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 足元にいる子犬を見て悩んでいる。


 どうしよう、子犬を港街から連れてきてしまった。この子はポメラニアン、トイプードル、チワワ……ポメラニアンに似ているかな? 黒もこで可愛い子犬。


 この子は首輪をしていないみたいだけど、毛並みがいいから、飼い主とはぐれて寂しがっているかも。


「いきなり連れてきて、ごめんね、子犬ちゃん」


「キュ、キュン」


 だけど、子犬は寂しがっていないのか元気よく鳴き。クンクン鼻を鳴らして小さな足で玄関をあがり、廊下をトテトテ歩き。キッチン、お風呂とトイレを通り抜け、おくの私の部屋を探索しはじめた。


「あ、待って、子犬ちゃん」


 靴を脱いで子犬の後を追うと。

 子犬は楽しげに部屋を歩きまわり、ベッドをみつけると、それに飛び乗りゴロンと寝そべる。


 うっ、かわいい。


「その、ベッドが気に入ったの?」 

「キュン」


 気に入ったと鳴く子犬。

 やはり、この子は人馴れしている……港街に飼い主がいるのかも。今日はもう遅いから、明日のお昼過ぎに時間をもらって、港街に飼い主を探しにいかなくては。


 そう決めて、ベットでくつろぐ子犬に声をかけた。


「洗濯物をいれてくるね」

「キュン」


 洗濯カゴを持ち、店の裏側に干した洗濯物をとりこみに向かった。ここ、ガリタ食堂は港街から離れているからか、商店街で聞こえた"キーン'という音はきえた。


 もちろん、先輩にもらった石も透明に戻っているーーガリタ食堂の近くにはいないみたい。


『「ルー、カロール殿下が近くにきたら、この魔晶石がピンク色に反応する」』


 いくら探しているからといって、執務ある多忙なカロール殿下が王城からは出られないはず。さっき、王都からかなり離れた港に殿下がいたのは。視察がえり? 新婚旅行の下見? ……かもしれない。


 またまた、近くを通ったのかも。


 でも、私に帰るようにいってきた頭の中に聞こえた声は、なんだったのかな?


 先輩とは違う声だった……

 




 店裏で洗濯物を取り込んでいると、どこからか羽の音が聞こえて空を見上げた。


「ホーホー」


「あ、福ちゃん、こんばんは」


「ホホー」


 夕焼けに染まる空に福ちゃんが飛んでいた。この時間帯に福ちゃんと会うのは初めてで、彼は空からまい降り私の肩にふわりと止まる。


 肩にだけど、じかに触れることははじめてで。


「ふ、福ちゃん? え? 福ちゃんは見た目よりも軽いんだね」


「ホッホー、ホッホー」

「えぇ、私は丸くなった?」


「ホーホホー」


「ううっ、福ちゃんは見抜いているのね。初めてあった頃から……5キロも太ったことを」


「ホーホー」


「ほ、頬がふっくらした? もう、それ気にしてるのに……福ちゃんの意地悪!」


「ホホー」


「え、まえは痩せ過ぎだった? これくらいがいい? フフッ、ありがとう福ちゃん」


 彼は洗濯物を全部とりこむのを見届けると、私の肩から羽を広げて空高く飛び上がる。


「ホー」


「もう、帰るの? 気をつけてね、また明日」


 福ちゃんも"また明日"だと言っているのか、頭の上をくるりと一周飛んで、何処かに飛び去っていった。

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