表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/57

40

「それじゃ、料理を始めます。ラエルさん、キッチンをお借りしますね」


「どうぞ、好きに使って」


 私とラエルさんのやりとりに。


「なあ、いつの間にルーはラエルのこと、名前で呼んでいるんだ?」


 先輩が私を眉を細めて見た。えっ、怒ってる? 先輩は気にしないと思っていたから驚いた。


「だって、いつまでも店の名前や先輩の弟さんじゃ、変かなーって思って、買い物にでた時から呼ばせてもらっているけど……」


「ふーん、弟は名前よびで、俺はまだ先輩よびかよ……ふーん。ルー、キッチンはこっちだぞ」


「あ、シエル先輩、待って」


 先輩はムッとして店の奥に入っていく、その後を追った。中に入ると一人には十分な、水色のタイル張りの可愛いキッチンと、二人がけテーブルが置いてあった。


「わぁ、普通のキッチンだ」

「そんなの、当たり前だろ?」

 

 先輩とラエルさんは魔法使いだから、変な壺とか、キッチン道具が浮いてると思っていた。紅茶を入れるとき、先輩はカップ、ポットを浮かしたりするから。


「クク、ご期待に添えなくて悪いな。しかし、ルーは魔法使いに夢を見過ぎだ」


「だって、夢だって見るし、憧れる」


 魔法が使えないからこそなおさらだ。私が暗い顔してたのか、ポンポンと先輩にあやされる。


「無理なのはわかってるよ。さあ、料理を始めましょう」


 持ってきたエプロンを付け手を洗う。その横で先輩は黒いローブを脱ぎ、椅子にかけて中に着てたシャツの袖をまくり手を洗った。

 

「先輩も手伝ってくれるの?」

「あぁ、なにからやればいい?」

 

 さきにお米をお鍋で炊いて、チキンライスに入れる野菜と鶏肉を細かく切る。私はお米を炊くから、先輩には野菜と鶏肉をお願いした。


 手際よく、まな板の上で野菜が切られていく、それを眺めらながら。

 

「でも、先輩が外で熟睡するなんて珍しいね」


 ベッドではじっくりみたけど。学園のとき一、二回くらいしか、熟睡をする先輩を見たことがなかった……私はよく見られたけど。  


「ん? ここに来る前にさ……面倒くさい、奴らに会って疲れたからだな……」


「面倒な人? それは大変だったね、今日はたくさん食べてゆっくりしょう」


「ははっ、そうだな」


 ――笑った顔が可愛い。


 先輩と横に並んでたわいもない会話をして、いっしょに料理ができて嬉しい。最近、シエル先輩と過ごす日が増えて――幸せだ。



 

「ルー、野菜と鶏肉を切ったけど、次はどうするんだ?」


「えーっと、次はフライパンで切った具材をバターで炒めて」


「わかった」


 ご飯はもうすぐ炊ける。炊けたら、炒めた野菜と鶏肉でチキンライスを作って。別のフライパンでふわとろ卵を焼き、包んでオムライスの出来上がり。サラダはできたものを買ったし、スープはワカメの粉末スープ……給料日前でお金が足らなかった。


 私が言い出したことだから、自分が買える範囲で準備した。炊けて蒸らしておいたご飯の蓋をあける。


 ――甘く、いい匂いで固さもいいわ。


「いい感じに、ご飯が炊けた」

「鍋に焦げつかないなんて、うまく炊くな」


「フフ、ガリタ食堂で美味しく炊く練習をしたもの。先輩が炒めた野菜と鶏肉にバターとケチャップ、塩コショウを入れて炒め合わせたところに、炊きたてのご飯をいれて混ぜ合わせれば――チキンライスの完成だよ」


