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 ガリタ食堂の定休の日はお寝坊の日と決めている。お友達の福ちゃんもわかっているはずなのだけど。


 今日は、いつもの休日よりも遅くに目覚めた。コツ、コツコツ……コツコツ、コツコツ、コツコツ……起きろと言わんばかりに窓枠を小突く福ちゃんがいる。


(お寝坊すると、あいかわらず激しいなぁ……福ちゃん)


「ホー、ホ?」


 私が起きていることがわかったのか、コツコツ、コツコツ、コツコツ……激しくこずく。


「福ちゃん! 起きてる、起きているから!」


 私はベッドから飛び起きて窓を開けた。


「ホホーホホ、ホーホー!」


 窓を開けて、いきなり羽を広げた福ちゃん。

 

「あはは……ごめん、いつもよりお寝坊だったね」


 といえば。そうだと言わんばかりに体全体を使って、コクリ、コクリと頷いた。なんて、私のお友達は時間に手厳しいの。


「ホーホー」


「わかってる。おはよう福ちゃん」


「ホー」


「え、起こしといて、もう帰るの?」


 福ちゃんは満足したのか、羽を広げ飛んでいってしまう。その飛んでいく福ちゃんの背中を見送った。


「福ちゃん、また明日ね!」




 グウッ~……私のお腹は元気だ。

 さてと、溜まった洗濯をおわらせて、港町にお昼ご飯を食べに行こうかな?


「さいきん、港町にハンバーガー店が新しくオープンしたんだよね。ニックさんが、あの店のチーズバーガーはぜったい、食べた方がいいっていっていたわ」


 なんでもチーズが濃厚なんだって。


 洗濯物をカゴに集めて裏庭におり。井戸の水を使い、石鹸と洗濯板で洗濯を終わらせ干す。ここで、私に風魔法が使えたらすぐに洗濯物を乾かせるのに……カゴを片手に、風になびく洗濯物をながめた。


「これで、よし!」


 部屋にもどり、お気に入りのワンピースに着替えて、髪飾りを付け港街へと繰りだす。


 高台に建つ、ガリタ定食から港街に着いたのはちょうどお昼ごろ。みなとまち商店街の中は新鮮なお魚、お肉をもとめた人達で混雑をしていた。


 私もお財布かたてに人混みに混ざり、お店を覗く。


(おめあてのハンバーガー店は混んでいて、一時間待ちかぁ……また、今度にするかな? となると海鮮丼、焼き鳥丼……)


 はじめは持ってきた絵画、宝石を売ろうとしたのだけど。なんと、絵画、宝石は王都にいる、専門の鑑定士にしか売却できない。

 無理に売ろうとすれば「闇業者に安く買われるよ!」と女将さんに言われた。


 ガッカリしたけど、あまり贅沢しなければ、カリダ食堂のお給料でやっていける。

 

(んん~っ、お魚の焼ける香ばしい香り)


 匂いにつられて出店の前で足が止まった。このお店は少し前にオープンした海鮮丼屋か……店のなかは混んでいる。


 あまり、港街で長居もしたくない。


「おじさん! 小海老の丸焼き串とアジフライ二枚、あと大根おろしください」


「あいよ。ソースと醤油どっちにする?」


「醤油でお願いします!」


 お店の前にあるベンチに座り、焼きたての小海老の丸焼きを頬張り、揚げたてのアジのフライにたっぷり大根おろしをのせて、お醤油をかけた。


「んんっ、美味しそう、いただきます!」


 小海老は殻までパリパリ食べられて、頭の味噌が濃厚。フーフー、アチッ、アジフライは揚げたてサクサクで肉厚。


 たっぷりの大根おろしでサッパリ食べる。これにして正解! 

 

 店の前でアジフライを頬張る私の足元に、どこからかトテトテと小さな影が駆け寄り、キュ、キュと鳴いた。


(キュ?)


 下を向くと、どこから来たのかモコモコ、もふもふ、琥珀色の瞳の黒い子犬が足元で尻尾を振っていた。


 かわいい、子犬だ。


「こんにちは、子犬ちゃん」

「キュン、キュン」


 この子、返事をしたわ。でも、福ちゃんとは違い意思疎通がこの子とは無理みたい。でも、子犬は私の話している事はわかるのか。


「お腹すいているの?」


「キュン」


「なにか食べる?」


「キューン」


 と鳴いた。


 この子か食べられそうなものって、ドックフード、あとは果物かな? そうだ、近くにソフトクリームが美味しいときく果物屋さんがあった。


「子犬ちゃん、お姉ちゃんといっしょに果物屋に行こうね」


「キュン、キュン!」


 ピョンピョンと飛び跳ねてついてくる、可愛い子犬と並んで果物屋に向かった。

 

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