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第7話 クマさんクマさん火薬の鳴る方へ(1)

試行錯誤の末にマンテングマの弱点をみつけ巣穴まで追い詰めたギジロウ達。巣穴に引きこもったクマを討伐すべく、最後はシノに手榴弾を巣穴の中に投げ込んでもらう。爆発後、巣穴から出てきたマンテングマはその場で倒れ込み動かなくなる。喜んだのも束の間、その巣穴からはぞろぞろとマンテングマが群れを成して出てくる。

シノの言葉にその場にいる全員が反応して巣穴の方を見る。

「まだこちらに気づいていないようね。先手必勝で倒してしまいましょう。」

ルースがお攻撃魔法を撃つために左手をクマに向かって伸ばす。

「まった、ルース!」

ギジロウは伸ばしたルースの手首を掴み、下に降ろさせる。

「1頭でも苦戦してる生き物だ。3頭にもなったら5人じゃ太刀打ちできない。」

「でも、あの巣穴の中に行方不明になった仲間の亡骸があるかもしれないわ。亡骸だけでもみんなの元に帰してあげられないか。」

 ルースは倒せなくても一瞬でも気を引いて遺体の回収だけでもできないかとギジロウを説得する。

「しかし、ルース様。敵は3頭であるとは限りません。」

 ギジロウ達の位置は巣穴をやや見上げるような位置になっているため、マンテングマが全部で何頭いるのかは見えていない。

 最も近づいていたシノに巣穴がどれくらいまで深く続いているのを聞くが、シノも巣穴を覗き込んで爆弾を投げ込んでいたわけではため、中に何頭のクマがいるのかを把握はしていない。

「そもそも、クマが複数いるなどとは私も含めて誰も想定していなかっただろ。」

ポーラはそもそも複数のクマを相手に戦う装備がない状況を端的に説明していく。

 ポーラ自身は普段使用している剣を置いてきてしまっているので、折れて半分以上の刀身が無い剣しかもっていない。

「まともな刃物なんて、俺の持っている剣だけじゃないか? シノは何か持っているか?」

「いつも使っている短剣しかない。あとは飛び道具がいくつかあるけど。」

 ベンとシノも自分の持っている刀剣をルースに見せながら首をすくめる。

「ルース、マンテングマの数が分からないうえ、手持ちの武器も揃っていない状況じゃ死者が出かねない。ここは一度引いて作戦を立て直そう。」

「そ、そうね。」

 ルースは少し悔しそうな顔をしながらも一度帰ることを了承する。


「また、来るからね。その時は覚悟していなさい。」

 ルースはギジロウに聞こえるかどうかという小さな声でマンテングマとの再対決を誓う。


静かに歩いているつもりになっていても、森の中で物が動けばどうしても音が鳴ってしまう。枯葉を踏む音、踏んだ小枝が折れる音、移動する物体に驚いて逃げていく鳥や小動物の音。そんな森の中の動きをマンテングマは全身で感じ取り、その正体を見ようと前足を地面から離し、頭を高くして森の中を見渡す。

「気づかれたかもしれない。警戒している。」

 木の上から降りてきたシノはマンテングマが周囲に何かいることを察知したかもしれないことをいつも以上に静かにギジロウに伝える。

「ルース、クマがこちらに気付いているかもしれない少し急ごう。」

「わかったわ。」

 ルースは先頭を歩くベンとポーラの元に急いで駆け寄る。

 急ぐ必要があることが伝わったのかベンがギジロウの方を振り返り親指を立てて了解したことを伝える。

 ベンは元の方向に振り返り次の一歩を踏み出す。


 ギジロウはマンテングマの居る方を向いて警戒するシノに急ぐことを伝えるために後ろを向き警戒は一旦やめて先を急ぐことを伝える。シノが頷いたため再び前を向くとベンがいなかった。

