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 別の日。


 第三書庫に向かう途中……私は対象者達に囲まれた。話を聞くと、私がヒロインの足を引っ掛けて転ばせたと言いわれて、宰相の息子に突き飛ばされ転んだ。


『いっ、いたっ……』


 ……足首を捻ったかも。


 しかし、私を押した宰相の息子はメガネを直して。


『貴方がしたことが自分に返って来たのです。"告げ口など"なさらない方が身の為ですよ』

  

 と、脅した。


 男のくせにみみっちい……「何もしていない」と言っても、誰も私の話など聞いてくれないことも重々分かっている。


『……っ』


 痛む足を引きずり書庫に向かった……窓際ーーいつもの席にいるシエル先輩に声をかけて書庫に入ると、彼は私の方へと歩いてきて"ガシッ"と肩を掴み椅子に座らせた。


『シ、シエル先輩?』

『ルー、足首を怪我しているだろう?』


 椅子に座る、私の足首を持った。


『いたっ、やめて、だめ。触らないで……』

『バカ、治療するだけだ恥ずかしがるな』

 

『ち、治療?』


 シエル先輩の手から光が溢れて、私の足首に温かな光りが包み込んだ。


『あ、痛みが消えたわ? せ、先輩、いまのって魔法なの?』


『回復魔法な。これで痛みはなくなっただろう? ……フン、光栄に思えよ』


『ほんとうだ、ありがとうございます……う、れしい』


 先輩の優しさに涙腺がゆるむ。



『ちょっ、泣くなよ。どこか、まだ痛むのか?』



 焦る先輩に、私は違うと首を横に振った。


『シエル先輩の魔法が余りにも綺麗で感動したの……魔法って凄いね』


『魔法が綺麗?……はぁ、なんだよ、驚かすなよ。ほんと、ルーはかわ……いや、魔法が好きだな』


『はい、大好きです』

『……おっ、そうか』


 いつのまにか先輩は私のことを"ルー"と呼び。第3書庫に行くと、面白い魔法の話をたくさん聞かせてくれた。


 今日は洞窟のドラゴン退治の話。


『シエル先輩、そのドラゴンはどうなったのですか?』


『勿論、俺様が魔法で倒した』


『先輩がドラゴンを倒した? 凄いわ。さすが学園一の魔法使い!』


『クク、なんだよそれぇ。まあ、俺より凄い魔法使いは、ここにはいないけどな』


 ほんらいなら婚約者のいる身で、公爵令嬢の私が男性と書庫に二人きりでいることも。ましてやルー、シエル先輩だなんて、呼んだり呼ばれるなんて許されない。


 彼らに見つかったら? と思ったのだけど。シエル先輩に会いたくて第3書庫に通い続けた。いま思えば、よく彼らと他の学生にも見つからなかった。



 優しい、大好きな、シエル先輩。


 だから、先輩の卒業式は涙が止まらなかった。先輩は数日前、彼らに階段から突き落とされた私に、一年は怪我をしない守りの魔法を掛けてくれた。


『ほんとうなら、奴らの息の根を仕留めたいが……ルーがダメだというから守りの魔法をかけた。一年間の間何があっても守りの光がルーを守ってくれる』


『ありがとう……シエル先輩、う……ううっ、離れたくないよぉ』


『俺だって……いや、泣くな。ルーも知っているだろう? 俺は王城の見習い魔導士になったんだ。ルーも王妃教育で城に来るんだ、いつでも会える?』


『やだ、それでもシエル先輩と離れたくないの……私のわがままだってわかってる、ごめんね、シエル先輩』


『謝るな……ルー。俺だってそばにいてやりたい。あ、そうだ、プレゼントを用意していたんだ』


 先輩から渡されたのは、綺麗な細工がされた宝箱だった。


『私にプレゼント?』


『来年……もしかしたら、誕生日プレゼントをあげれないかもしれないからな、使ってくれ』


『……ありがとう、使う、毎日つける』


 この日は私が泣き止むまで、シエル先輩は側にいてくれたんだ。


(先輩からのプレゼントは、綺麗な花の髪飾りが入っていた)

 

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