タキシードを着た洋人
久しぶりに江戸の町に出てみる事にした。息の詰まる様な室内よりもよっぽど解放的で気分転換には最適であった。信次郎は思った。
「やり残した事は意外に近くにあるのかも知れない。」
それは理屈など分からない直感に近いものがあった。そこで、足を運んだのが相野光の元であった。自分の遥か遠い先祖に聞きたい事は無いし、どう考えても名前を指定されている相野光の方が重要なキーパーソンだと信次郎は確信していた。
「ご免下さい。」
「あれ?信次郎殿?」
「ちと確認したい事があってな。」
「あら、そうでしたか。」
相野光は自分の屋敷に信次郎を上げた。別に自分の家では無かったが、客人を通す事位娘の彼女にも出来た。
「ああ、御構い無く。」
相野光は信次郎に茶を入れてくれた。
「して、確認したい事とは何でしょうか?」
「最近、おかしな出来事はございませんでしたか?」
「幅の広い質問ですが、見に覚えはありません。」
「そうですか。どんなに些細な事でもありませんか?」
「そう言えば、タキシードっちゅう服に身を包んだ洋人が小包を持って来ていましたね。御父様宛でしたけれど…。」
「その人物が来たのはいつ頃か分かりますか?」
「確か、信次郎殿に出会う二日前位だったかと。」
「御父様は今何処に?」
「屋敷の方にいるかと。」
信次郎は急いで200メートル程離れた相野光の父拓伸がいる屋敷に向かった。タキシードに身を包んだ洋人と言うのが妙に引っ掛かった。鎖国真っ只中のこの時代の日本で洋人が平気で町を闊歩出来るのもおかしいし、何よりも自分の来る直前(タイムラグは二日程あるが。)に相野家を訪れている事が、偶然にしては出来過ぎていると思った。相野拓伸は、江戸の大地主で武士ではなかったが、長年大地主として町人らを一手にまとめる実力のある地域の有力者であった。
「入れ。」
「失礼します。私は…。」
信次郎は簡単な自己紹介をして早速本題に入った。
「タキシードを来た洋人?あぁ、いたね。名前は何と行ったかのう?時を支配する人とか申しておったな。」
「それは時空支配人の事では無いですか?」
「あーあ!それそれ。何だか胡散臭げだったのを覚えているよ。」
「で、小包の中には何が入っていましたか?」
「100両もの大金と砂時計が入っていたよ。私には意味不明だったが返しようも無いし、困っていたんだ。」
「なるほど。」
信次郎にはピンと来る何かがあった。




