午前6時
「ソウ、起きて!学校行こ!」
隣の部屋にまで響き渡るほどの声量でランは幼馴染のソウに呼びかける。
ベッドの主は一瞬ビクッと身体を痙攣させたが、いまだ夢心地なのか目をつぶったままでいた。
──なんか変な声が聞こえた気がするが多分夢だ、きっと。そうさ夢ならこのまま……
ピシャッ。
その瞬間ソウの視界から──何もかもが消えてしまった。
いや、もともと目をつぶっていたのだから視界には何もなかったが、つい先ほどまでは目を開いているとき以上のものを脳みそが提供してくれていたのだ。
嗚呼、昨日SNSで見たスイーツ、見目麗しいアニメの美少女たち、かわいいワンちゃん猫ちゃん。
そこにないが、ここにある。
この暗闇はソウにとっては理想を無限大に広げられる高次元サンドボックスゲームであったのだ
が、今のソウの頭にはただ一文字。
白、それだけが暗闇を侵食している。
な なにーーーっ!!
今まで目に映っていたスイーツ、美少女たち、ワンちゃん猫ちゃんは?
ソウは暗闇をもう一度手に入れようと顔を覆うために、暑苦しくて半身だけ掛けていたタオルケットに手を伸ばした
──が、ただ空をつかむのみであった。
先ほどから何が起きているのかさっぱりわからない……!
今、俺に何が襲い掛かっている……!?
クソッ!寝ぼけた頭で考えていても仕方ないッ!
仕方ないからいったん腕で目を覆ってもっかい寝よ。
ソウは腕を顔の付近まで持っていった──瞬間
「ほら!早く顔洗って歯磨いて!ご飯ならサンドイッチとコーヒー持ってきたから向かう途中に食べよ!ハイ!れっつご~!!」
ソウは信じられないほどの力で引っ張られてベッドから離された。
いや、離されたのはベッドだけではない。
嗚呼、スイーツ、美少女たち、ワンちゃんねk