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江戸市中暗中模索

 街を出るとリアルにTVの中の時代劇なのかと、見間違う程の景色が広がっていた。


 信次郎は何をしたら良いのか分からなかったが、とにかく情報収集をする事にした。また七三吉から僅かばかりではあるが、小銭を持たされていた為、有効に活用する事にした。


 この日はあっという間に時が過ぎて行った。まるで大波に飲み込まれる小波の様に。


 その頃七三吉は親友であり、相談相手であった"おその"と言う芸者の元を訪ねていた。おそのは吉原一の売れっ子でありながら、江戸城剣術師範の幼馴染みと言う異色の経歴を持っていた。


 「おーい!おその、いるかい?」

 「はーい。あら、七三吉ぁんじゃない。珍しいわねこんな時間に来るなんて。」

 「ちょっと面白い人物がワシの元に転がり来たもんでな。」

 七三吉は信次郎の事をおそのに面白おかしく話した。そして聞きたい事をまとめて聞いた。江戸城剣術師範とは言え、まだ20代後半の若者であり、信次郎と年の差は大した程無い。人に言いたくなるのを止めるなと言う方が無理な注文であった。


 「その男の子は格好良いのかい?」

 「うーん。普通かな。おそのは面食いだからな。」

 信次郎は流石にガチのちょんまげをやる勇気はなかったので、少し長い髪を束ねて結んでいた。見るもの見るもの全てが新鮮で、正直言って自分がタイムスリップして現代から来た事等、頭の隅に追いやられていた。修学旅行を楽しむ様な感覚で情報収集をしていた。


 刀など使った事は無かったが、こんなに重い物を身に付けて出掛けなければならない武士は苦労したのであろうと肌身で感じた。異世界に転がり込んできたのは良いが、自殺以外では戻れそうな有力な情報は得られなかった。


 一日中江戸の町を歩き回り様々な人々に話を聞いたが、得たものは、疲労と何の事はない世間話をメモった紙一枚だけだった。歩き回っている間はそれなりに楽しかったが、何も有力な情報を得られなかった無力感の方が強くなっていた。信次郎は途方に暮れるまま帰路についた。


 「おー!帰ったか信次郎。でどうだった?その様子じゃあ収穫ゼロっぽいな。まぁ疲れただろ?風呂沸いてるぜ!まぁ気にすんなよ。明日もあるしさ。」

 「ありがとうございます。何と言うかあっという間に一日が過ぎて行きました。お風呂頂戴します。」

 「おー!そうそう。信次郎、君に(ふみ)が届いておった様だぞ?ここ置いておくからな!」


 七三吉の屋敷に戻った信次郎を待ち受けていたのは、この世界に信次郎を送った人物からの意図不明の手紙であった。

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