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 長い髪を器用にポニーテールにして、準備が終わった先輩に話しかけた。


「シエル先輩、話し方も気を付けてね」


「わかっている」


「兄貴、ルーチェさん店をあける時間だから戻るね。そうだ、念話で話せる様に兄貴には髪飾りで、ルーチェさんにはこの石を置いていくよ」


 弟さんに貰ったのは青く輝く石。これがあれば仕事中の先輩と念話ができる。念話って、声を出さなくても相手と話せると。昔、先輩に聞いたことがあった。


「じゃ、仕事が終わったら教えてね」


「キュン」


 弟さんは子犬ちゃんを連れて魔法屋さんに戻って行った。扉が閉まり2人だけが残る部屋……。

 私は貰った石を持ちながら、心の中で話せばいいのかな? と先輩に話しかけてみる。


〈ねぇ先輩、聞こえる?〉


〈ああ、聞こえているよ。俺も行ってくる、何かあったらルーに話しかけるから……仕事が終わるまではなるべく寝ないでほしい〉


〈はい、寝ません。フフ、ずーっと先輩に話けちゃおっかな〉


 少し意地悪くいうと、ベッドの上にいる私に。


「そうしてくれると嬉しい。じゃー、ハムスターちゃん、私、仕事にいってくるね」


 ……うひゃ、私の話し方にそっくり。そして、先輩の頬がうっすら赤い。 


「ありがとう、シエル先輩」


 ルー、大船に乗ったつもりであとはまかせておけと、頭を撫でて部屋を出ていった。そのあと、シエル先輩は女将さんと仕込みをなんなく終わらせて、今はみんなと朝食を食べているようだ。

 


 ――その朝食のメニューを聞いて私は拗ねた。

 

 

〈ずるい、ずるい、朝食がハンバーガーだなんて!〉


〈これ、始めて食べだけど、かなり美味いぞ。拗ねるなって、ルーにはくるみパンとチョコパンを置いてったろ? それで、今日は我慢してくれ〉


〈我慢はするけど……羨ましい〉


 ふわふわなバンス、濃厚な店オリジナルソースが掛かる、肉厚の肉汁たっぷりの手捏ねハンバーグ。自家製のピクルス、シャキシャキレタス、みずみずしいサラダ。やっぱり、羨ましいとベッドの上で暴れた。


〈こんど、一緒に魔法屋で作ろう〉

〈魔法屋さんで? 作る〉


 しばらく会話をしていると、先輩のため息が聞こえて。


〈なんだ? こいつ。ルーとの距離が近い……いつもこんな感じなのか? 頬にソースがついてるとか、今日の髪飾りが可愛いとか言って――俺の髪に触ってきやがった〉


 ん、頬? 髪? いまのは、シエル先輩の独り言? 


〈どうしたの? 先輩、ニックさんに何かされた?〉

 

〈あぁ? ……あ、そうか、平気だよ〉

 

 おっと、店が開店する。と言って、先輩との念話はいったん終わった。

  

 今日のガリタ食堂のメニューは。プレートにおろしハンバーグとデミグラスソースのハンバーグが2個、野菜、焼きたてのパンと卵のスープ。自分でお好みのハンバーガーが作れるセットだろう。


 コロッケ、生姜焼きの次に人気だ。

 

〈はぁ、いつも見ていたけど、凄い客だな〉


〈……見ていた?〉


〈あ、いやっ、店の外にまで、ながい行列ができているぞ……〉


 先輩の驚きの声が聞こえてきた。昼食の時間になり、お客さんがどっと増えたのだろう。

 

〈そうだよ、すごいお客さんでしょう〉


〈あぁ、すごい客だ。メニューが一品だから助かっているぞ〉


 それ、わかる。私がくる前は日替わりと、ほかのメニューもあった。日替わりのでる量が増えて、他の料理が間に合わなくなるからと。大将さんが日替わり一品にした。


〈お冷、お冷〉

〈これ、どの客だった?〉

〈……疲れる〉


 たまに聞こえてくる、シエル先輩の独り言を楽しみ、お昼の時間が過ぎたころ。


〈ルー、今日の日替わりが完売だって、仕事はこれで終わったのか?〉


〈うん、あとは店の後片付けをして終わりだよ。先輩お疲れ様!〉


 あぁ、疲れた……と、話す。先輩の声が遠くに聞こえた、店の仕事が終わりを迎えて私の気が抜けて……

 

〈スースー、むにゃむにゃ〉


〈ルー? これって寝息か? クク、寝ちまったのか……おやすみ、ルー〉


 シエル先輩との念話が遠くに聞こえる、でも先輩は怒らず、起こすことはしなかった。

 

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