は仕事ができる男です! 

 この通り……(足元の現金を拾う)一晩でこれだけ稼ぐこともできます!

 なんなら、お土産に鹿肉と熊肉を振る舞うこともできます!

 今やサイボーグなので病気も怪我もしません!

 娘さんを……僕にください!」


「長田!」


「( ͡° ͜ʖ ͡°)」


「こ……これはつまり……」


「ああ、破天荒な億万長者の忍者マスターサイボーグ宇宙人ハンター警察、A.K.A異星間交流の橋がかり的男だ!」


「「長田無双すぎる!!」寿限無か!!」


「勝手に話を進めないでよ! ……まあ、長田がそう言うなら私はOKだよ。

 いい?パパ」


「٩( ᐛ )و」


「だって! よかったね長田!」


「よし! じゃあ今からハネムーンに行こう! ちなみに全く関係ないけど、ハネムーンって直訳すると『羽月』だね!!

 ……帰ってきたら僕は、

 破天荒で柔軟な発想を持つ億万長者の忍者マスターサイボーグ宇宙人ハンター警察、A.K.A有名異星人女優と結婚した男ちなみに金星帰りだ!

 小出ちゃん! 君の家の屋根を壊してしまったのは申し訳なく思うけど、

 ご覧のとおり僕は破天荒な男だ。

 破天荒な友人を持ったと思って許してくれ。そして、シャワールームの鹿と熊は君にあげよう!

 じゃあ! また会おう!」


 長田は、小出やソボロコフの言葉など聞かずに、スーツ男とマッドサイエンティストを連れて、

 現金を忍術で出した大風呂敷に包み、マンションの屋根の穴から飛び立った。


「まあ、退屈な男じゃないことは確かね。パパ。眠いから送ってって。

 ……邪魔したわね。この壊れたUFOと、宇宙製のコタツの処分お願いしていい?

 修理できたらあんたにあげるわよ。まあ、ハイテクノロジーすぎて無理だと思うけど。

 じゃあね」


「( ・∇・)ノ」


 宇宙人たちは、青い光に包まれていった。空はいつの間にか戦闘が止んでいた。

 真っ青な空に、不安定な軌道を描いてUFOが飛んでいった。


「…… ……なあ、俺だけなんにも、設定っぽい設定がないんだけど」


 異邦人たちに散々荒らされた部屋で、ソボロコフがつぶやいた。


「…… ……ほんとだね。いかにも何かありそうな名前なのに、なにもなかったね……」


「うん…… ……帰るわ。 あ、昨日の鍋と酒の金、立て替えといて」


 ソボロコフが出ていき、小出は一人になった。

 小出は、一晩でとっ散らかった部屋で大きくため息をついて……

 奇跡的に無事だった冷蔵庫から、1ホールのショートケーキを取り出した。


 小出は……昨日誕生日だった。

 

 それで、友人たちを家に招いたのだ。

 やめときゃよかったな。と小出は思った。

 いい大人が誕生日パーティーなんぞ開いても、ろくなことが起きないのだ。


 テーブルの割れたコタツはまだ暖かく、ケーキに蝋燭を立てて……

 小出は、自らのために『ハッピーバースデー』を歌った。

 壊れたUFOの羽が、小出の姿を写している。




     大きいコタツ、それから謎の大金とUFOと知らない友人と熊と鹿と機械の右腕 了。

 



 


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