日光東照宮へ
信次郎は砂時計のありかを拓伸に聞いた。
「そのお金と砂時計は今どちらに?」
「誰とも分からぬ者から貰ったあぶく銭と砂時計だからな。大切にしまってあるよ。」
すると、拓伸は宝物を見せるかの様にして、信次郎に見せた。
「このお金は本物なんですか?」
「一応鑑定して貰ったからな。間違いなく本物の100両だよ。」
「この砂時計を私に譲ってくれませんか?」
「お金も持っていきなよ?」
「いえ、愛はお金で買えませんから。それに私には意味の無いお金ですし。」
「実を言うとな、その時空支配人なる人物は信次郎と言う者が来たら、この砂時計を渡すように伝言して行ったんだよ。」
「じゃあこのお金は時空支配人からの謝礼金と言う事ですね?」
「まぁ、そうとも言えるが…。」
「私の忘れ物はこの砂時計だった訳ですね?」
「事情はよく存ぜぬが、そんなもので良いなら持っていきなさい。」
「ありがとうございます。」
信次郎は砂時計だけを受け取り、七三吉の屋敷へ戻った。
「おお、信次郎殿ちょうど良い所に。お主に文が届いた。」
七三吉は信次郎に文を渡した。差出人は時空支配人となっていた。そして、そこにはその砂時計を持って日光東照宮に向かえと記してあった。七三吉はこう言った。
「信次郎殿、きっとそこにはあなたの次のステージがあるはず。」
信次郎は直ぐに荷物をまとめた。大した荷物は無かったが、自分の衣類や刀位持っていないと様にならない。刀は備前長船長光を七三吉が一ふり貸してくれた。
「もう行くのか?」
「ああ、どうやら私は次のステージに進む時が来た様だ。」
「寂しくなるな。達者でな。」
「七三吉?世話になったな。」
七三吉と信次郎はガッチリ握手をした。さて、江戸から日光東照宮まではかなり距離がある。信次郎は歩いて日光東照宮を目指す様だが、道中スムーズに行けそうな気がしなかった。それでもこれ以上七三吉の世話になるわけにもいかないと言うプライドがあった為、使えぬ備前長船長光を腰に差して仕方無しに出発した。刀が使えないなどで武士を語ろうなど片腹痛いと言われそうだが、何かあればそれまでと言う気持ちと覚悟で、信次郎は日光東照宮へ向かった。




