なぜ鹿と熊?
空は戦闘が激化したようだ。
藤峰は、再びスマホを取り出し、空を睨みながら誰かに電話をかけている。
「パパ!? 何寄り道してんの!? ……言い訳はいいから! さっさときて!」
藤峰が不機嫌に電話を切ると、引き続き、いらつきながら空を睨み、
それに対し小出は心配そうに藤峰を見ている。
「……お父様に、助けを求めているのですか?」
藤峰は、小出のことなど相手にせず、立ちながら貧乏ゆすりをして、やっぱり大荒れの空を見ている。
…… ……すると、空から1機の小型UFOが、どうやら戦闘を掻い潜って小出の部屋に近づいてくる。
「え……え……!?」
UFOは小出の部屋の上空で動きを止め、部屋に向けて一筋の青白い光を降ろした。
と、UFOから何がしかが降りてきた。
銀色の肌に、黒く大きな二つの目。ああ、あれこそグレイ型宇宙人のステレオタイプだ。
しかし藤峰は、驚くどころか一層険しい顔を作り……
「遅い!!」
と一喝した。
藤峰に怒られると、宇宙人は長い30センチはある銀色の長い指で頭を掻いた。
「`=0~_}++&#”>>*_]-|¥」
「そう言うのいいから! そんなんだからママが愛想つかして出ていくんだよ!!」
「……え?」
小出は思わず話に割り込んでしまった。
「=>>*「:pςθθ~^^ orz」
藤峰に痛いところを突かれたのか、宇宙人の目は明らかに4分の1程に小さくなり、明らかに落ち込んでいる。
「あの!!」
小出が勇気を出して声をあげ、ようやく藤峰は小出の方を向いた。
「…… ……お父さん?」
「そうよ」
「……お父さん?」
「何よ」
「…… …… …… ……お父さん?」
「だから! 何だってのよ!? 全く同じこと3回も連続で聞くことある!?」
「あ、いえいえ……すんません……」
するとそこに、シャワールームからスーツ男とソボロコフが駆け込んできた。
「なんだいあれは!! 話が違うじゃないか!!」
「はあ……」
「君の家のシャワーを、なんで長時間熊と鹿が浴びてるんだ?!」
「あ、エゾシカとツキノワグマです……」
「それわざわざ訂正するー!? そこ重要ー!? そしてそこの宇宙人は本物ー!?」
「何個もいっぺんに聴かれましても……」
藤峰と宇宙人は、男たちのことなど無視して、青い光を登って宇宙船に引き返そうとした時である。
「まった!!」
スーツ男が拳銃を乱射する。小出とソボロコフは伏せて、藤峰たちの動きを止めた。
スーツ男は内ポケットから、起爆装置めいたものをちらつかせた。
「おたくらには、顧客が付いてるもんでね!! 俺も下がれないんだよ!! ちょっと従ってくれないかな?」