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 婚約破棄から、半年の月日がたった。


 私はベルテ大陸の中央にある王都から、かなり離れた西の端。モール港が見渡せる丘の上建つ、おじさんとおばさんのカリダ食堂で住み込みで働いている。


 早朝六時ごろに目覚め海側の窓を開け、朝日に照らされキラキラと光るモール海を見渡していると。窓近くの木の枝にバサバサと羽音を鳴らして、一匹の梟が近くの枝に止まる。


「ホー、ホー、ホー」

「あっ、福ちゃん、おはよう」


 ここに住んでからのお友達――福ちゃん。

 彼はモフモフな胸にエメラルドのネックレスをつける「森の物知り博士」と呼ばれる梟だ。


 福ちゃんは毎朝どこから飛んできて、窓を開けた私に挨拶をしてくれる。彼はおしゃべりが好きで、昨日なんて私が太ったとか言いだして福ちゃんに、違うと反論したくらいだ。


 そんな福ちゃんは挨拶の後、私に文句を言いだす。


「ホホー」

「今朝は昨日よりも、お寝坊ですって?」


 福ちゃんは一分でも窓を開けるのが遅れると、口うるさく文句を言うのだ。私はその訳を言うために急いでベッドに戻り、古本屋で見つけた本を福ちゃんに見せる。


「起きるのが遅れたのは、この本のせいなの。この本が面白くって寝坊しちゃった、ごめんね」


「ホー」 


 へーって、福ちゃんの興味のない表情をわたしに見せた。この本の内容は魔法使いとお姫様の熱烈な恋のお話。

 

 二人の濃厚なラブシーンに胸をときめかせて。少しだけ読もうとしたのだけど面白くって、結局はまるまる一冊読んでしまった。


 だけど、福ちゃんには興味がないらしく。


「ホーホホー」


「え、もう、朝ご飯の時間だから帰る? わかった、気をつけて帰ってね。また明日!」


「ホー!」


 近くの枝から飛び立ち、翼を広げて飛んでいく福ちゃんを見送り。私は真っ白なシャツと、ネクタイ、黒いタイトスカート。お店のロゴ入りエプロンを着けて、食堂にいく準備を始めた。

 

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