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プロローグ
「ここは、どこ?」
森の中、一人呆然と立ちすくむ少女は呟く。
鼻に満ちる青臭い草木の香り、とめどなく耳へ届く鳥の鳴き声。
辺りを見渡しても目に入るのは濃淡さまざまな緑色とじめついた茶色だけである。
「うーん、空気がおいしい。なんだか心が洗わ……じゃない一体どこに飛んじゃったの!?」
思わず空に向かって叫んでみたものの、虚しくやまびこが返ってくるばかりである。
頬をつねってみるが、間違いなく現実であると認めるしかないようだ。
「落ち着きなさいラン……。不測の事態にはクールに、ついでにビューティーに……」
ランはこめかみに手を当て、目の前の現実を拒むように目を強く瞑る。
学校の先生がよくこんな感じで頭を悩ませてたのを真似する。原因は大抵私かソウだったなぁ。
「さっきまで、ソウと一緒だったのにいきなりこんなところに飛ばされたってことは……魔術?」
そうだ、私は魔術を使ったんだ。
初めて聞いた魔術、『ランダム』を──