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6話 第七階層へ

勝手ながら投稿してしまいました

すみません

予約投稿を消そうとしたら投稿してしまい、21時半まで待っていた皆様に過大なご迷惑をおかけしました

本当にすみませんでした

第七階層:緑風の草原と毒牙の影


──空は抜けるように青く、足元には柔らかな草が揺れていた。


しかし、彼の視線はその美しさには一切染まらなかった。第七階層の遥か上空、浮遊する岩礁に佇む少年の姿──竜の魔王、黒崎 四。人間の高校生としての姿をとっているが、その本質は異世界に君臨した災厄級の存在。彼は細めた瞳で、下界の冒険者たちを静かに見下ろしていた。


「うわ……また生き残った。しかも五人とも」


指先で空間を軽くなぞると、魔力で構築された小さなホログラムが浮かび上がる。冒険者たちのステータスや戦闘記録だ。


「前の階層でホワイトウルフに勝てるとは思わなかったけど……あれに慣れちゃってる時点で人間の感覚じゃないよ、これ」


四は口元を歪めて苦笑した。殺戮や破壊には慣れているはずの“竜”としての彼ですら、彼らの成長速度と精神の強靭さには僅かに引いた。


魔物との戦闘が増えてきたことによって体が自然に慣れてきている。まだ、数える程度しか迷宮に入ったことがない5人にとって体の適応能力の恐ろしさに肩が震えている。


「それとも……この迷宮の影響か?いや、“こちら側”の要素がどんどん濃くなってるんだ。あの子たちも、もう普通の人間じゃない」


軽くため息をつくと、四は姿を霧に溶かし、冒険者たちの動向を再び見守るために消えた──


__________


「……空が開けてる?」


第七階層に踏み入れた五人の冒険者は、予想外の風景に息を呑んでいた。これまでの暗い迷宮や凍てつく地獄とは打って変わり、そこは一面が翠に包まれた草原だった。風は穏やかで、薄く漂う花の香りさえある。


「嘘みたいだな……ここが、あの地獄の続きだなんて」


涼が空を仰ぐ。彼の顔にはまだ、ウルフ戦で刻まれた傷の痕が残っていた。回復魔法では完全に癒すことができなかった。


「油断するな。見た目が優しげでも、敵はいるはずだ」


智也が警戒を促す。彼の手にはすでに精霊の兆しが揺らいでいた。


そのとき──


「来る!」


遥の声と共に、地面を駆ける無数の影が現れる。草むらの間から飛び出してきたのは、十数体のゴブリンだった。武器は粗末、身なりも雑然としているが、数と機動力は侮れない。


