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7話 スライム地獄とポイズンスネイクの群れ

勝手ながら投稿してしまいました

すみません

予約投稿を消そうとしたら投稿してしまい、21時半まで待っていた皆様に過大なご迷惑をおかけしました

本当にすみませんでした

第八階層:無限のスライムと流転の地


──草原が、続いていた。


第七階層での激戦を経て、五人の冒険者たちは第八階層へと足を踏み入れた。だが、目に映る景色は再び穏やかな風と翠の絨毯。違うのは、空気に微かに混じる湿った匂いと、地面にぽつりぽつりと残る粘液の跡。


「また草原か……でも、変だな。魔物の気配が……薄い?」


涼が周囲を見渡しながら呟いた。前階層の激闘から間もない彼らの体は、まだ完全には癒えていない。だが、どこか緊張が緩んでいたのも確かだった。


「油断するな。迷宮に“優しさ”なんてねえよ」


光貴が呟いたその瞬間、足元の草が揺れた。


「来るぞ!」


智也の叫びと同時に、地面から無数のスライムが這い出してくる。小さなものから人間の胴ほどもある個体まで、形も動きも不規則だ。


「スライム……? 雑魚じゃないか?」


遥が身構える。確かに個々のスライムのステータスは低い。だが──


「数が異常だ……!」


その数、軽く百を超えていた。草原の地平線が、粘液の波で満ちていく。スライム同士くっつき、波のように流れている。


単体討伐なんて不可能であるほどに溢れていた。


「一体ずつじゃ無理だ。範囲魔法で……吹き飛ばす!」


智也が【火の壁】を展開、美月が【氷槍】を重ねる。燃え盛る炎と砕ける氷がスライムたちを一掃するが、倒しても倒しても次が湧く。


別の方向から同じようにスライムたちが現れ、襲いかかる。


「くっそ……終わりが見えねぇ!」


光貴が拳を振り抜くたびにスライムが砕ける。涼も剣を駆使して数を削るが、被弾すれば粘液で動きを鈍らされる。遥の幻影もすぐに溶け、使い捨ての戦術に頼るしかなかった。


「まるで……“消耗戦”を狙ってるみたい」


美月が息を荒げる。彼女の魔力量は豊富だが、無尽蔵ではない。スライムの低い攻撃力すら、数の暴力となれば脅威だった。


だが──


「やるしかない……!」


全員が意識を研ぎ澄ます。動きは次第に洗練され、攻撃のリズムも整ってくる。無駄のない動作。迷いのない殺意。そして──


「あと十体!」


「三……二……ッ!」


最後のスライムを砕いた瞬間、静寂が戻った。血の代わりに粘液に塗れ、全員が息を荒げていた。


《戦闘終了──経験値加算》

《全員のレベルが上昇しました(+1)》

《ステータスが微増します》


「……なんで、スライムだけなんだ?」


涼の言葉に、誰も即答できなかった。だが、恐ろしさは残った。迷宮が彼らを試している。単なる敵ではなく、“戦いの本質”を。


「ここじゃ、強さより……消耗が問題になるのかもしれない」


智也の呟きが、妙に胸に残った。


__________


第九階層:蛇の咆哮と限界の先


次の階層もまた、草原だった。また、同じ場所かと悪態を告げるも七階層、八階層と比べて雰囲気が違っていた。少し重い空気がその草原にあった。


見た目としては空は高く、風は穏やか。だが、それに騙される者はいなかった。草の匂いの中に、確かに混じる──血と毒の気配。


「……おかしい。変化がなさすぎる」


遥の警戒は鋭い。全員が無言のまま歩を進めたその時──地面が揺れた。


「っ……あれを見ろ!」


涼が指差す先、丘の向こうから現れたのは──ポイズンスネイク。しかも一体ではない。


「まさか……十体!?」


あの第七階層で苦戦した個体と同格の魔物が、群れを成して襲いかかってくる。全員の顔から血の気が引いた。


「……マジで殺しに来てるな」


光貴が呟く。その通りだった。これは試練ではない、“処分”だ。


「行くぞ……ここで退けば、次はない!」


智也が先陣を切り、精霊魔法を放つ。炎の矢が蛇の一体を撃ち抜くが、【再生】スキルが即座に肉体を修復する。


「攻撃力も防御力も……上がってる!?」


「無理に削っても、意味がない! 動きを止める!」


美月が【強制拘束】で蛇の動きを縛る。涼と光貴が連携し、一体ずつ集中して撃破していく。


だが──


「くっ……!」


尾の一撃を受け、遥が地面に叩きつけられる。涼がすぐに駆け寄るが、もう一体が牙を剥いた。


「やらせるかよッ!」


光貴が割って入り、拳で牙を砕く。だがその刹那、別の蛇が智也に迫る。


「……精霊よ、燃え尽きろッ!!」


【火柱】──魔力を限界まで消費して放たれたその一撃が、三体の蛇を焼き払った。


「あと三体……いける!」


だが、その声は必死だった。全員、満身創痍。足元すら覚束ない。


──それでも、進む。


「絶対に、生き残る……!」


遥が幻影を撒き、光貴が牙を折る。涼が跳躍し、蛇のコアを突き刺す。そして──最後の一体が地に伏した。


《戦闘終了──群体討伐完了》

《全員のレベルが上昇しました(+1)》


──その言葉が表示されるまで、誰一人、勝利を確信できなかった。


【梶原 光貴】Lv:16 → 17/体力:154/攻撃:125

【榊原 智也】Lv:12 → 13/体力:115/魔力:147

【如月 美月】Lv:14 → 15/体力:128/魔力:154

【野中 涼】Lv:13 → 14/体力:134/攻撃:125

【結城 遥】Lv:14 → 15/体力:116/魔力:149


__________


安全地帯。草原の一角に灯る白い光に身を投じ、五人は倒れこむように腰を下ろした。


「……蛇が、十体。あの化け物が……」


「死ななかったのが、奇跡だよ……」


焚き火が揺れていた。誰も言葉を発せず、ただ黙って火を見つめる。


「俺たち……本当に、“人間”か?」


涼の声に、誰も答えられなかった。


迷宮は変わっていた。いや──世界が、狂っていた。


「これは、もう……俺たちの知ってた迷宮じゃない」


智也の言葉に、全員が静かに頷く。


──その上空、高く離れた岩礁にて。

黒崎 四は黙って五人を見下ろしていた。目の奥に宿るのは、憐憫か、嘲笑か、それとも──共感か。


「“壊れて”いくな……本当に」


彼の声は、風に消えていった。


──続く。


次回の投稿は21時半に投稿します!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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感想もお待ちしています!

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