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お昼のピークがすみ時刻は午後三時、ガリタ食堂は閉店した。片付け前に大将さんとニックは椅子で休み、女将さんは今日の売り上げの計算をしている。
しばらくして売上帳を閉じた、女将さんは。
「ごくろうさま。なんと、今日は生姜焼きに続く売上がでたよ」
「まじか、すごいな。親父、お袋、ルーチェ、今日もお疲れさま!」
「お疲れさん。お母さん、腰が痛いから湿布貼ってくれ!」
「はいはい、お父さん、いま貼りますね」
大将さんが厨房から出てきて椅子に寝転がり、女将さんが湿布を張っている。
お二人はいつも仲がいい。私もいつか結婚できたら大将さんと女将さんのような、夫婦になりたいと思っている。
「お疲れ様です、お茶がはいりました。大将さん、女将さん、ニックさん休んでください」
「ありがとう、ルーチェちゃん」
「ありがとうよ」
「サンキュ」
みんなにお茶をいれて私も座る。今日もよく働いたから足がパンパン。今朝女将さんとむいたジャガイモはコロッケとポテトサラダになり完売した。
「はい、湿布終わったよ。でもさ、ルーチェちゃんが教えてくれたコロッケは凄い人気だね」
働きはじめて一ヶ月。コンロを借りて夕飯の料理していた。そのとき作っていたのはチャーハンだった。
『「その料理を食べてみたいね」』
と言われて、食べてもらったのが始まり。
女将さんに「今日はなにを作るんだい?」と聞かれて、コロッケ、生姜焼き、唐揚げ、トンカツ、オムライス、ハンバーグなど、前世でよく作っていた家庭料理を披露した。
『「ルーチェちゃんの作る料理は、どれも美味しいね」』
大将さんとニックにも作り、二人が気に入った料理が店に並ぶようになった。
みんなが明日の定食の料理を決めている間に、私は厨房をかりて、天日干ししていたジャガイモの皮を揚げさせてもらうことにした。
「コンロ借ります。ジャガイモの皮、女将さんの分も揚げちゃいますね」
「ありがとう、ルーチェちゃん」
店で使われているのは魔導式コンロといって、火を使わず火の魔石を使用している。
このコンロは屋敷にあった魔力がないと使えないコンロとは違い、魔力のない私でも使えるコンロなんだ。
だから、つけるのは簡単。コンロについている赤い魔石にふれると、ポッと火がつく仕組み。
薪で火を起こさず使えるから。このコンロは人気があって、ガリタ食堂以外にも港町の飲食店のほとんどが使う魔導式コンロ。
それを作ったのは港町にある「魔法屋」という魔導具屋の若い店主。いちど店に行ってみたいんだけど、長い時間外に出るのが怖くてまだ実現していない。
油があったまってきたら、天日干ししたジャガイモの皮を一気にいれて、揚がったら塩をふる。
「いい匂い。味見しよっと、んんっ、サックサクておいしい」
「美味そう! ルーチェ、俺にもすこしくれ!」
「いいよ。いまお皿にだすね」
揚げたばかりの、ジャガイモのチップスを皿にだした。