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午前6時半

 ランが作ってきてくれたサンドイッチは野菜・ハム・辛子マヨネーズを普通の食パンで挟んだもので、シンプルながらとても食べやすく、美味しい。

 シャキシャキとしたレタスとキュウリ、綺麗に輪切りされていてみずみずしさが失われていないトマト、ハムの軽い塩気が全体の調和を保ち、最後にマヨのコクによって深みが増し、ピリリと辛子が引き締める。


 恐らくソウが作った場合、ここまでのものはできないであろう。

 レタスとキュウリの水切りをめんどくさがってパンをべちゃべちゃにしてしまうだろうし、トマトを切ろうとしても潰してしまうだろう。

 ハムを剥がそうとしたら千切れてしまうし、辛子の分量を間違えて鼻にツンと沁みる辛子マヨネーズを作ってしまう。


 悔しいが、認めたくないものだが、ランの料理は完璧であった。

 いや、ランは昔からすべてのことをそつなく完璧にこなしていた。


 学校の成績は常に上位。

 勉強をしている素振りは全くといって見て取れないのに、テストではほとんどの教科で満点あるいはそれに近い点数を収めている。

 運動神経も抜群だ。

 なんでも、体育の時間でのランの活躍は凄まじいものらしい。

 男子と女子で違う内容を教わるため、ソウはその活躍を直接は見たことはない。

 しかし、部活に所属こそしていないが、ランが何度も勧誘を受けているのを入学して1年が経った今でもよく見かける。

 人付き合いも、生活習慣も、ソウが好きなゲームをとっても彼女はすべてのことを完璧にこなしていた。

 そして当然──()()()()()()()()()も。


「ねぇソウ!()()()()()()だよ!」

「いよいよ、って。今日なんかあったか?」

 ()()()()()()()を、ソウは無意識のうちにしていた。

 本当は気づいていたし、ソウも今日この日をずっと心待ちにしていた。

 何度もカレンダーを確認しては期待に胸を膨らませていたし、昨晩は楽しみでよく寝付けなかった。

 だが、彼はなぜか目の前のこの完璧な人間を前にしたら正直な気持ちになれなかった。

「なんか、って。()()()()()()()に決まってるじゃん!」

 輝くような笑顔をしたランに、ソウの心はさらに陰りが募っていった。

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