「こいつら、なんか懐かしいな……初期に出たやつと同じ系統か?」


昨日会った魔物であるがゆえに可愛く見える。

光貴が前に出て拳を構えた。


「ええ、でも数は多いわ。集中して潰す!」


かつて苦戦した相手だったはずのゴブリンたちは、今の彼らの敵ではなかった。数秒と経たずに殲滅が完了し、傷一つ負う者もいなかった。


「……え、弱すぎないか?」


涼が言葉を漏らした。その言葉に、皆が無言で頷く。


「第七階層なのに、これはないよ。ゴブリン? 一撃で沈む……」


違和感は明確だった。階層が上がるほど強敵が現れるはずなのに、今回だけ“簡単すぎる”。


しかし──


「なっ……なんだ、今の振動……!」


地面が揺れた。いや、それは“踏み鳴らす”音。巨大な足音が五度、草原に響く。


「っ、後ろから……!」


出現したのは、ゴーレム──しかも五体。それぞれが先の階層で現れた個体と同程度、いやそれ以上の威圧感を放っていた。


【ゴーレム】

体力:20/攻撃力:25/防御力:35/魔力:11/運:12

スキル:【防御壁】


「マジかよ……2体でもヤバいのに、連戦かよ!?」


構える間もなく、ゴーレムが戦闘態勢を取る。しかし──


「よし、落ち着け。今回は“俺たちが強い”んだ」


智也が静かに言い、指を鳴らす。精霊魔法、【火の矢】が三連続で発動。ゴーレムの腕が吹き飛ぶ。そこへ涼と光貴が連携し、懐に入りこむ。


「これで終わりだ!」


拳と短剣がコアを砕き、一体、また一体とゴーレムが倒れていく。


「……終わったな」


美月が息を整える。身体に傷はなく、魔力の消費も軽微。


──そして、再びウィンドウが現れる。


《戦闘終了──経験値加算》

《全員のレベルが上昇しました》


【梶原 光貴】Lv:10 → 13/体力:95 → 138/攻撃:80 → 118

【榊原 智也】Lv:6 → 9/体力:60 → 86/魔力:92 → 135

【如月 美月】Lv:8 → 11/体力:72 → 105/魔力:85 → 123

【野中 涼】Lv:7 → 10/体力:75 → 110/攻撃:70 → 102

【結城 遥】Lv:8 → 11/体力:68 → 99/魔力:78 → 113


「っ……また、三も上がった……!?」


智也が震える声で呟いた。


「ステータスの上がり方、明らかに異常だ。こんなの、ゲームの“チート”だろ……」


「俺たち、何かおかしいのか……それとも、このダンジョンが……」


しかし、答えを得る前に、新たな影が現れる。


「……なんだ、あれは」


草原の向こう、蛇のようなものが地を這って近づいてくる。見間違いではない。それは、まるで神話に出てくるかのような、巨大な毒蛇──


【ポイズンスネイク】

体力:80/攻撃力:75/防御力:110/魔力:105/運:84

スキル:【猛毒牙】【毒霧】【硬鱗】【再生】【感知妨害】


「ステータス……ゴーレムの3倍……!」


「これ、一体だけでも階層ボス級じゃねえか……!」


油断していた気配が消し飛んだ。恐怖が五人の背筋を走る。


「集中しろ! 毒を浴びたら、終わりだ!」


戦闘が始まった。蛇は地を這いながら、猛毒の霧を吐き出す。あたり一面が紫に染まり、視界を奪う。


「幻影生成ッ!」


遥のスキルが囮を生み、注意を引き付ける。智也が精霊で火を灯し、霧を焼き払う。


「毒の効果範囲、広すぎる!」


「でも、避けられる! 足は遅い!」


涼が跳び、短剣を鱗に叩きつける。しかし、硬鱗に弾かれる。


「防御力、バケモンかよ!」


美月の【強制拘束】が一瞬、蛇の体を止めた。


「今しかない!」


光貴の拳が蛇の眼を砕く。だが、蛇は痛みに狂い、体をうねらせて攻撃を繰り出す。その尾が智也を吹き飛ばす。


「ぐっ……! まだやれる……!」


瀕死の中、全員が歯を食いしばって立ち向かう。そして──


「全員、最後の一撃を!」


五人の攻撃が重なり、毒蛇の頭部に集中。ついに──


《戦闘終了──ボス級個体撃破》

《経験値加算・特別報酬加算》

《全員のレベルが上昇しました(+3)》

《ステータス大幅増加》


──その瞬間、空間が震えた。


《更新後ステータス(補正適用)》

【梶原 光貴】Lv:13 → 16/体力:138 → 184/攻撃:118 → 165

【榊原 智也】Lv:9 → 12/体力:86 → 104/魔力:135 → 165

【如月 美月】Lv:11 → 14/体力:105 → 154/魔力:123 → 148

【野中 涼】Lv:10 → 13/体力:110 → 151/攻撃:102 → 142

【結城 遥】Lv:11 → 14/体力:99 → 138/魔力:113 → 134


「……こんなに、強くなってる……?」


手が震えていた。だが、それは恐怖ではなかった。ようやく──ようやく得た勝利に、全員の表情が少しだけ緩んだ。


__________


草原の一角、安全地帯を示す淡い光が見えた。五人はそこにたどり着き、ようやく腰を下ろす。


「強かったな、あいつ……マジで死ぬかと思った」


涼が肩を預けながら呟く。


「でも、勝てた……俺たち、ほんとに勝ったんだ」


光貴の声に、皆が小さく笑った。


「……あれだけの化け物に勝って、生きてるなんて……信じられない」


「信じられないからこそ、生きてる実感があるよ」


焚き火の火が、草原の夜を暖かく照らしていた。


──そして、空の上。

黒崎 四は空を見上げ、ふ、と口角を上げる。


「……やっぱり、壊れてきてる。人間の限界なんて、とっくに超えてるよ」


──続く。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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