密会with相野光
二人だけで話したいと言う相野光の計らいによって、信次郎と、相野光はたった二人だけで会話する事になった。
「昨日は何だかすみませんでした。もっと話したかったのに。」
「いえいえ。こうしてまた会えたのですから、感謝しています。」
「貴方がこうして私の目の前にいる事は運命なのでしょう。」
「自分は何も知りません。でも何故ここにいるのかを知る権利はあります。」
「私から言える事は何もありません。その真実を知っているのは貴方だけです。」
「そもそも、貴方に何故会わなければならないのか?よく理解していません。」
「分からない事だらけですね。でも人生はそんなもの。」
「一つだけ知りたい事があります。聞いても良いですか?」
「何でしょう?答えられる範囲でお答えします。」
「結婚はなされていますか?」
「いえ、していません。その予定も全くありません。何とか20代のうちには結婚したいと思ってはいるのですが。」
「意中のお相手もいないのですか?」
「メッキリいませんね。」
「恋少なき乙女なのかもしれませんね?よく分からないですが。」
「余計なお世話かも知れませんが、美人ですよね?」
「そう言っていただけると嬉しい事この上ないのですが。」
「何かお見合いしているみたいですね(笑)。」
「そうですね。でも貴方は先を急ぐのでしょう?」
「私の敵?は時空支配人ですから。貴方に会いに来たのもその為です。」
「これをお持ちになって下さい。」
「これは?」
「御守りです。」
「かたじけない。」
そう言うと信次郎はそっと胸にしまい込んだ。
「出来る事ならまた貴方にお会いしたいです。」
「きっとそれは難しいでしょうが、機会があれば是非。」
「いつか分かりますよ。自分がこうしてここで出会った事の意味が。」
「だと良いのですが。まだまだ波乱がありそうです。」
「ちょんまげの無い男性と言うのも魅力的ですね?」
「いえ、こんなもの未来では当たり前ですよ。」
「未来ですか…。想像もつきませんが行ってみたいですね。」
「生憎、自由自在に時空を越えられないので。」
「信次郎様、また何かあれば相野光をお尋ね下さい。」
「ありがとうございます。さて、そろそろ屋敷に戻らねばなりません。相野様、失礼します。」
こうやって話せた事で信次郎は何故この時代にタイムスリップしたのか、少しだけ分かった気がする。そして、この相野光は間違いなく、時空支配人に指定された人物であった事を確信する。こうして、江戸でのミッションを期限内に達成する事が出来た信次郎は、何か起こると期待して七三吉の屋敷に戻った。