 そして、ポーラとルースが何やら下の方を見ておりベンが下の方へ落ちたということをギジロウが理解する前にベンの叫び声が森に響く。

「大丈夫か!」

 ギジロウも慌ててポーラ達の居る方へ駆け寄る。

「うわ、おっと!」

 ギジロウは地面を踏む感覚がなくなったかと思うと、景色が斜めになっていく。

 そしてそのまま斜面を転がり落ちていった。


「い、痛え。」

 ギジロウは打ったお尻をさすりながら周囲の様子を見渡す。2メートルほど斜面を転がり落ちておりギジロウの下にはふかふかに落ち葉が敷かれていた。直前までいた位置ではシノが、少し離れた位置ではルースがギジロウを心配そうな顔で見下ろしていた。ポーラは心配というより呆れた顔をしていた。

「兄貴、大丈夫か?」

 ベンが大慌てで駆けよってきてしゃがみ込みギジロウの顔を覗き込む。

「あちこち打ったようだけど折れてはいない。」

 ギジロウは順番に関節を動かしながら動けそうか確かめていく。ベンからは顔が少し青く腫れていることを指摘されるが痺れなどはない。

「俺は大丈夫そうだ。ベンの方こそ動けるか?」

 先に立ち上がったベンの手を借りながらギジロウは立ちあがる。ベンは力強く腕を引きギジロウは立たがらせると背中を見せるように半回転しながら、どこにも問題が無いことを伝える。

「落ち葉のおかげで怪我はしなかったぜ。」

「落ち葉のせいで滑り落ちたがな。」

「確かに。」

 お互いの無事な顔を見て2人は笑顔になる。


「2人とも大丈夫かしら。」

 ルース、ポーラ、シノがゆっくりと転ばないように2人の元に降りてくる。

 あと少しで降りきるというところで、ルースが転びそうになり、ギジロウが受け止める。

「ありがとう…………。ク、クマが近づいているのが聞こえるわ。すぐに逃げましょう。」

 ギジロウ達は採掘拠点へと続く大きな道を目指して山を下りていく。


「すぐ後ろに迫ってるわ!」

 少し進んだところでルースはクマが近づいたことを察知する。その声を聞いていギジロウが後ろを振り返ると、3匹のクマがギジロウ達を見下ろす位置で走っているのが目に映る。

 そして、戦闘のクマがルースに飛びかかろうと大きく跳ぶ。

「危ない!」

 走っていたルースの腕を掴みギジロウは急停止する。すぐにマンテングマが2人の目の前に落ちてくる。

「このまま走っていたら危なかったな。」

 ギジロウは直ぐに熊を避けて先頭を走るベンとポーラの方へ向かう。


 すぐに態勢を整えてたマンテングマが全力で走り始め、ギジロウ達との距離を縮めていく。

「このままだと、追いつかれるわ。」


「シノ、爆弾の残りは?」

「あと2つ。だけど、火種が消えている。」

 シノは申し訳なさそうな声で話す。

「ルース、攻撃魔法は撃てるか?」

「撃てるけど、あのクマには効かないわよ。」

「撃ちぬくのは導火線だ! シノが投げた爆弾をクマの頭上で撃ちぬいてくれ。」

「無茶言うわね。まあ、やるだけやるわ!」

「みんな、爆発する瞬間だけ身を隠せ。」

 

 すぐにシノが爆弾を取り出し高く放り投げる。

「ルース、今。」

「ありがとう、シノ!」

 ルースは爆弾の落下軌道を予想しながら攻撃魔法を撃っていく。

 しかし、木の枝で遮られるなどして攻撃魔法は爆弾に当たらず、爆発せずに地面に落ちる。

 落ちたであろう場所にルースも攻撃魔法を撃つが爆発することはなく、落下地点の上をクマが通り過ぎていく。

「1発目は外したわ!」

「仕方がない! 次だ。」

 シノが同じように爆弾を放り投げルースが攻撃魔法で狙う。


「やった、当たったわ! 点火できているかわからないけど。」

「よくやった、後は祈るだけだ!」

 ギジロウが再製作した手榴弾の遅延時間は約5秒。

 すぐにギジロウは身を隠すように叫び自身も近くの木の陰でしゃがむ。


 直後、森の中に爆発音が響き破片が四方八方へはじけ飛ぶ。

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