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Love is over the times~愛は時空を越える~  作者: 佐久間五十六


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FREE食堂

 相野光は家庭料理位なら造作もなく作る事が出来る。料理を提供する食堂の様なものなら、彼女自身がやっていけると、申し出ていた。

 

 女手一人でやる事になっても、力と体力には自信があった相野光にとって大の男の腹を満たしてやる事は最高の天職と言っても良い。

 

 その上今はもう戦争は終わっている。海外から内地に引き上げて来た日本人だけではなく、日本に占領政策で来る事になった大量の米兵もいる。


 幸い相野光の住宅は横田基地に近く、信次郎にとって見れば第3のミッションである巣鴨プリズンも近い。まぁ、それはあまり彼女には関係無いが、駐留軍相手の商売なら安心した収入が見込めそうであった。


 それを見込んで開発したフライドポテトやハンバーガーと言ったボリュームのあるメニューを中心にとにかく、安くて腹が一杯になる、そんな食堂を目指していた。勿論、プロデューサーは全て信次郎であった。


 相野光は慣れない洋食を作れる様になれれば良いのである。その為に相野光の住宅を改修して、店舗兼住宅とし、自由な食堂をテーマにした"FREE食堂"と言う店名で飲食事業を起こす事を決めた。


 幸いにして、相野光の自宅は食堂向きの家であった為、ほとんど大きな工事無しで、店の経営が軌道に乗るまで、商売なら安心して出来そうであった。


 オープン後1ヶ月位は様子見かなと楽観視していたが、店が余りにも繁盛するので、毎日バックヤードで必死に相野光のサポートで精一杯になっていた信次郎であった。安くて旨いと評判になり、とにかく戦後の食糧難の時代とは思えず、「FREE食堂」の中だけまだ、戦争をしていたかの様な活気に包まれていた。


 多い時は1000人もの客が訪れ、収容人数30人のFREE食堂をたった二人で回していた。よくやれたなと言うのが本音ではあった。信次郎も自分が時空の流れ者だとは知らないかの様になるくらい店の忙しさに振り回されていた。


 信次郎は、相野光が一人でも店を回せる様に、店の経営や仕入れ、価格設定と言ったものを彼女に伝承した。ある程度の価格上昇により相野光一人でも回せる様になっていた。バンズの仕入れもパティに使う豚肉(牛肉が手に入らない為代用)も、全て信次郎が開拓してきたものだし、店に瓶コーラを50円で置こうと決めたのも信次郎ではあったが、敗戦直後の情勢を逆手に取ったこの駐留軍兵士相手の商売が予想以上に成功したのは、想定外ではあったものの、嬉しい誤算であった。

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