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その腕はなあに?



「「「……はい?」」」


 小出、長田、ソボロコフの三人は同時に中年男性に詰め寄った。


「いや……あれ、楽しくなかった?」


「昨日何があったか知ってるんですか?」


 中年男性のなんとなく打ち解けた感じを見て、小出は遠慮がちに聞いてみた。


「いや……だって、ねえ。すごいことになってるじゃない。

 なに? 映画の収録?」


「(ウィイン……)そうじゃなくて、(ゥイン、ゥイン)俺たち昨日の記憶怪しくて。

 『楽しかった』って言うのは、何か覚えてるんです(ウィィィィィン?)か?」


「あー。あ、うん。いや? 全然?」


「「「は?」」」


「なんとなく、楽しそうだからさ。そう聞いちゃった。アハハハハ……」


「紛らわしいこと言うなよ!!」


 ソボロコフが男性の胸をどついた。


「あわわ……」


 男性の体が頼りなくよろめく。


 三人組の方には、いつもの険しい沈黙がのしかかる。確かに楽しかった昨日が、すでに懐かしい。


「……どうすればいいんだろう?」


「(ウィン?)何が」


「ケイサツかな? こんな時は」


「「待て待て待て待て待て」」


 長田とソボロコフが不安そうな小出を諌める。


「こういう事象は繊細に(ウィン)、繊細に扱うべきだ。(ウィンゥイン)

 ここの状況が世間様に公表されたら、俺らの未来に悪影響出るぞ」


「……どんな悪影響?」


「ヒグマ! エゾシカ!! (ウィィン!) あとこれ、UFO!! (ゥインゥイン)と俺の右腕!!(ウウウン!)

 あとそこの身元のわからない大金!!(ウィイインオオン!!)

 あと泥酔したオトコに囲まれて人気女優が寝てるなんて状況公表してみろ!?

 大炎上だぞ!?」


「あー、その子有名人なんだー」


 スーツ男が口を挟むと……


「お前は今喋んな!」


 ソボロコフが辛辣な言葉をぶつけ、頭をどつく。


「……やりすぎじゃない?」


「いいから。 とにかく小出ちゃん。早まるな。

 まず冷静に、状況を整理しよう。長田、お前が悪い」


「……(ウィン?)」


「お前と、『悪魔のハイボール』が全部悪い!」


「いやいやいや(ウィンウィンウィン……)そうはならんだろ。

 それだけじゃ説明つかないだろうこんな状況」


「そもそも君たちはなんなのさ」


 スーツ男がまた話に割り込んできて、ソボロコフは大きな舌打ちをしてまた頭をどついた。


「いたい!」


「喋んなっつってんべ」


「そういえば(ウィィィン)、まだ寝てる人がもう一人いるな」


「いいよ! これ以上面倒ごと増やすなよ!!」


「そうもいかねえだろ(ウィンゥイン)…… ……」


 長田が隣でまだ寝ている、最後の一人の顔をまじまじと見た。

 総白髪の、かなりご年配の男性で、白衣を着ている。


「これまた……めんどくさい風貌だぞ? これは起きると多分、厄介だぞー?」


「(ウィンウィン)……そうね。ちょっと、寝ててもらおう」


「しかし、だいぶ状況は見えてきたねー」

 

 懲りもせず、スーツ男がヘラヘラと話に入ってきた。そして……


「大変そうだけど、さ、がんばってねー」


 と、コタツから立ち上がり、ソボロコフの後に積まれている札束を回収し出した。


「……何してんだよ?」


「あ、これね、ボクの」


「「「はあ?」」」


「ホントホント。ボクのだから」


 さらに、隣で寝ている女優、藤峰を無理やり背負おうとする。


「お……ちょっと重いな?……おーい嬢ちゃん。朝だよー。起きろよー

 …… ……じゃ」


「待てよ!」


 ソボロコフが立ち上がり、男性の後頭部を強打した。


「痛い!!」


「それもお前のかよ?」


「そうだよ!! どっちもボクの!! 」


「嘘つけよ」


 ソボロコフのローキックが男性の膝を執拗に痛めつける。


「痛い! 痛い痛い!! ホントなんだよー!!」


「(ウィンウィン)その子、さっき父親呼ぶって言ってたぞ。少なくともアンタの子じゃないよな」


「親……まじで!?」


「ほらやっぱり嘘じゃねえかよ!」


 ソボロコフの強烈なカーフキックで男性は膝をついた。


「痛い!!」


「(ウィン!)あんたやっぱり何か知ってるな?……」


「知らない!」


「(ゥイン!!ウウウウウウ!!!!) 正直に言ったほうが身のためだぞ?

 (ピキン!! グゴゴゴゴゴゴ!!!!)」


「…… ……長田ちゃん? ところで、手からすごい音してるけど……」


「え……(ピキン! がションガションガションガション!!!)

 なんだ!? 俺の右手が!?(ピピピピピピ……)System・working……」


 長田の腕が電子音のような騒音を出したと思うと、なんとそれは変形し、もはや右腕の原型を留めていない形になった。


「なんじゃこりゃああ!!(ピコピコピコピコ!!)」


「イーヒヒヒヒヒヒ……」


 いつの間にか、白衣の老人は起きており、長田の隣でリモコンを操作している!


「すごい……これはすごいぞ。このエネルギー・ゲイン。ワシの期待以上じゃわい」


「わー! 長田ちゃんに何すんだ!!」


「うるさい!! ワシの長年の夢を邪魔するんじゃあない!! スイッチをーポチッとな!!」


 長田は咄嗟に危険を感じ、右腕を誰もいない天井に向けた。



「わ! (ドオオオオオオン!!)」


 長田の右腕が、ロケットのように空高く打ち上げられる。


「おおお!! みたか! この威力!!」


「俺の右腕ええ!!!」


「新居の屋根が!!」


 

 空の彼方で、ドーーン。と、長田の右腕が自爆する音が響いた。


「ウハハハ!! 想像以上の威力じゃ!! これがわしの求める、カッコイイ最終兵器じゃ!!」


 白衣の老人の高笑いが、部屋に響く。



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