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 今朝はコツコツ、コツコツと窓をこつく音で目が覚める。この音は福ちゃんだな、今日はいつもより来る時間が早くない。


「…………んん、ん?」


 それに小説、漫画などでは私の姿が元に戻り、先輩にくっ付いて寝ているという、お決まりのパターンを密かに期待したのに。この大きさは元に戻らずハムスターのままみたいだ。


 コツコツ、コツコツ起きろと言うばかりに、窓をこつく福ちゃん――その音に先輩の眉間にシワがよる。


「ウルラ、うるさい、ぞ……」


「ウルラ?」


 私の声に「あっ」と叫び、パチリと目が開き先輩の赤い瞳が私を捉えた。


「そうだ、ルーの部屋だった……おはよう、ルー」


「おはようございます、シエル先輩。起きたところ悪いのだけど、海側の窓まで連れていってください」


 コツコツコツ、コツ


 ほら、起きないと福ちゃんはいつまでも窓をこつく。先輩も海側の窓に映る影をみて頷き、私を肩に乗せて、海側の窓まで連れていってもらい、開けた窓の窓枠に飛び乗った。


「福ちゃん、おはよう」


「ホーホー」


「今日はやけに小さいですって? そりゃ、ハムスターだもの、小さいよ。福ちゃんあのね、私、魔法にかかっちゃったみたいなの」


「ホーホー」


「ええ? 小さくて美味しそうだって、食べないでよ」


「ホー?」


「なになに? 後ろにいる男は私の彼氏かって? えーっと、先輩が彼氏?」


 答えられずに慌ててると、先輩が私をやさしく掴み。


「そうだ、福」


 と、窓を閉めてしまった。


「あ、シエル先輩、まだ挨拶の途中だよ」


「フクロウに人間の言葉が通じるか……よ。朝飯にするぞ」


「そうだけど、福ちゃんは普通のふくろうとは違うの」


「ふくろうはフクロウだ!」


 いくら違うって、反論しても聞く耳を持ってくれない。じゃーなぜ? 先輩は言葉が通じないと言ったのに、福ちゃんに彼氏だと言ったのよ! と、心の中で叫び、頬だけ膨らませた。


「どうした?」

「どうもしない」


「ほらっ、くるみパン」


「ありがとう……あ、」


 そうだ、いま朝の何時? 時計を見ると、五時を少し回ったところ。急いで支度して、もう少ししたら、したら下に降りないと。


 ここで"ハッ"と気付く。


 ハムスターの私に店の仕込みの手伝いと、仕事ができる? せいぜいできでも「女将さん、ひまわりの種を剥きました」……だなんて、無理がありすぎる。


「先輩、シエル先輩、今日は仕事の日だよ。お店に仕込みに行かなくちゃ」


 そう伝えると、シエル先輩の動きが止まった。

 どうやら、先輩も忘れていたみたいだ。

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