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第7話 クマさんクマさん火薬の鳴る方へ(3)

「兄貴、師匠がけがをした。」

 しゃがみ込むポーラの隣でベンが剣を構えながら周囲を警戒する。

「腕に力が入らない……」

 しゃがみ込んだポーラは左手で右腕を抑えている。

 ギジロウがポーラが抑えている部位を懐中電灯で照らすと服が破れ血が滲んている。

「外傷自体はひどくないようん見えるわね。」

 ルースがギジロウの隣にしゃがみ、ポーラの傷を確認する。

「ベン、どんな感じにポーラはやられた?」

「お、おれに向かってきたクマが殴ってきたときに、間に入って師匠が腕で受け止めてくれたんだ。」

 ベンは声を震わせながら森の中を睨む。

「そのクマはどうした?」

「師匠が持っていた折れた剣で何度か突き刺していたらどっかに行っちまった。」

「みんな、近くにクマは居そうか?」

「……私からは見えない。」

「向かってくる音はしなさそうね。」

 ギジロウは懐中電灯の明るさを落とす。

「ベン、ポーラの手当てをするから周囲の警戒を任せたぞ。シノも警戒を手伝ってくれ。」

「おう、兄貴、師匠は任せたぜ。」

「わかった。」


 ギジロウは魔導書を開いて応急てあの手のハンドブックを見る。

「ポーラ少し触るぞ。」

 ギジロウはポーラの傷を確認するためにポーラの服の袖をまくる。

「い、痛い!」

 少し腕を動かすとポーラがうめき声をあげる。

(これは、折れていそうだな。)

「ルース、何か所か折れているかもしれないから副木になりそうなものと、それを固定できそうなものを探して生きてくれ。」

「わかったわ。」

「目立つから明かりはなるべく使わないでくれ。」


 ギジロウは身体の他の部位にも傷が無いかを確認していく。

(胴体は防具が守ってくれているようだから傷はないな。反対側の腕は問題なさそうだな。)

「ポーラ立てそうか。その体勢ではつらいだろ少し何かに寄りかかろう。」

「ギ、ギジロウ様。すいません。」

 ポーラは立ち上がるために左ひざを立てようとするとうめき声をあげ立ち上がることをやめる。

「ギジロウ様、すいません。歩くどころから立ち上がることすらできそうににないです。このままでは皆さんの足手まといになってしまいます。ルース様たちと一緒に逃げてください。」

 ポーラは肩に下げていた魔法懐中灯を手に取る。

「光でクマを私のところにおびき寄せます。その間に逃げていただければ。あと、利き腕ではないですがもう片腕は動きますので武器になりそうな棒を取っていただけ――」

「何、言ってんだ! そんなの許すわけないだろ。それに、ここでポーラが死んだらナターシャやみんなをだれが守るんだ!」

「ギジロウ様が率いています。それに私の訓練で戦える人も増えています。」

「俺は戦闘向きじゃない。ベン達もまだ成長途中だ。いまはポーラの力が必要だ。必ずお前おw連れて帰る。だから勝手におとりになったりするな。」

 ギジロウはポーラを抱き抱えてすぐ側あった木の幹にもたれかけさせる。

「木の幹が少し冷たいと思うが待ってろ。」

 木の幹に巻き付きデコボコしていたツタを取り払いポーラを休ませる。


 ギジロウは胸ポケットから万能ナイフを取り出し、適度な太さ、長さの木の枝2本を切る。孫枝を落としていきまっすぐな棒に大雑把に整える。

 そして来ていた上着を脱ぐ。


「ギジロウ、副木になりそうなものを探してきたわ。それに傷に効く薬草が生えているのも見つけたから摘んできたわよ。」

 ルースが両手に必要なものを抱えて帰ってくる。

「どうしたの? 服なんかに脱いで何をするの。」

 ルースは少しキョトンとした顔でギジロウの方を見つめる。

「簡易担架を作る。俺の居た国は災害が多かったから、良く知っているんだ。」

「そ、そうなのね。」


「ルース、薬草も摘んできてくれたんだよな。ポーラの手当てをできるか?」

「すぐに始めるわ。」

 ルースはポーラの側に座りポーラの腕を手に取る。

「痛いと思うけど我慢してちょうだい。」

「申し訳ありません。貴族の方の手当てを直々に受けるなど……。」

「民を助けるのは貴族の役目よ。私にその役目を果たさせてちょうだい。」

「あ、ありがとうございます。」

 ポーラは上を向いて目を閉じる。

「クマの殴打を受けたのはこっちの腕でよいのよね?」

 ルースは折れていると思われる場所にまっすぐな枝をあてて丈夫なツタで身体に縛っていく。

「無理に動かさないでね。」

 続いてルースは手ごろな石で摘んできた薬草をすりつぶし布で包む。

「ちょっと沁みるわよ。」

 布を絞り薬液を絞り出してポーラの傷口に当てていく。

「これで、傷が膿んだりしにくくなるわ。」


 その隣ではギジロウは木に巻き付いたツタを外し網を編んでいた。

(ルッチに編み方を聞いて練習しておいてよかった。)

 用意した2本の棒に上着、網を通して担架を組んでいく。上着は木の枝に引っかかり何度か入れては戻してを繰り返しながら袖のなかに通していたため少し生地が傷んでしまう。


「簡易担架はできたぞ。ルース、手当の方はどうだ?」

「一通りは終わったわ。」

 簡易担架をポーラの側に置きルースと2人でポーラを簡易担架に乗せる。

「よし、運ぶ――。」

「兄貴、クマが帰ってきた。」

「くそ、あと少し早ければ逃げきれたのに……。ベンこれを使え!」

 ギジロウは懐中電灯をベンに向かって放り投げる。

「ちょっと、俺の方へ誘導できるか。」

 ギジロウは余ったツタで輪っかを作りながらポーラとルースの側を離れる。

「わ、わかったぜ。」

ベンは片手で剣を、もう片方の手で懐中電灯を構えながらギジロウの居る方へクマを誘導していく。

クマは警戒しながらもゆっくりとベンとの距離を詰めていく。


「シノ、いけるか?」

 シノが木の上から飛び降りてギジロウが作った輪っかをマンテングマの首にかける。首にかかったのを見てギジロウは手元のツタを引く。すると首の輪っかが狭まり熊の首を絞める。

 暴れるマンテングマにツタは引っ張られたためギジロウは手を離す。


 マンテングマが首の縄をほどこうと暴れている隙にギジロウとベンが簡易担架を持ちその場を離れる。


「方角はこのまま北方向でよいのよね。」

「大丈夫だ、とにかく北に進めば大きな道に出る。」

 ルースを先頭に森の中を走っていく。


「師匠、頑張ってくれ! あと少しでたどり着くから。」

「ベン、すまないな。」


 その後は追われることなく石灰の採掘拠点までたどり着いた。

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