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19話 Aランク冒険者の力

──竜の迷宮、第一層から十層まで。


黒髪の剣士・神谷涼が先頭を切り、仲間たちが緊張を纏いながらも確かな足取りで迷宮を進む。十名の国家級Aランク冒険者は、迷宮の入口に立った瞬間からその実力を遺憾なく発揮していた。


第一層のスライム群を、嶋田剛士の豪快な斧が粉砕し、月城梨花の氷結魔法が足止めをかける。範囲攻撃と連携は完璧で、雑魚の群れもあっという間に消え去った。


「皆、手際いいな」


香坂美佳が軽やかな足取りで後方から味方を守りつつ幻影魔法で敵の攻撃を攪乱する。彼女の動きが、戦況を一層有利に導く。


「この調子なら、十層までは問題ないな」


羽田悠人が回復魔法を絶え間なく送り続ける中、野崎拓人が地裂魔法で足場を断ち割り敵の進行を阻む。


十層までに現れた敵はホワイトベアやポイズンスネイクの集団などだったが、彼らは的確に弱点を突き、致命傷を与える。


Aランク冒険者を相手にホワイトベアやポイズンスネイクが倒すなんてことはできない。能力に大きな差があり、蹂躙される運命となる。


「ホワイトベア……やっぱり強いけど、これくらいなら余裕だな」


佐伯亮真が豪快に両手剣を振るいながら笑った。彼の二刀流はまさに圧巻の技だ。


____________


──十一層、十二層。


新たに立ちはだかったのは石造りの守護者、ゴーレムたち硬い甲冑のような外殻を持ち、魔法もほとんど通じない。


ホワイトベア達も現れるが苦戦することなく、戦闘勝利する


「防御力が高い……普通なら苦戦必至だが、俺たちならな」


神谷は冷静に指示を出し、榊真が持ち前の戦術眼で敵の動きを分析する。


「鉄壁の守りか……だが、攻撃力がやや低い。奇襲を狙おう」


「よし、行くぞ!」


瞬間移動のスキル「瞬歩」を使い、神谷が敵の背後に回り込む。仲間たちは連携を保ちながら攻撃の隙を狙う。


激しい攻防の末、ゴーレムたちは次々に倒れ、十二層の安全地帯へと辿り着いた。


__________


──十二層の安全地帯。


静かな空間に、ほかの冒険者たちが疲れた表情で集っていた。彼らもまた、竜の迷宮の深淵に挑み続けている者たちだ。


「ガーディアンの話は知ってるか?」


一人の冒険者が声を潜めて告げた。


「十二層を超えると出てくる石造りの巨人だ。防御力と魔力が異常で、何度も痛い目に遭っている」


「そう聞いてる。体力はそこまででもないが、攻撃は厄介だろうな」


春日井聖が聖光魔法で傷の手当てをしつつ言う。


「魔法も効きづらいし、強力な破壊光線を放つらしい」


「その上、鉱物吸収のスキルがあって、防御壁を張る。まともに受けると分が悪い」


情報は確実に重みを増した。チームは理解を深め、明日の戦いに備えて休息を取ることにした。


「明日は確実に厳しい。だが、これを越えれば……」


危険視されている敵に遭遇することになる。

神谷の言葉に、全員が決意を新たにする。


__________


──翌日、十三層。


入り口が開くと、冷たい風が吹き抜けた。視界には無数のガーディアン、20体の石造りの巨人が整然と並び、こちらを睨みつけている。


「ガーディアン、20体か……」


月城梨花が端末を起動し、ステータスを再確認した。


【ガーディアン】

体力:1080/攻撃力:580/防御力:1040/魔力:1500/運:15

スキル:防御壁/鉄壁の盾/破壊光線/鉱物吸収


冷たい石の空間に、重く不吉な足音が響く。巨体を揺らしながら接近してくるのは、20体の《ガーディアン》。高さは三メートルを超え、全身が黒光りする鉱石に覆われていた。赤く光る目が、まるで生者の魂を見下ろしているかのようだ。


