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翌日、信次郎の元へ重要な情報が入ってきた。
それは相野光と同じ名前の者を知っている旨の情報であった。信次郎はその人物の元へ急行した。
村戸忠三と言うその男は、石高いくらもない下級武士族の男であったが、そんな事はどうでも良い。信次郎は聞きたい事全てを忠三にぶつけた。まるで、これまで進まなかったフラストレーションをぶつけるかの様に。
「何から話をすれば良いでしょうか?こんなに沢山人がいて困りますよ。」
「君の知人である相野光についてである。他の話はいらない。」
「私の知る相野光は24、5歳の女性貴族の方でございます。」
「何故にそなたと関係があるのであろうか?」
「私はこう見えて商いもやっております。その時たまたま相野家の目に留まったのであります。」
「たまたま?それは解せぬな?君は始めから相野家に出入りする為にそのつもりで、接触していたのではないか?」
「いえ、本当にたまたまなんですよ。袖振り合うも何かの縁と言う奴です。」
「24、5の女性貴族か…。その相野家にはコンタクトをとれば会えるのか?」
「何ですか?そのコンタクトと言うのは?まぁ、直ぐに会えますけど?」
「徳川家の様な格式の高い貴族では無さそうだな?」
「ええ。貴族の中でも上から下までありましてね。我々武士と一緒です。」
「貧乏な貴族など想像もつかんな?して有名なのか?」
「相野家はこの辺りではかなり有名な家柄ですよ。」
「昔からの付き合いなのか?それともまだ知り合ったばかり?」
「恐らくかれこれ10年以上は経ちますかね。」
「そんなに長い付き合いならば、知らぬ事の方が少ない?」
「付き合いはあっても、そこまで親密ではありませんから。何とも言えません。」
「あまり関係ない話をするが、相野光は美しいのか?」
「聞くしに勝る美貌の持ち主。と言う話です。私も直接お会いした訳ではないので分かり兼ねますが。」
「まぁ、それは良いとしても相野光に会いたいのだが?」
「明日、またここに来て頂ければご案内させて頂きます。
「全ての算段をつけてくれると言うのか?」
「ええ。その代わりお代を頂戴したく申します。」
「それならば、中宇右衛門に相談してくれ。」
「手前共も決して楽な生活をしている訳ではありませんから。」
「明日、きちんと相野光に会えたなら60両を出す。」
「そんなに貰えるんですか?ああ、ありがたい話です。」
「そうか。ありがとう。君のお陰で確証を得られたよ。」
そうは言うものの、信次郎には一つの疑いの念は晴れていない。果たして本当に忠三の知り合いは、探し求めている相野光なのか?それは直接お会いして確かめて話をするしかなかった。大金と時間を費やしているのだ。すみません人違いでしたでは済まされない。