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Love is over the times~愛は時空を越える~  作者: 佐久間五十六


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八方塞がり

 信次郎が詳しい話を相野光から聞く事が出来たのは、信次郎がこの時代に来てから1週間後の頃であった。


 ここはどうやら昭和19年(1944年)8月1日の日本だと言う。まだ第二次世界大戦は終わっておらず、相野光の話では空襲の頻度も日増しに増えていると言う。


 大きな歴史の流れは信次郎が学生時代に学んだものと大差はなかった。ただ、江戸時代では無い事は確実であった。相野光は、自分の家を再建してもらったからと言う訳ではないが、信次郎と同居する事に異論はなかった。ただ、懸念は一つだけあった。


 もし、信次郎の存在が憲兵に見つかれば、信次郎は徴兵されてしまうと言う恐れがあった。隠してもしょうがないので相野光はその事を包み隠さず信次郎に伝えた。すると、信次郎はこう相野光に伝えた。


 「その時はその時です。まぁ、大丈夫でしょう。」


 相野光には何が大丈夫なのかさっぱり分からなかったが、こう言う楽天的な性格が信次郎にはあった。流石に1日中憲兵を恐れて外に出ない訳にもいかない為、相野光に帝国陸軍の制服を買ってもらい、それでカムフラージュをして街場で行動出来る様にした。


 何万何十万の兵隊がいて街の中を変装している事に気付かれる確率の方が死ぬよりも遥かに低い。数日間かけて、探索した結果、ここが東京の下町である事も分かって来た。地名までは分からなかったが、信次郎は初めて来たはずなのに、初めてではない錯覚に陥っていた。


 1944年と言えば第二次世界大戦の終わる丁度1年前である。信次郎の記憶が正しければ、大日本帝国陸海軍は、あちこちで敗退してあちこちで玉砕、特攻、万歳アタックだ!と防御網は既に機能不全に陥っていた。


 そんな状態の時代に自分をタイムスリップさせる時空支配人の魂胆が分かっていなかった。分かっていた事は、食料事情が極めて劣悪であった事位のもので、この時代の真の敵は空腹であった。


 タイムスリップしているとは言え、時間の流れ方は同じだし、何をしていても腹は減る。成人の男女二人が配給だけで暮らして行くのは何とも心もとないものであった。とは言え、何か良い働き口がある訳でもなく、信次郎は緑の陸軍制服でウロチョロするしか他に方法はなかった。


 戦時中と言う事もあり、戸締りは江戸時代のそれとは比べるほどもなく厳重にされていたし、商店なども時間を限って開けている様な有り様であった。


 「信さん?気持ちはわかりますが動けば余計に腹の虫がなきますよ?それに憲兵に見つかれば後々面倒な事になりますよ?」

 「そうだな。どうするかな。困っちまうぜ。せめて仕事の一つや二つありそうだがな…。」

 八方塞がりの信次郎であった。

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