神谷涼は剣を構え、冷静に戦況を見据える。


「全員、散開。前衛は嶋田、佐伯、野崎。後衛は魔法支援と回復に専念。決して一対一で挑むな」


「了解!」


声が重なり、冒険者たちは瞬時に持ち場へ散った。


「まずは削る! 俺が引きつける!」


嶋田剛士が咆哮を上げながら前に出る。全身の筋肉が膨張し、スキル《豪斧撃》が発動。彼の斧が振り下ろされ、ガーディアンの片腕を深く抉る。だが──


「くそ、硬ぇな!」


金属同士がぶつかるような衝撃音。ガーディアンはわずかに怯んだだけで、すぐに腕を振り上げ、反撃の拳を繰り出してくる。


「くっ……!」


嶋田が受け止める前に、香坂美佳の幻影が横から飛び出した。


「今よっ!」


攻撃は幻影に逸れ、空を切る。その隙を突いて佐伯亮真が猛突進する。


「このッ……!」


両手に構えた大剣が連続して唸りを上げ、スキル《乱斬双撃》が発動。肩口から腹部にかけて斜めに裂けた傷が刻まれ、鉱物の破片が飛び散る。


「ようやく通ったか……!」


だが次の瞬間、ガーディアンの目が怪しく光る。


「破壊光線、来るぞ!」


野崎の叫びと同時に、ガーディアンの胸部が開き、濃密な魔力が瞬時に凝縮。真紅の魔力光が直線状に放たれる。


「くっ……!」


月城梨花が瞬時に魔法詠唱を終える。


「《氷壁の結界》!」


巨大な氷の盾が形成され、光線の直撃を受け止めた。爆音とともに氷が砕けるが、致命傷は防がれた。


「持ったか……!?」


「いま!」


榊真が叫ぶ。彼は冷静に戦況を見極め、仲間の動きに合わせてタイミングを測っていた。


「《地縛陣》、展開!」


ガーディアンの足元に魔法陣が広がり、足を束縛する鎖が出現。動きが鈍った瞬間、野崎拓人がスキル《地裂爆》を放つ。


「沈めぇぇぇっ!!」


地面ごと爆発するような激震が起こり、ガーディアンの下半身が大きく損傷する。


「魔力を蓄えている、また来るわ!」


月城梨花がガーディアンの挙動を察知する。


「《魔力中和》!」


春日井聖が聖光を放ち、ガーディアンの魔力に干渉。チャージ速度を落とすことに成功する。


「あと少しで破壊光線の発動は止まる……!」


羽田悠人が前衛に次々と回復魔法を送り、戦線維持を支える。


「頼りにしてるぜ、ヒーラー!」


嶋田が吠え、再び前へ。香坂美佳の幻影が再び揺らめき、敵の注意を逸らす。


「今度こそ決める!」


佐伯が両手剣に全魔力を注ぎ、《貫通斬撃》を発動。剣が鋭い光を放ち、ガーディアンの胸部装甲を粉砕する。


「次! 連携して削っていけ!」


神谷涼が《瞬歩》で次のガーディアンに接近し、弱点と思しき膝裏へ斬撃を浴びせる。志摩綾音が詠唱を終え、支援魔法《加速陣》を展開。


「速くなるよ、皆!」


身体が軽くなり、仲間たちの攻撃速度が一気に上昇。連撃がガーディアンの装甲を削り取っていく。


「残り14体!」


「押しきるぞ!!」


ガーディアンたちは《鉱物吸収》で一部の装甲を再生し始める。だが、それを待たずに攻め込む冒険者たち。


「再生させない!」


月城梨花の氷魔法が再生中の鉱石を凍結させ、榊の精密な火球がそれを破砕する。


「今のうちに!」


香坂美佳の幻影が再び翻り、羽田の回復が行き渡る。佐伯と嶋田の連撃が、再生を始めた個体に止めを刺す。


___________


──40分後。


重たい空気の中、最後の一体が崩れ落ちる。魔力で作られた心核が砕け、地に転がった。


「……終わったか」


神谷が剣を収め、深く息を吐いた。皆、肩で息をしながらも満足そうな表情を浮かべている。


「この硬さと火力……確かに、過去の冒険者たちがやられたのも無理はないな」


「でも、俺たちは生き残った」


佐伯が大剣を地面に突き刺しながら言った。


「準備、連携、そして信頼。これがなければ、今頃俺たちも……」


「……ここで終わってたな」


誰もが頷いた。


単独で挑む相手ではない。Aランク冒険者が単独で戦闘勝利は無理だろうと判断する。


神谷涼が静かに、しかし力強く言い放つ。


「ここからが本当の地獄だ。だが、俺たちなら超えられる」


__________


──深淵の更なる先へ、国家最強クラスの十人が進む。


彼らの背に、崩れ落ちたガーディアンの瓦礫だけが静かに残されていた。


次回の投稿は明日の21時半にします

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