 覚えている、自分流でチキンライスをつくる。


「おお、これだけでも美味そうだ」

「おいしいよ、味見、味見。ん、美味しい」


 先輩もチキンライスを味見して"うまい!"とうなずいた。


「別のフライパンで溶き卵を流して、半熟になったら、使ったチキンライスを乗せて巻くの」


 フライパンで半熟卵を作り、1人分のチキンライスを乗せて。フライパンの淵でよせて、お皿を持ちながらくるっと回して、ふわとろのオムライスがお皿に乗った。


 あとはケチャップをかけて「できあがり!」だと先輩に見せた。


「はい、これがオムライスです」


「すげぇ、美味しそう。早く食べたいな」


「そうだね、みんなの分も作っちゃおう」


 スープ、サラダを取り分けて出来上がった、

 オムライスをテーブルに並べた。


「これで、よし!」


「ラエル、子犬。オムライスが出来たぞ!」


 お店は休憩中にしてみんなでの昼食。子犬ちゃんはさっき食べたからと小さなオムライスにしたら、案の定足りなくて、ラエルさんのオムライスに突撃した。


「げっ、子犬!」


「子犬ちゃん!」


「キャン、キャン」


 ぺろっとラエルさんのを半分食べて、それでも足らないと、私と先輩の皿に狙いをさだめた。


「俺のはやらないぞ」

「私、だって嫌よ」


 シエル先輩と、私は食べかけを待ったまま立ち上がる、その下で欲しいと鳴いた。ラエルさんのオムライスは無残で、子犬ちゃんと言い合いしていた。


 仕方がないと私と先輩のを、新しいお皿に少しおすそわけした。


「美味しいな、オムライス」

「うん、美味しいね」


「ほんとだ、美味しい」

 

 食べ終わって、ケチャップまみれの子犬ちゃんは、同じくケチャップまみれのラエルさんに抱えられて、一緒にお風呂中。


 お風呂場で怒られながら「嫌だ、嫌だ」と鳴いている。片付けを終えてテーブルに着くと、シエル先輩が紅茶を入れてくれた。


「まったく……あいつは自業自得だな。はい、紅茶」

 

「ありがとう。でも、子犬ちゃんとラエルさんのケチャップの匂い取れるかな?」

 

「知らん。子犬は自分で付けたんだ、我慢するしかないな。ラエルはまあ平気だろう」


「それなら安心だね」

「……なぁ、ルー」


 なんですか? と先輩を見ると、何故か? 先輩は頬を少し赤くさせていた。


「頼む、一度でもいい。俺のことをシエルって呼んでくれ」

 

「えっ……」


 シエル先輩の真剣な、赤い瞳が私をみつめている。


「ルー、呼んで」

「…………シ、シエルさん」


 うわっ、一気に耳が頬が熱く"ぼっ"と体に火が付いた感じがした。シエル先輩と呼ぶのに慣れてるから、名前を呼ぶだけで照れる。


 ラエルさんを呼ぶときとは違う。


「いいな。そう、呼んでくれると嬉しい」


 先輩はしんそこ嬉しそうに瞳を細めた。


「もう、一回呼んで」

「……シエルさん」


 先輩の喜ぶ顔をみていたら、私まで嬉しくなっちゃった。まだ呼ぶのは照れてしまうけど、これからは先輩のことをシエルさんと呼ぼう。


「そうだ、親子丼、オムライスの他にも卵料理ってあるのか?」


「ありますよ。親子丼は鳥肉ですが、揚げたカツを卵で閉じるカツ丼、ハンバーグのタネの中にゆで卵を入れて揚げるスコッチエッグとか、まだ、まだ卵料理はたくさんあります」


「カツ丼、スコッチエッグか――どれも美味そうだな。でも、この前に食べた親子丼がもう一度食べたい」  


「だったら……」


作りますよ。と言う前に、ラエルさんと子犬ちゃんがお風呂から上がってきて。


「親子丼て何?」

「キュン?」


「親子丼とは……卵と鶏肉、玉ねぎを使った料理で」


 知らない2人に料理の説明をする。おいしそう、食べてみたい、と言ったので。次の、お休みの日に作りにくることになり、材料費は先輩がだすといった。




「そろそろ、外が暗くなってきたな。ルーは明日、仕事だろ?」

「はい、遅くなってきたので帰ります」


 シエル先輩はラエルさんに用事があると残り、子犬ちゃんも魔法屋さんに残るといった。


「またね、おやすみさい」


「ルー、おやすみ」

「おやすみなさい、ルーチェさん」

「キューン」


 私はみんなに手を振り、魔法の扉を閉めて自分の部屋に戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